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    パリ旅行中止すべき?今フランスで起きていることを現地からレポートします
    フランス

    「黄色いベスト運動」の影響で、パリ市内だけでなく、近郊も含めてかなりの宿泊施設がキャンセルされてしまっているこの冬。

     

    外務省の「たびレジ(安全情報のメールが配信されるサービス)からも、渡仏への警鐘が書かれているし、旅行予定を中止しようかと迷っている方もいるかもしれません。

     

    史上初の赤いイルミネーションが点火された2日後に、シャンゼリゼ大通りにGilet jauneジレ・ジョーヌ(黄色いベストの群衆)が押し寄せて破壊されてから5週間、毎週土曜日に過激な運動の様子が繰り返されている様子は、日本でも繰り返し報道されているので、心配ですよね。

    どうなってるの、フランス? パリ、大丈夫?

    それでは、12月19日の様子をお届けします。

    まずは、シャンゼリゼ大通り、凱旋門前の午後8時過ぎ。

    3週間前に内部は破壊され、表面にはスプレーで殴り書きされていた凱旋門ですが、すぐに修復されて、2週間経たずに公開が再開されています。

     

    旅行者か滞在者かわからないけど、それを背景にセルフィーする人たちがそこここに、普通にいます。

    平日は、ずっとこんな感じです。写真で人が少ないのは、寒いせいもあるはず……なにしろ、朝晩の冷え込みで気温1〜2℃だったりしますから。

     

    夕方のカフェはこんな感じです。テラス席は相変わらず人気。暖房機完備なので、コートを着込んでいれば大丈夫。

    テラス席をビニールカバーで覆っている店も多いです。安心して携帯画面に見入れますね。

     

    お財布よりスマホが狙われることの多いフランスなので、携帯を片手に通話して歩いている人もまず見かけません。

    大抵が、本体はしまってコードにつないでいるので、一見、独り言をつぶやき続けているような人によく遭遇するパリです。

    女性だけでの旅行客も、今まで通り。これは、タクシーを待っているんでしょうか。

    気をつけていただきたいのは、こんな風にスーツケースから手を離すのは避けた方がいいこと。スーッともって行かれてしまうことがあります。

    そして、舗道のへりぎりぎりに立っていると、バイクでのひったくりに遭う危険があること。

     

    これはどこの街でも同じリスクなんですけど、道路脇で車の乗降時に引ったくりの被害に遭うケースはよく聞きます。盗られるだけでなく、引きずられたり転ばされたりといったケガの心配もあります。ご留意くださいね。

     

    話がそれました。

    「危ないのは、Gilet jauneジレ・ジョーヌ(黄色いベストの群衆)抗議行動の起こる土曜日だけ。破壊・強奪されるのは、シャンゼリゼだけでパリ全部じゃないから大丈夫」と言う人もいれば「家の外を見て、その荒れた様子に気絶しそうになった」と言う友人たちもいて、どれも本当。

     

    どの視点で見るか、どの立ち位置かで見え方は異なるし、どの部分を切り取って報道されたものかによっても、デフォルメされていたり情報不足だったり、印象はまったく違ってきますよね。

     

    とりあえず言えるのは、「全てが映像そのままでもないけれど、何も起きていないわけではないということ」。

     

    私たち外国人在住者も、フランス人たちの多くも、最初の暴動の時には、目と耳を疑いました。ある意味では、テロ以上にショッキングな出来事。

    そもそも、今回のこの抗議運動は、誰かリーダーが予定を立てたわけではなく、SNSで拡散されて始まったんです。

     

     

    そもそも、Gilet jauneジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)って?

