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    賃貸希望率338%!? ドイツの歴史的住宅難と借りる方法を解析します!
    ドイツ

    難民の大量流入、ブリグジット。揺れ動くEU情勢の中、ドイツは大きく変わろうとしています。
    政治問題なんて市民生活には関係ないのでは?と思いきや、とんでもない。市民生活を直撃し、社会問題になっているのが、「住宅難」。

     

    家がない、部屋を借りられない。安い部屋はもちろんの事、金に糸目をつけないと評判だった駐在の日本人さえ、ひとたび個人で部屋を借りようとすれば想像を絶する苦労をする事になりました。

     

    もともと、ドイツは東京やロンドンのような人口1,000万人を超える大都市がない国です。ベルリンやフランクフルト、ミュンヘンなど、中規模都市が州ごとに存在し、機能が分散していたのです。
    車社会でもあり、郊外と呼べるエリアが広いことから、先進国の中でも家賃は安く、住環境に恵まれた国だったと言えます。

     

    ところが。
    2015年からの難民危機で、大量の移民が流入します。臨時の収容所は瞬く間にキャパオーバーとなり、慌てて政府が空き家、空き室を借り上げ、移民を住まわせる事態になりました。
    その直後、イギリスのEU離脱問題が勃発。今度は金融関係を始めとする企業が、こぞってドイツへの移動を開始します。

     

    好景気と人口の増加による家賃、土地の激しい値上げはすぐに問題になり、建築ラッシュが続いています。しかし、中国などからの大規模投資も好調で、新しく建つ家も次々買い上げられる事に。

     

    2018年の調査では、主要都市の賃貸希望率は338%、賃貸可能な部屋の数に対し、その3倍もの人々が家を探している事になります。

     

    旧東ドイツエリアなど完全に過疎化している地域や、移民が不法占拠して立ち入れない地域などを勘定に入れると、実際の賃貸希望率は更に跳ね上がるのではないでしょうか。ドイツの家は1、2年では建築が終わらないため、この住宅難はしばらく続く事になりそうです。

     

    ということが分かっていても、学業や仕事のためにドイツに住まなければならない日本人向けに、”ドイツの地獄”住宅探しについてご案内します。

    家の探し方-留学生、駐在員編


    現在のドイツは圧倒的貸し手市場。貸し手は最低でも1年以上の契約を望むので、学生は部屋を借りられません。
    借りられません……借りられないのです。

    ということで、学生や駐在の方は寮か、前任の方の部屋を引き継ぐ事になります。

     

    特に不利な学生ですが、「WG」というシステムが使えるかもしれません。WGは正式名称をWohngemeinschaftといい、シェアハウスを意味します。一部屋の個室を借り、キッチンやバスルームは数人共同で使う賃貸形式です。

     

     

    WGでの暮らしは同居人との相性が何よりも大切。収入がなくても、言葉ができなくても、同居人に気に入られれば部屋を借りられる可能性が高くなります。WGは下記のようなサイトで検索可能です。
    WG Gesucht

    家の探し方-長く住む人編


    ここからが本当の地獄です。
    1年以上ドイツに住む、もしくは共同生活の苦しみを知っている人々は、やはり一人で暮らしたいと思うもの。

    ドイツ人や数々の移民に交じり、賃貸希望率338%を誇る土地で家を探さなければなりません。

     

    2019年現在の激戦区はミュンヘン、フランクフルト、シュトゥットガルトの3都市です。
    この3都市の激戦ぶりは、一軒「部屋を貸します」と広告を出すと24時間で3,000件のメールが届く程だそう。

     

    これ程の数のメールに目を通す事は実質不可能なため、貸主は先着で30~100人程に「内覧」についてのメールを出します。ドイツは、部屋を借りる前に実際に内覧を行う・出向くことが義務になっています。

     

     

    内覧の後、その部屋が気に入れば、必要書類を提出します。必要書類を審査し、貸主が最も良いと思った人に賃貸契約書を送ります。賃貸契約書にサインをすれば、晴れて新生活の始まりです。

     

    現在、ドイツの家探しはインターネットで行う事がほとんど。
    家を探すドイツ人が毎日目を通すサイトは下記の通りです。

    ImmobilienScout24
    ドイツで最もポピュラーで、掲載物件数の多いサイト。個人も企業も物件を掲載しています。
    Immowelt
    細かく条件を絞って検索可能なサイト。物件数はImmo24に比べて少なめ。
    Ebay-kleinanzeigen
    ドイツのE-bayは物件探しサイトとしても人気があります。個人の貸主や、後述する後住人を探している住人がしばしば広告を出しています。

