こんにちは。美大生ライターのきたこです。皆さんは、岐阜県にある「養老天命反転地」というスポットをご存知でしょうか?
ここは、2003年に紫綬褒章を受章した現代美術家の荒川修作と、パートナーの詩人マドリン・ギンズの2人のアートプロジェクトによってつくられたフォトジェニックなテーマパークです!
今回、そこで大学の愉快な仲間たちと、あの手この手で面白い写真をカメラに収めるべく奮闘してまいりました!
突然ですがこちらの写真をみてください
上の写真、私と友人が被写体です。こんなオシャレでなんだか不思議な写真が撮れちゃうスポットが、岐阜県にある養老天命反転地です。
大学のこんな感じの愉快な仲間たちと、あの手この手で面白い写真をカメラに収めるべく奮闘してまいりました!(3人ともありがとな!)
厳選ベストショット集
養老天命反転地記念館
カラフルな内装で、高さのバラバラないくつもの塀が配されています。ポイントは床と天井が鏡写しのようになっていて、上下がひっくり返ったような写真が撮れること!
「腕どうする?」「髪の毛逆立てる?」相談を重ねます。撮れたのはこちら!
『ブレイクダンス』
『バランス感覚』
「もっと右手上!」「もっと反って!」などあれこれ言いながら、何枚も撮りました。片足は上げて、足先まで入れるのがポイント!
『浮遊感』
簡単な加工をすれば、こんな上下のわけわからない写真もできます! 上下反転してくっつけただけ! スマホのアプリでできます。「いいね!」大量ゲット間違いなし……!?
背丈ほどの塀に登ったり降りたり、普段は使わない筋肉を使い、早くもインドア派の体に疲労が。こうして屍になるだけで画になるのすごいです。それにしてもカラフルな服装で行ってよかった!
まだまだ行きますよ、厳選謎写真。撮影地の名前とタイトルとともにどうぞ!!
昆虫山脈
『軽装備の山頂アタック』
『見ざる言わざる聞かざる』
日本酒のCMっぽい派と、痔の薬のCMっぽい派に分かれました。ここはポーズ次第でテクニックとかは無しにいい感じの写真が撮れます。
極限で似るものの家
『平行線』
斜面を利用して。他の場所も斜面だらけなので何パターンも撮っても面白いと思います!
白昼の混乱地帯
『ベクトルが違いすぎて話がまとまらない』
美大生あるある(だと勝手に思っている)。向いている方向が違うからこそ面白いんですけどね! 他にも「解散目前のバンド」など、バラバラと散らばるソファに座るだけで微妙な距離感の人間ドラマが再現できます。
楕円形のフィールド
『滑ってきた瓦』
『瓦に置いて行かれた』
『もっと包容力のある瓦つかまえた』
瓦の地面に惹かれてふざけ倒しました。うろこ状で光っていて本当に綺麗だったんです!
ここまでお付き合いありがとうございます!
そもそもここって何?
養老天命反転地というなんとも強そうな名前のスポットですが、実は2003年に紫綬褒章を受章した現代美術家の荒川修作と、パートナーの詩人マドリン・ギンズの2人のアートプロジェクトによってつくられたテーマパークです!
-1936年名古屋生まれ。美術家。1961年よりニューヨークで活動。’62年にマドリン・ギンズと出会い、共同作業を開始。絵画から立体、書籍、そして建築と多岐にわたる表現により各方面で高い評価を得た。2003年に紫綬褒章受章。2010年死去。もっと詳しく
マドリン・ギンズ
-1941年ニューヨーク生まれ。詩人。哲学的思想に優れ、荒川と出会ってからは互いに触発し合い、共同制作をするようになる。2014年死去。もっと詳しく。
読んで不思議に思われたかもしれませんが、撮影スポットの名前「極限で似るものの家」「白昼の混乱地帯」なんて、テーマパークにつけるには意味深ですよね。その意味は実際に行ってもピンときませんでした……。普通のテーマパークとは一線を画しています。
しかも以下のように「使用法」なるものが提案されています。
・何度か家を出たり入ったりし、その都度違った入り口を通ること。
・中に入ってバランスを失うような気がしたら、自分の名前を叫んでみること。他の人の名前でもよい。
(一部抜粋)
どういう意図で作られたの?
マドリン・ギンズという人はNY生まれの詩人で、哲学的思想に優れていました。なので、結構、養老天命反転地をちゃんと知ろうとすると哲学っぽくて難しいのですが……。
できるだけ簡単に言えば、荒川とギンズは、『これまでの美術は人間の「精神」にばかり注目して、「身体」をないがしろにしてきた。これからは「身体性」を利用しないと人々を絶望から救うことはできない』と考えました。
人間の身体や感覚に揺さぶりをかけて、固定観念や常識を転換させよう(=天命の反転)という課題のもと、この大規模なテーマパークは作られたのです。
だから子供の遊び場というよりむしろ、頭も体も凝り固まった大人にこそ心と身体で体感する価値のある場所です! 地面は水平面がほとんどなく斜面ばかりで、結構容赦なく滑ります。
気をつけないと色々なところにぶつかります。なのでヘルメットと運動靴を借りることができます。けが人が出る前提(!)なので、救急箱も常備されています。
いろいろなゾーンを歩き回りながら写真を撮るうち、身体が斜めなのか地面が斜めなのか、カメラが斜めなのか?? わけがわからなくなりました。
これも作者の2人の意図なのです。身体と知覚、特に視覚を揺さぶることを目的に、角度のバラバラな地平線が配置されています。
▲楕円形のフィールド
行く前はアスレチック的なものを想像していたのですが、そうではなく運動神経とかの及ぶ以前のよちよち歩きしかできない状態に戻され、並行・水平・距離の感覚が曖昧になる体験でした。
まさに揺さぶられる感じ。
「死なないために」
▲「もののあわれ変容器」の前で
▲中にはべッドがあらゆるところに刺さっていました
彼らの仕事の一貫したテーマに「死なないために」というものがあります。この言葉の意味も一言では表せないですが……。(荒川修作自身が、「自分の言っていることの一部分しか他の人には理解できないだろう」と言っていたのですから)
1つには、身体の限界(だと思われている境地)を越えれば人は死なない。つまり、歳をとって転んでは危ないからと言って、住居内の段差や傾斜をなくしてしまっては人間本来の身体能力を余計に衰退させて早く死んでしまう。
そのため、あえて家の中にも段差や球体の要素を取り入れて、身体の限界を限界ではなくす(=天命の反転)必要があるという考えだと言えると思います。
(実は、この思想を実現した本当に住める住宅が東京の三鷹にあります! びっくりすると思いますので是非こちらから見てみてください。)
養老天命反転地にもこの「死なないために」を冠した「死なないための道」が、メインの「極限で似るものの家」と「楕円形のフィールド」を結んでいます。
いつの間にか背丈よりも高くなっていたり枝分かれして迷路になっていました。
迷ったら頭より身体を動かそう
と、養老天命反転地についていろいろ調べて思いました。2人の思想は難しいけれど自分なりに解釈した結果「理屈っぽくなりすぎず、直感を信じることも大切にしよう」とも思います。
それにしてもあの日いつも以上にハイテンションになって動き回れたのは、ちょっと感覚的に非現実な世界だったからなのでしょうか! 帰ってきて数日経って今でも、いろんな景色がありありと思い起こされます。
感覚が研ぎ澄まされていたのかな? ちょっとしたことが本当に楽しく感じ、いい写真がたくさん撮れました!
岐阜県養老郡養老町高林1298-2
入場時間:9:00~16:30※開園時間は9:00~17:00
休園日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
公式HPはこちら