    黄色いベスト運動は、テロでも内戦でもありません。

     

    参加者が黄色い蛍光イエローのナイロンベストを着ていることから、「Gilet jauneジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」と呼ばれているこの抗議行動は、11月17日の土曜、フランス各地で一斉に実行されました。

     

    もともとは、交差点や道路を塞いで、交通を遮断するアピールだけだったはずなんです……。

    各都市の幹線や交差点に立ちはだかり、車の通行をブロックするだけ。ブーイング表示的なイメージのものでした。

     

    従来よくみかける労働組合のデモとも違って、旗も持っていないし、スピーカーで先導したり大声で怒鳴ったりもせず。ただ、このベストで視覚的に反対の意思を表明する、暴力とは縁遠いもののはずでした。

     

    フランスの法律では、万一の事故や不具合で車が立ち往生した時の安全のために、この黄色いベストと赤い(プラスチックの組み立て式)三角プレートを車に携行していることが義務付けられていて、誰もが持っているんです。

     

    こちらの写真は、11月17日の昼ごろの、マルセイユの大きな交差点で。

    大きなバスターミナルも近くにあるし、高速道路の入り口にも程近いこの場所を塞がれて、全バス運休。乗用車も通り抜け出来ないし、運悪く通りかかった車両は、そのまま立ち往生。

     

    週末は、さまざまなスポーツの試合のある日で、高校生の息子たちは片道1時間近くかけて徒歩で試合会場へ。せっかくのブラックフライデーなのにショッピングセンターに辿り着けない人もずいぶんいたようで、ニュースでは、閑散とした各町の様子が映し出されていました。

     

    それでも、たった1日のことだと思っていたのは、私の周りだけではないはずなんですが、午後になって、一気に風向きが変わりました。

    死亡事故が起きたんです。

     

    ある地方で、病気の子どもを救急病院に連れて行こうとしていた母親の運転する車が、一塊の黄色いベストの人たちに阻まれて、パニックになりました。そして、彼女はアクセルを踏んだんです。跳ね飛ばされた62歳の女性が亡くなったというその一報で、各地の空気は凍りました。

     

    続いて、他の土地でも、暴力的に車を止めたり、運転手を引きずり出したり、外国人運転者には、「(移民は)自分の国へ帰れ!」と怒号が飛ぶシーンがSNSで拡散されました。ガソリンへの増税反対の抗議として、すべての車の通行を阻むというのがここまで暴力的と知らずに参加した人も多かったようですし、地方・地域によっては、もっと和やかで、全てがこうだったわけではないようです。

     

    ただ憎しみが憎しみを生んでいくというのか、ガソリンの増課税がきっかけとなって、それまでにそれぞれが抱えていた現状への不満が、目の前の異なる人たち、(自分より)利益を享受しているように映る人たち(つまり、外国人や富裕層)に向けられ始めたんです。

     

    それで、翌週には、ポルシェがひっくり返されたり、高級車が燃やされたり。政治不信への抗議だったはずが、富の象徴への憎しみに変わって、高級店での強奪が当然のように始まったわけです。

     

    きっかけは、2019年1月実施予定”だった”ガソリンへの増課税

    “だった”と書いたのは、一連の騒動のせいで、とりあえず当面は見送りと首相が発表という運びになったからで、今後どうなっていくのか、今のところ誰にもわかっていません。

     

    そもそも、この車に携行がに義務付けられている黄色いベストがシンボルになったことでもわかるように、きっかけは、来年1月にガソリンへの税率が上がると発表されたことから。

     

    フランスといえば、パリを連想しますよね。メトロやバス、そして、この頃なら公営のレンタル自転車で自由自在なイメージだけれど、実は、それ以外の地方で暮らす人の方が圧倒的に多いわけで、地域によっては、鉄道の最寄の駅から公共バスもなければ、何十キロも離れていたりします。そう、フランス生活の特徴のひとつは、パリ以外は、車がないと生活が成り立たない地域が多いこと。そうした人たちが、声を上げたんです。

     

    ところが、黄色いベストの人たちに便乗するように、マクロン大統領への不満が噴出して、政策批判が始まりました。極右・極左双方の政党主たちが、それを利用して現政権への批判と自己再アピール行動を始め、壊し屋と呼ばれる人たちが、シャンゼリゼのアスファルトをはがし、店を壊し、商品を盗んで行き、他の土地にも飛び火し始めました。