    ドイツ人も騙される……賃貸詐欺の恐怖

    部屋探しは早さ。早さこそがすべてです。収入や人種は一切関係ありません。早さ。そして手数です。
    とにかく応募しまくりましょう。返事を待つ必要はありません。返事は返って来ません。

     

    100件賃貸希望のメールを送っても、返事が返ってくるのは5件程度。そしてその5件のうち、4件は詐欺です。
    賃貸詐欺。これもまた、ドイツの社会問題です。

     

    詐欺メールの文面は、「応募をありがとう。私は〇〇です。現在私は××に住んでおり、ドイツにいません。もうドイツに戻る事はないので、この部屋を貸したいと思っています。▽▽ユーロを振り込んでくれましたら、内覧の為のカギをお送りします。……」(英語)といった内容から始まります。

    「私は××に住んでいます(ドイツ国外)」という文面が出てきたら、メールをゴミ箱に捨てましょう。ドイツ人はケチなので、家を二軒も借りません。

     

    この詐欺メールは、丁寧な英語、長文で書かれている事がほとんどです。非常に手が込んでおり、お金の振込先が実在する弁護士事務所であったり、振り込みを行えば本当に鍵が送られて来たりします。

     

    募集の記事も、本物と一切変わった所がなく、特別安く素敵な部屋の写真が使われている事もありません。実際の文面は更に巧妙でバリエーションに富み、数度のメールのやり取りで安心させた末に「私はドイツに居ません」と始まる事もしばしばです。賃貸に困っている不慣れな外国人、ドイツ人でさえしばしば騙されるほど。

     

    参考までに、本当の管理会社や家主の返信は、
    「〇日×日に××(家の住所)まで来い」(ドイツ語)
    の一文です。

    貸し手市場なので、丁寧な返信が来る事は皆無。部屋の詳細も、貸し手が説明してくれる事はありません。命令通り内覧に行くしかないのです。

    これがないと門前払い! 家を借りる為の必要書類

    家を借りる為に必要な書類は、下記の通り。

    1. Schufa
    2. パスポート、ビザ
    3. 三か月分の収入証明書


    Schufa(シューファ)とは、半官半民の調査機関が発行する、信用調査票です。

    ドイツに暮らしていると無料(一か月待つ必要があり)、もしくは20ユーロで即時発行して貰え、あなたの信用度が100-600までの段階で記されています。

     

    ドイツに暮らす人々は、信じられない程簡単に踏み倒します。様々な理屈をひねり、踏み倒し、延滞し、払うべきお金を払いません。

     

    このSchufaは、「未払い金がないか、踏み倒しがないか、収入・預金があるか」を総合的に示す書類で、家主が絶対的な信頼を置く書類の一つです。

    もしSchufaが手に入らない場合、審査の段階で不利になる事を覚悟しなければなりません。日本で十分な収入や預金があれば、英訳した預金証明で代用できる事もあります。

     

    ちなみに十分な預金とは、10万円程度から。

    本当に充分なの!?と驚いてしまいますが、ライバルは難民や経済移民のため、貯金があるだけでスゴイネの世界です。

    一度審査の場に登れば、日本人が不利になる事はほとんどないのですが、とにかく賃貸希望者の数が多すぎて、送ったメールが読まれていない事が問題なのです。

    目指せNachmieter


    ドイツ人は料理をしません。キッチンは飾りです。
    キッチンはインテリアなので、引っ越しの際に取り外します。内覧に行くと、写真のようなキッチンがない家が七割程を占めるのではないでしょうか。

     

    キッチンはIKEAなどで購入する事ができますが、取り付けには3か月程かかると言われています。ドイツ人は料理をしないので、キッチンがなくても別に困らないのです。

     

    こんな時に心強いのが、Nachmieter(後住人)。家具やキッチンを次に住む人に売るタイプの募集です。大体1,000ユーロ~5,000ユーロ程で、キッチンや家具をつけて家を引き継がせる募集を多く見ます。

     

    生粋のドイツ人はすでにお気に入りのキッチンや家具を持っている可能性が高いため、こうした募集はキッチンを持たない日本人には有利です。

    金ならある!? 専門家を頼るなら……

    日本なら、不動産会社に頼る事も考えますね。
    今まで、ドイツでは不動産会社を経由して部屋を借りると、「賃貸の3か月分の手数料を不動産会社に、賃貸の3か月分の敷金を大家に」支払うシステムでした。

     

