寿司といえばいまや「Sushi」として海外でも親しまれている日本のソウルフード。その寿司が和歌山で独自の進化を遂げていました。フルーツ王国・和歌山県紀の川市。ここで生まれた「フルーツ寿司」はネタに旬のフルーツを使用した寿司です。
海外にもフルーツ寿司と呼ばれるものはあり、フランスなどではお米にミルクと砂糖を入れて炊いたRiz au lait (リ・オ・レ)を使うそうですが、こちらでは正真正銘の寿司屋の酢飯を使用。ここでしか食べられない組み合わせの妙技。カラフルでヘルシーな「寿司屋のフルーツ寿司」をご紹介します。
フルーツ王国 紀の川市
フルーツ寿司を提供している力寿しがあるのは、和歌山県紀の川市。「バナナとパイナップル以外とれないものはない!」と言われているフルーツ王国・紀の川市。
豊かな大地と穏やかな気候を生かし季節を問わず様々な農作物を栽培しています。ブランドフルーツ「あら川の桃」でも有名です。
地域の人々に親しまれている力寿し。お寿司屋さんらしいカウンター席に……
家族やグループでも利用できる小上がりのテーブル席などもあり、ランチなどの普段使いから記念日、法事など幅広く利用されています。取材時にもお客さんが次々と訪れていました。
フルーツ寿司、その調理風景は……
早速フルーツ寿司を注文します。すると、寿司屋らしからぬ調理風景が。カットしたいちごと柿を大葉と梅肉を敷いた酢飯に並べて……
巻きます。えっ、そのまま!? しかも大葉と梅肉? 酢飯とフルーツ、色どりは綺麗なのですが大丈夫かな。ちょっと不安になりつつ、大将の手元を見つめます。
どんどん出来上がっていくカラフルな寿司
お次はシャリにりんごのスライスを乗せ、その上に……
美味しそうなカンパチをON! このあとブラックペッパーを振って軽く炙って仕上げます。りんごではなく梨を合わせる時もあるのですが、どちらもよく合うそうです。その時々、美味しいフルーツを使います。
さらにフレッシュなキウイをカットして、
軍艦巻きに。次々とカラフルなお寿司が出来上がっていきます。
これがフルーツ寿司だ!
出来上がりました! いちごにキウイに柿、カラフルな色彩はまるでスイーツのようです。「これがホンマの宝石箱や~!」と思わず心の中で叫びたくなります。
フルーツ×寿司 誕生のきっかけ>
まさに「お寿司屋さん」といった佇まいの力寿し。フルーツ寿司を作るきっかけになったのは、市の観光協会が、紀の川市の魅力を発信するために始めた紀の川フルーツ・ツーリズムの活動でした。
「フルーツ×寿司はどうだろう?」というメンバーの無茶振り……。凡人ならばここで寿司を掛け合わせようとは思わなかったでしょう。
しかし力寿しの大将は違いました。彼のモットーは「とりあえずやってみる」。フルーツ寿司の第一号は、いちじくと大葉の細巻き。メンバーに試食してもらったところ「美味しい」と好評だったため、お店で提供するように。以来、続々とメニューが増えています。
旬のフルーツを美味しく食べて欲しい
「美味しいフルーツを食べて欲しくて作っているという大将。なぜ酢飯とフルーツがこんなに合うのか? もともとのお店のシャリが甘めで、フルーツと好相性だったのです。いちごと大葉の細巻きは大葉の香りといちごの風味をシャリが結びつけた奇跡的な一品。大葉といちごが合うなんて! 思いつきもしませんでした。
他にも、あぶりサーモンとりんごはサーモンの脂のくちどけと爽やかな甘さのりんごがとても合いますし、柿と梅肉の軍艦は梅の風味と柿の甘みがとてもマッチしています。まさに奇跡のコラボ! こちらは小鉢や吸い物、デザートまでついたセットで1,500円(税込)で楽しむことができます。
季節ごとに旬の果物を使用するフルーツ寿司、取材時は秋のメニューで、季節によりその内容も異なります。セットの他に単品でも注文可能です。(1種類2カンから注文可能)
ちなみにこちらはいちじくの一大産地でもあります。地元の方は「いちじくは皮ごと食べる」のが常識なのだとか。いちじくの皮には食物繊維が豊富で、整腸作用があり、抗酸化物質であるアントシアニンが多く含まれているのです。フルーツを知り尽くしたフルーツ王国の住人たち……! いちじくの皮って食べられるんだ~とか言ってる場合じゃないですね。
地産地消、もうひとつの名物「鮎寿司」
お店にはもう一つの名物寿司があります。近くを流れる清流・紀の川であゆが採れていたことから、郷土料理として定着していた鮎寿司。力寿しでは今でもふるさとの味として作り続けています。
甘辛く炊かれた鮎は中骨を取り、下炊きに12時間もかけているのだそう。丁寧に炊かれた鮎が口の中でほろっと崩れ、日本酒にも合いそうなお寿司です。6カン960円(税込)。こちらを訪れた際にはぜひ味わって欲しい逸品です。