「イギリス許さん」闇のパワースポットめぐり アイルランド「ゴーストツアー」とは?
アイルランド

アイルランド。その響きからするに、いかにもパワースポットが多い国のように感じませんか? 神秘的なケルト文化、巨石の遺跡にロマンティックなお城の廃墟、アイリッシュミュージックを聴きながら草原を歩けば、気分はファンタジーの世界……。

そう、アイルランドはファンタジーの世界。ですから勿論、幽霊も出ます。アイルランドの首都、ダブリンでは、夜半に「幽霊が出るスポット」を巡る「ゴースト・ツアー」が大人気です。

無念の死者を大量に出した、パワースポット(闇)を満喫できます。ファンタジーはファンタジーでも、闇と幽霊と魔法のダークファンタジーな世界に早速出発しましょう。

ゴースト・ツアーに参加しよう

大人気のゴーストツアーは様々な旅行会社が開催しており、特に夏季は毎日いくつもツアーが出発します。最寄のインフォメーションセンターで、都合の良い集合場所や開始時間を確認の上、予約しましょう。
集合場所にはひと目で分かる、おどろおどろしい~幽霊の絵が描かれたバスが留まっています。

さて、チケットを渡してバスに乗り込もうとするとガイドさんが早速質問をしてきます。「あなたの信仰する宗教は何?」
周囲のお客さんは「カトリック」や「プロテスタント」と答える方が多いようでしたが、筆者を含むアジア人のお客さんは「無宗教」や「仏教」なんて答えも返しています。

なぜかメモを取るガイドさん。既にゴーストはスタンバイを始めています。

イギリス支配の象徴であり人が沢山死んだ・夜のダブリン城


ライトが点滅したり、急に煙が噴出したり、ポルターガイスト現象が起きたりして常に不気味な挙動のバスが到着するのは、ダブリンの名観光地・ダブリン城です。昼間は荘厳な美しさを持つダブリン城ですが、夜は一転、薄暗く不気味な雰囲気。

ランタンを手にガイドさんが語ります。実はダブリン城はアイルランドを支配せんとイギリスが建造した要塞。イギリスの過激派プロテスタント・クロムウェルがアイルランドを責め立てた際には、数々の虐殺が行われた現場でもあるのです……

などと言う話をしんみりと聞いている時に、突如城から現れるゾンビ。「プロテスタント許さん」みたいな呪詛を叫びつつ、先程ガイドさんの質問に「プロテスタントです」と答えた人々を集中的に襲うゾンビ。

そう、このツアーは劇団員による寸劇を含む、 “ 幽霊が出るらしい場所で幽霊を出す” ツアーなのです。

ダブリン城
Dame St, Dublin 2,Ireland
公式HPはこちら

数々の政治犯が無念の死を遂げた・キルメイナム刑務所


ゾンビを振り切ってバスに戻ったツアー参加者達が次に降り立つのは、昼間でも不気味なキルメイナム刑務所跡。イギリスへの独立を試み、失敗して処刑された人々のパワースポットです。

降り立った瞬間から、イギリスからの旅行者の皆さんが不安そうな顔になります。

期待を裏切らず、処刑された革命の士の皆さんの幽霊が出ます。「イギリス許さん」みたいな呪詛を叫びつつ、鎖をチャラチャラさせつつ現れる革命の士の幽霊の皆さん。期待が当たってイギリスからの旅行者の皆さんは嬉しそうにキャッキャッしております。

そう、このツアーは各地で死んだ幽霊の皆さんの意思を汲み取り、「プロテスタント」「イギリス」などのキーワードに応じて過激なコミュニケートを求められるシステムなのです。

幽霊に絡まれたら死にかねない、と言うような英語に自信の無い方も安心。プロテスタントの皆さん以外には幽霊はフレンドリーですので、「仏教徒です」と応えておけば安心です。

キルメイナム刑務所
Inchicore Rd, Kilmainham, Kilmainham, Dublin 8 Co. Dublin, Ireland
公式HPはこちら

墓場を眺めながらギネスを一杯


ところで、アイルランドと言えばとても美味しい黒ビールのギネス、そしてウィスキーではないでしょうか? でも、女性の旅では夜中にバーに行くなんて不安ですよね。

そんな需要に応えるかのように、ツアーの最後はアイルランドの伝統的なバーに連れて行って貰えます。雰囲気も良いですし、なんと言ってもバーの隣には墓があります。

ギネスを呑みながら墓を眺めていると、突然「近代医学はしりの時代、解剖のために墓場からは死体を盗み出す犯罪が横行したのだ……」と言う設定で劇団員扮す死体泥棒が現れたりもします。スリリングですね。

求められるのはスリルとダークファンタジーを愛する心だけ


残念ながら解説は英語だけの事が多いゴースト・ツアー。

ですが、怖がるポイントは世界各国共通。ここがサビ!と言う場面では、爆発音が鳴ったりゾンビが走ってきたりするので、言葉が分からずとも普通に怖いです。

ツアーに参加すれば、営業時間外の城や墓に合法的に侵入することが出来る上、幽霊的なものにも確実に出会えます。スリルとダークファンタジーを愛する方、早速バスに乗り込みましょう。

この記事を書いた人

華酉

華酉ライター/中世マニア

北海道生まれドイツ暮らし。大学では歯学と宗教学を修めた為、いつ中世ヨーロッパに飛ばされても活躍できる逸材です。その特性を活かし、日系企業ドイツ支店のお堅い正社員として貿易に励んでいます。 訪れた国は30ヵ国以上、時の権力者に城を陥落されて北海道に逃げ延びたご先祖様の無念を晴らす為、より強い城を求めて各国を放浪中。いつ剣と弓の時代が訪れても良いように、皆様にも選りすぐりの歴史情報をお届けします。

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