    しかし、2016年に貸し手有利だった法律が大きく変わり、この不動産会社に対する賃貸手数料は家を貸す側、大家が支払う事になります。この変更により、大家はインターネットで個人的に広告を出すようになり、不動産会社を頼らなくなりました。

     

    現在、ドイツの不動産会社とは、「部屋の持ち主」であり、大家と変わらない事業を行っている会社になりました。会社といえども持ち家は限られており、実際に「部屋を紹介する」ことはほとんどできません。

     

    ドイツにいくつか存在する日系の不動産会社は、家賃数か月分の、従来通りの紹介料金を借り手からサービス料として受け取ります。ファミリー向けの物件が多いようですが、金に糸目をつけないならば、相談する価値は十分にあります。

    結局どうしたらいいの!? 郷に入らば車を買え


    ところで、家が無いドイツ人はどうしているのでしょうか。
    最も確実な解決方法は、『郊外に住む事』です。

     

    ドイツの主要都市は、パリやロンドン、東京のように交通網が発達していません。自家用車でなければ到達できない集落が無数にあります。ミュンヘンから30分車で走るだけでご覧の通りの畑ぶり。

     

    いわゆる難民危機の時期に入国した移民は自家用車を持つ余裕がない事もあり、ぐっとライバルが減るのが現状です。

    こうした電車、バスの走らない郊外は主要都市から車でわずか20-60分程度であっても、住環境、治安がよく、家賃も従来通りです。ドイツで快適に暮らすためには、車は必需品と言えるかもしれません。

     

    こうしてますますドイツの自動車産業は栄えるのです。ドイツ人だけが得をするシステム。イギリスがEUを抜けた理由がよく分かりますね。

    助けて! 借家人協会

    最後に、転ばぬ先の杖。
    大変な苦労の末、ようやく家を借りられた! でも、これまでの苦労、横暴な貸し手の態度を思うと、不利な条件をつけられているんじゃないかと不安で……。

     

    勘がいいですね、ドイツ向きです! 現在はあまりに貸し手が強くなっているため、ボロ屋を不当な値段で売りつけていたり、「週末は家に居るな」などの意味不明な契約を迫る大家も少なくありません。

     

    しかし、少なくとも家を借りられたなら、救いの手立ては残っています。それが借家人協会(Mieterverein)。
    借家にまつわる様々なトラブルに対し、弁護士や専門家のフォローが付きます。

    年間60-100ユーロ程で入れる保険の一種だと考えて差し支えありません。

     

    ドイツでは、法律的には借家人の権利はかなり手厚く守られています。大家や不動産会社に「Mietervereinに入りました/相談しました」と告げると、ぐっと態度が良くなり、無茶な事は言わなくなります。
    ひとたび家を借りてしまえば、不公平な点に対しての申し立ては平等です。

    終わりに

    ここまで読んで、ドイツには住みたくないな……と思われましたでしょうか。危機管理能力が高いですね。ドイツに住むのに向いています。

     

    しかし、経済的には発展中、好景気の中にあるドイツ。仕事はもちろん、将来のために留学を考えている方も少なくないのではないでしょうか。

     

    住宅問題は、政策の失敗がダイレクトに庶民生活に影響を及ぼした失敗の一例といえます。こうなる事は薄々察されていたにも関わらず、いまだに解決のめどが立っていないところも、ドイツの意外な弱点を晒したのではないでしょうか。

     

    そうであったとしても、家が無ければ生活は成り立たないもの。

    この苦難を乗り越えれば、あなたのドイツ語は飛躍的に向上するはず。

    戦わなければ生き残れない国、ドイツ。まずは住処を勝ち取る事から始めてみましょう。

    ときめきWG暮らし

    日本でもシェアハウスが流行☆というニュースを見ると、自分がWGで暮らしていた時の事を思い出し、「バスルームから知らない全裸の男が出て来たり、朝の四時まで隣室のスペイン人がレリゴーを歌い踊り狂っていたり、真夜中にヤク中のユダヤ人がキッチン中の皿を壁に投げつける音で起きたりしたいのか?正気か?」と思います。

    この記事を書いた人

    華酉

    華酉ライター/中世マニア

    北海道生まれドイツ暮らし。大学では歯学と宗教学を修めた為、いつ中世ヨーロッパに飛ばされても活躍できる逸材です。その特性を活かし、日系企業ドイツ支店のお堅い正社員として貿易に励んでいます。
    訪れた国は30ヵ国以上、時の権力者に城を陥落されて北海道に逃げ延びたご先祖様の無念を晴らす為、より強い城を求めて各国を放浪中。いつ剣と弓の時代が訪れても良いように、皆様にも選りすぐりの歴史情報をお届けします。

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