札幌のご当地グルメ「スープカレー」。市内には200軒以上もの専門店がひしめき、いまや全国にまで広まってきたこの料理。
ルーツは喫茶店アジャンタ(現:薬膳カリィ本舗アジャンタ 札幌市東区)の薬膳カリィだといわれています。そちらのベーシックなメニュー「とりかりぃ」を食べてみました。
スープカレーって、なに?
スープカレーをアバウトに言うと「さらっとしたスパイシーなスープ」に「ごろごろっとした具材」が入り「スープとライスは別盛り」になっているもので、主役はあくまでもスパイス感のあるスープです。
食べ方はとくに決まっているわけではありませんが、スプーンですくったご飯をスープに浸して食べるのが一般的。たまにご飯にかけちゃって食べる人やスープにご飯を投入してしまう人もいますが、それはそれで「あり!」です。大きな具材は器の中でくずしながら、または、ライス皿に取り出して切りながら食べます。
各ショップによってスパイスの配合は工夫されていて、もちろん秘密のオリジナル。辛さやベースを選べるところも。鶏のダシだけではなく、豚骨ダシや和風ダシをベースにしているお店、海老ダシを使っているお店など、さまざまな専門店があります。
アジャンタの、スペシャルな薬膳スープ
個性的なスープカレーがたくさんある中、元祖は中央区の丸山エリアにあった喫茶店アジャンタ(1971年当時)が出していた薬膳カリィだといわれています。
オーナーの故・辰尻宗男さんが、身体が弱ってきた父親や自分の健康維持・増進のために考案したこのスープ。身体にいいとされるインドのスパイスと漢方の生薬を組み合わせるというアイデアから、試行錯誤のすえ生み出されました。
オーナー自ら店内で飲んでいたところ、それを見ていた常連客から「飲んでみたい」とのリクエストが! そこで、1日20食限定のメニューとして提供し始めました。
当初は「スープ」だけだったオリジナル料理。エキスをとるために使っていた鶏や大量の野菜は、煮出した後、ダシガラとして捨てていました。それを見た常連客が「捨てるくらいなら、食べさせて」と……。
こうしてスープに骨付きチキンなどの具材がゴロゴロっと入り、ご飯も別皿に盛って添える「現在のカタチ」がととのったのです。1975年のことでした。
インスパイアされた専門店が続々登場、ブームに
新しいカテゴリーのカレー料理が誕生すると、その評判はじわじわと広まり、このタイプのカレーを出す専門店が増え始めます。各ショップによって「薬膳カリィ」「スリランカ・カレー」「インドカレー」など、メニュー名はばらばらで、まだ統一のネ―ミングはありませんでした。
この料理をスープカレーと命名したのは、1993年にオープンしたマジックスパイス札幌本店(白石区)のオーナーと言われています。以来、新ジャンルのカレー料理にぴたっとハマったこのネーミングが定着。
市内を中心に、スープや具材に工夫を凝らすユニークなお店が続々と登場し、札幌のご当地グルメとよばれるほどになりました。
薬膳カリィ本舗アジャンタの、スープカレー
アジャンタとは南インドにある仏教の石窟遺跡のこと。オーナーの心が癒されたこの場所を店名に掲げました。そこには「うちの香り高い薬膳スープを飲んで、身体の中から癒されてほしい」との想いがこもっています。
同店のアシスタントマネージャー澤田さんが「スパイス30種、生薬15種を使った当時のレシピを、今でもそのまま守り続けているんですよ。」と教えてくれました。え~っ昔からこの味だったとは! その完成度の高さは驚きです。
こちらを訪れるお客さんの8割は地元の方。きっとオーナーのネライ通り、癒されてクセになっちゃった人たちが通っているんですねっ。