よく知られている日本一の急勾配な道が、大阪府と奈良県の県境にある「暗峠」。ですが、東京都のド真ん中に位置する東大和市にも実は同じ勾配の坂が存在します。その傾斜は、実に「最大勾配37%」。
「最大勾配37%」と言ってもピンとこないかもしれませんが、簡単に言うと100m進むのに37m上る、もしくは下る坂を示していて、水平方向に100m移動する間に12階建て以上のビルを、一気に上がったり下りたりするようなモノです。
ダイハツのCMで「ベタ踏みでのぼる坂」の舞台になっている、「島根県の江島大橋坂」の最大勾配6.1%なんて……目じゃない! 今回、東京の東大和市の坂に行ってきました。
日本一の激坂なんてあるとは思えない狭山丘陵
東大和市にある「日本一過酷な勾配」といっても、メジャーな場所では無く、一部のマニアにしか知られていません。向かう場所は、ハイキングやサイクリングに適した、狭山丘陵にある多摩湖。
東京の水瓶のひとつとされている多摩湖ですが、正式には「村山上貯水池」「村山下貯水池」の2つの貯水池からできています。村山下貯水池の堤体(堤防)下には、キラキラした穂が素敵なススキの原っぱが広がっています。
輝きを銀色から金色に変える頃、真っ赤に染まるモミジが見られるようになります。トトロの森で偶然見つけた激坂のあるエリアは、のどかな紅葉狩りスポットでした。
ススキの原っぱに隣接する「宅部池」ですが、「となりのトトロ」に描かれている、「メイちゃんが溺れてしまったと勘違いされた神池のモデルではないか?という都市伝説のある池です。秋の心地良い風が吹いているにも関わらず、色づき始めた木々を鏡のように映し出しています。
説明に困る場所の「日本一の激坂」にしっかりついてきてください
ススキの原っぱから、32m上にある村山下貯水池の取水塔のある場所まで上ります。長雨続きで台風も多かった年なので、満々と水を湛えています。
取水塔の見える堤頂部(堤防の上部)は、多摩湖自転車道の一部にもなっています。路面にある歩行者・自転車道の案内から、堤頂部南(背中の方向)へ向かって、
取水塔のモニュメントがある南ゲートを抜けると、南回りの多摩湖自転車道路に出ます。(目の前に交番があります)
南ゲートから西へ向かいます。目的地の「最大勾配37%」の坂までに、案内板や目標物らしいモノが無いから、しっかりついてきてください。あるとしても、シャッターが下りているところしか見たことの無い「富士屋」という商店しかありません。
多摩湖自転車道(サイクリングロード)では、内回り・外回りがセンターラインで区切られているので、とても走りやすい道路になっています。この場所を過ぎたら、しばらく自転車道の路面を見てみましょう。
自転車道の路面には、距離表示がされています。いくつかのカーブを経て、11.4kmの表示がありますが、どこから11.4kmなのでしょうか。
これについては以前、別の記事で紹介したことがありますが、多摩湖自転車道路の東端をスタート地点として、武蔵野市と西東京市の市境からの距離になります。
11.4km表示から約1~2分進むと、自動車道と自転車道が隔離されていたはずなのに、「切れ目」がある場所に辿り着きます。わかりやすく説明するために、ココから左手にある住宅街の中へ入っていきます(住宅のプライバシーに配慮して写真の掲載は差し控えます)。
狭山丘陵に接する東大和市の最大勾配37%の坂はどんな地域なのか?
自転車道から住宅街へ、緩やかな下り坂を約100m進むと、突然、警戒標識が現れます。
「最大勾配28%」の下り坂の警戒標識です。エッ?「最大勾配37%」の「日本一の激坂」じゃないの?と思われるかもしれませんが……、写真を良く見てもらうとわかるように、坂の下の電柱の高さと同じぐらいの高さにあることがわかります。
下り坂の終点が見えてわかりにくいかもしれませんが、「最大勾配28%」の坂だって、結構スゴい坂なんですよ。
坂を下りきって、振り返ってみると、上り坂用に「最大勾配28%」の警戒標識は見当たりません。坂の途中から勾配が変わっているのがわかるでしょうか?
距離としては約20m前後しかありませんが、自転車を停止状態から助走なしに、ペダルをこぎ出すことすらできない、「最大勾配28%」の坂です。このあたりの住宅街は、このような坂が多い地域のようです。自転車道に並走している自動車道へ戻ります。
日本一過酷な激坂! 最大勾配37%……自転車のブレーキが悲鳴を上げる!
自動車道に戻ったら、住宅街の路地を東側へ(自転車道を走ってきた方向へ)1本だけ移動します。先ほどの「最大勾配28%」の坂では、見かけなかった「この先自動車の通行はできません」という立て看板が見えてきます。
「最大勾配28%」の坂には無かった滑り止めと思われる工夫があります。「最大勾配37%」が近づいているのを感じます。
再び「この先自動車の通行はできません」という立て看板です。このあたりに詳しくない車が、知らずに突っ込んでくるんでしょうね。
自転車道から住宅街へ、緩やかな下り坂を約100m進むと、ありました。「最大勾配37%」の警戒標識です。先ほどの「最大勾配28%」の警戒標識は坂の下の電柱と同じぐらいの高さにありましたが、この「最大勾配37%」の警戒標識は、電柱の高さをはるかに超えているのがわかります。
公式な日本一の激坂として、大阪府と奈良県の県境にある「暗峠」と並ぶ「最大勾配37%」の坂が、ココにあります。
「最大勾配28%」の坂と比較できるように、同じアングルで下り坂の終点を撮影してみましたが、あまりの急勾配のために下り坂の先が見えません。これこそ、「最大勾配28%」と日本一の「最大勾配37%」との違いかもしれません。
下り坂を自転車に乗ったまま進むと、ブレーキシューもブレーキワイヤーも、変な音で悲鳴を上げている! ……危うく下り坂を転げ落ちそうになります。
坂を下りきって、振り返ってみると、上り坂用に「最大勾配37%」の警戒標識は見当たりませんが、明らかに「最大勾配28%」の坂とは違う点があります。
車止めすら、斜めになってしまっています。先ほどの「最大勾配28%」の坂は車通行ができるようでしたが、この「最大勾配37%」の坂は、あまりの急勾配のためか車通行できません。
バカげているかもしれませんが、3回ほど自転車に乗ったまま激坂上りに挑戦してみましたが、足の筋肉も悲鳴を上げ、日本一の「最大勾配37%」の走破は断念せざるを得ませんでした。
日本一過酷な激坂に完敗です。足がガクガクになり、手で押しながら自転車道まで歩いて戻ります。
「狭山丘陵」にある日本一の激坂……恐るべし!
ココまでの道のりで心地よい汗をかくことができますが、日本一の激坂に挑むため、かなり体力を奪われてお腹がペコペコです。訪れる際は腹ごしらえをしてからをおすすめします。