子どもも大好き「フォアグラ」、フランスでは家庭料理の定番食材です。
フランス

南西フランス名産のひとつ・フォアグラ。高級食材とはいえ、フランスでは季節の行事やお祝い事に欠かせない食材のひとつ。

人気のごちそうメニューのひとつとして、家庭でも親しまれているんです。そんなフランスのフォアグラについてお伝えします。

季節の行事やお祝い事に欠かせない食材・フォアグラ

フォアグラが、この冬から、日本でも輸入再開となりましたね。2015年、欧州で鳥インフルエンザが流行。日本政府は直ちにフランスからの関連商品の輸入をストップしていたので、実に2年ぶり。

でも、実は、ここフランスでは、普通に流通していました。確かに、衝撃のニュースには違いなかったんですが、季節の行事やお祝い事には欠かせない食材のひとつがフォアグラ。

実際に、加工された商品の中に影響は見られていなかったという理由で、販売規制もありませんでした。気にせず、食卓に並べている家庭も少なくなかったようです。

子どものいる家庭では、さすがに、少し控えたとは聞いていますけど……ええ、レバー肉は嫌いだけど、フォアグラは大好き!という子どもも目立つフランス。

高級食材とはいえ、折あるごとの人気のごちそうメニューのひとつとして、家庭でも親しまれているんです。

そもそもフォアグラって、何?


“世界3大珍味”って、耳にしたことありませんか? フォアグラ、トリュフ、キャビア……どれも、フランスの伝統のごちそうに欠かせない食材で、フォアグラも、そのひとつ。

3つの中では1番、家庭の食卓に乗る機会も多いし、多くが、子どものころから口にする食材です。Foie gras(フォアグラ)は、直訳するなら”脂ののった肝臓”。昔々からの南西フランスの名物として知られている”ガチョウや鴨の肝”なんですが、現代では、その存在には賛否両論。

というのも、そのために強制的に太らせていく飼育の方法は残酷だと、近年、反対の声があがっていて、抗議デモなどの様子も報道されています。

一方で、伝統食材・伝統産業なので、それでも人気は変わらず。その調理方法やレシピは、どんどん増え続けてもいます。特に、クリスマスには親族で集まるのが昔からの習慣。

何時間も続くディナーで、アミューズブーシュ、前菜、メイン、それぞれのレシピが豊富にあるほどの定番食材で、数年前からは、デザートにも。ひとつずつ、ご紹介しますね。

生でも加工品でも親しまれているフォアグラ。定番テリーヌも、自宅で作れば価格は3分の1にも。


一般的に輸出されているものは、過熱されブロック状態になったもの、もしくは、テリーヌを缶詰・瓶詰めにしたものなんですが、生の真空パックを買ってきて、自家製のテリーヌを作るのもポピュラーです。

同じ値段で市販の完成品の3倍量以上作れるので、少々手間はかかっても、たくさん食べたい人向け。

今の時期、普通のスーパーマーケットでも、こんな風に山積みになります。

こちらが、生フォアグラ。ただソテーして、果物のソースなどと合わせてもいいし、我が家では、お正月にフォアグラ大根(和洋折衷)にも。テリーヌにするのに、特別な道具もいりません。

こんな風に、普通の角型の耐熱容器に入れて、アルミホイルをかぶせて、湯せん蒸しにして……冷やし固めて24時間。だから、2日後が食べ頃!です。

賞味期限は3日、消費期限は作ってから7日間。食べきれない場合には、1cmぐらいずつスライスしてラップにくるんで冷凍庫へ。常温解凍すれば、ひと月は変わらず美味しくいただけます。

ところで、上の写真の真ん中に刺さっている黄色いピックは、ちょっとした便利グッズ。調理前は、下の白い部分とくっついているんですが、出来上がるとこんな風に上がって知らせてくれます。

子ども達も、フォアグラを食べるの?

ええ、フォアグラと最高のマリアージュと言われるソーテルヌ・ワインが甘いことでもわかるように、フォアグラのテリーヌには甘い食材が合うからでしょうか。一般に、子ども達も大好きです。

パンデピスというシナモンなど香辛料たっぷりのライ麦パンケーキや、イチジクのジャムと組み合わせたりするのもポピュラー。レバー独特の味やにおいも感じないからかも。

大人も子ども気分に戻れるクリスマス。これは、夫の実家で初めて見たタイプのアミューズ・ブーシュ。フォアグラクリーム入りのカカオ風味のロールケーキを、棒キャンディーみたいな設えにしたもので、市販品です。

ケータリングを頼まなくても市販品で揃う身近な存在。フォアグラ使いのアペリティフやデザート!


そして、これも市販品。数年前から人気のヴェリンヌという小さな透明容器入りが、フィンガーフーズの仲間入り。

季節や行事ごと、いろんな食材の組み合わせになっているんですが、フォアグラ(のムースだったり、テリーヌの小さな角切りが使われていたり)は定番素材。

甘じょっぱいものが好む人が目立つフランス。クレームブリュレも、蟹入りえび入りなどで、デザートではなくアペリティフに登場することも増えてきているんですが、フォアグラ入り!も。

甲殻類はアレルギーを持つ人もいるけれど、フォアグラのアレルギーはまず聞かないので、安心して遣える食材ですよね。

そして、人気のマカロン・フォアグラ風味!も。あちこちで冬限定で、出会えます。こちらも、デザートではなく、アミューズブーシュで。

クリスマス・ケーキとは別腹!な、フォアグラ・アイスクリームも。

そう、アイスクリーム!も、あるんです。

イチジクのソースがかかって、アーモンドトッピング。

イチジクのジャムやソースとの組み合わせは、テリーヌなどとの定番中の定番。もしくは、(やはり)甘く煮詰めた玉ねぎ、そして、岩塩だけ、というのも。

ビストロやレストランでも、品書きレギュラーのひとつ。年を通じて楽しめます。

モチロン、専門店でなら1年を通じて売られているし、ビストロなどで定番メニューにしているところは多いので、クリスマス以外にも美味しくいただける機会はいっぱい。

例えば、こちらは、あるビストロのランチメニューでの前菜。オーソドックスに、岩塩と甘い玉ねぎ添えです。

これは、また別のレストランでのメイン。生フォアグラのソテー。

そして、また別のお店でのメイン。こちらは、鴨のコンフィにフォアグラーベースのソース添え。うーん、カロリーが……気になるところですよね。

でも、だからこそ、フランスでは食後酒(消化を促すと言われる薬草酒もポピュラーです)まで、ゆったりと時間をかけていただく習慣なのかも。

ちなみに、太る人は簡単に太るし、太らない人は全く太りません。面白いぐらいに。

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

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