     

    そうして、土曜日毎に、抗議行動というよりは暴動が続いたわけで、マクロン大統領が解決提案としての声明を掲げたのが12月10日の夜。結果的に、暴力に屈した形です。経営者負担をさせずにの報酬増額や、年金額によっては社会保障支出免除にすることなど、いくつかの改正案が提示されたんですが、Gilet jaune ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)たちは、それだけでは不満足なまま、これからも土曜日に抗議行動を続けていくと言うばかりで、TVの特番で高らかに繰り返しました。

     

    「そんなのパンくずじゃないか」って…

     

    相容れない「金持ちだけが得をしている」感情

    パンくず? そう、フランスの食卓に欠かせないと言われるバゲットでのたとえで、切り分けると、ぽろぽろとかけらがこぼれるのを想像してみて下さい。(結構な量出るんですけど、かすはかす)

     

    「金持ちたちはバゲットを食べ、自分たちには、そのこぼれかすが与えられるだけ」(=利潤は富裕層へ、自分たちが受け取れる収入増加分はかすみたいなもの)という喩え。これは、マクロン大統領になってから、富裕税(フランス独特の保有財産に対して課税される特別なシステムがありました)が撤廃されたり、収入格差がより広がる印象で、不公平感が広まっていました。

     

    映像は、撮り方次第で誇張もされているし、たいていの場所では、今までどおりの日常が繰り返されています。暴動が起きているのは土曜日だけだし、通りを1本隣に行けば、何事もなかったりするのは本当なんですが、この時期の賑わいとは思えません。

    テロの時とはまったく違うとはいえ、緊張感は続く今年の年の瀬なのも事実です。

     

    史上初の赤いイルミネーション

    この写真は、11月22日の夜。シャンゼリゼ大通のイルミネーションが点火された日のものです。

    2週間後にこの先の凱旋門の扉が壊され、展示物が破壊されるなんて、想像もしませんでした。

    今は修復され再公開されていますが、これは嬉しい想定外。フランスの工事といえば、信じられないくらい時間がかかるのが当たり前ですから。

     

    そちらに背を向けて、反対側、緩やかに下っていく先突き当たりは、コンコルド広場。

    ここのアスファルトも剥がされたり、酷いことになっていたわけです。

    11月24日の土曜日には、明かりも消えて、そのままこの冬を終えるのだとばかり思っていました。

    それが、今では毎夜見事な灯に包まれているのが、パリの力強さを感じさせられる部分ですよね。

    いつも通りのパリ

    こちらは個人的に1番好きな場所のひとつ、恒例のオスマン大通りのデパートたちのショーウィンドー。

    ヴァンドーム広場は、いつもと同じこんなスタイル。

    そして、深夜0時過ぎのカフェ……。

    いつも通り、です。

    フランスは、何かと自己責任の国。いい意味でも悪い意味でも、いろんな人がさまざまな自分の意見を好き勝手に(押し付けるようにも)言ってくるとはいえ、その誰かが守ってくれたりするわけではないし、その分析や判断が正しい保証もなくて、決めるのは自分自身。

    戦車が街にやってくる

    フランス人たちは、言葉遊びが大好きなので、この光景も「戦車が街にやってくる(聖者が街にやってくる)」と言いたいところです。
    この頃は日本語を勉強しているフランス人が増えてきているので、笑ってもらえるかな、と。

    そう、笑い飛ばしてないと、やっていられません。何しろ、戦車がふつうに、いつも自分が暮らしてる場所の、路面電車の道を走ってるんですよ。
    これは、昨日土曜日の夜のもの。街の中心のメトロや商店は、万一に備えて閉鎖になっていて、タンクと呼ばれるタイプの戦車が巡回してました。

    建物側に向かって銃を構えて立って乗っている兵士の姿、わかりますか?
    戦車が街にやってくる

    この記事を書いた人

    ボッティ喜美子

    ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

    フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

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