いまいちパッとしない街、フランクフルトの癖の強い楽しみ方
ドイツ

欧州の玄関口、フランクフルトへようこそ!
ここは欧州銀行の本部が置かれた金融の街。ヨーロッパ最大級の空港を抱える、ドイツの歴史ある都なのです。

空港に用があるがために、パリやアムステルダムに比べるといまいちパッとしないこの街に滞在する事になってしまった方へ。
フランクフルトは、ドイツの過去と未来を一望できる面白い街です。完璧な「リフォーム」を受けた歴史ある街並み、ブランド、うまくない飯、発展、そして闇までも……。
一日でなんとなくドイツが分かる街、フランクフルトをご案内します。

1.フランクフルト旧市街


フランクフルトの旧市街は、空港駅から30分、中央駅からもトラムや地下鉄で10分程度の場所にあります。フランクフルトは戦争で徹底的に焼かれており、街並みはどこも近代的。しかしこの旧市街は、古い建物を再現しており、プチ・中世気分を味合わせてくれます。

ドイツの焼け跡からの中世の再現には執念が篭っており、ただの再現ではありません。
その技術の高さを示す逸話の一つが、ドイツ・ドレスデンのフラウエン教会。爆破された瓦礫の山を、ひと欠片ひと欠片繋ぎ合わせて、美しい教会を再建し、「世界一難しいパズル」などと呼ばれています。

ドイツの顔、フランクフルトの旧市街も、資料を元に家の傾きに至るまで再現されています。また、復元の際に参考にされた資料は「歴史博物館」で実際に見学が可能です。
ドイツはリフォームが得意なお国柄。見た目は中世でも、中は近代的に整えられており、清潔で機能的です。ドイツでは個人住宅でも、100年~200年前に建築されたものが少なくありません。「外は旧式、中は最新」のドイツ技術を端的に味わえるのがこちら、旧市街です。戦争で焼き出されていない、ローテンブルクやマールブルクなどの「本物の中世」を訪れる前後に見比べると、感動もひとしおですよ。

2.博物館の岸辺


フランクフルトは金融の街です。そして金持ちはコレクションが好きなもの。フランクフルトには2019年現在、大小60以上のも博物館、美術館があります。
美術、建築、技術、歴史……そのジャンルは多岐に渡り、これは一日では回り切れません。
中でも評価が高く、誰にでもお勧めできる美術館が、「シュテーデル美術館」。

フランクフルトの銀行家だったシュテーデル家の寄贈で建てられました。
中世から近代、そして現代美術に至るまで、年代に沿って様々な絵画が展示されており、一周するだけで芸術史が俯瞰できる優れた美術館です。フェルメールやラファエロ、モネなど、誰もが一度は聞いた事のある画家の名だたる作品がいくつも展示されています。

3.インパクト大! フランクフルトグルメ

グルメでは全く話題に上がらないドイツですが、フランクフルトの郷土料理はいずれもインパクト特大。緑色のハーブソースに肉や卵が浮かぶグリューネゾーゼ(Grüne Soße)は、マイルドな青汁、凝縮された七草粥、草原の味がするハーブソースで、フランクフルトではシュニッツェルなどのお馴染みのドイツ料理に付け合わせて食べます。

可愛らしい円形の、発酵したチーズ、ハンドケーゼ(Handkäse)もフランクフルト名物。レストランでは、チーズの臭みを消す為、チーズを酢漬けにしたり、酢漬けの玉ねぎを乗せています。臭みけしの為に酢漬けにする、と言うのはちょっと珍しい手腕ですね。お試しになると、なぜ他の地域でやっていないか分かります。

リンゴから作られる無いワイン、アプフェルワイン(Apfelwein)も試す価値ありです。香りは甘いリンゴなのですが、リンゴの糖分をアルコールに発酵させた飲み物の為、意外にも味はなく、やや苦みと酸味のある水のようです。ドイツ人は夏場に水のように飲み干しますが、日本人は「なんで……?」という何とも言えない顔になります。ぜひお試しください。

いずれも癖が強く、好みが分かれます。どれも歴史ある食材ですので、「これがドイツか……」と言う思いに浸る事ができます。
フランクフルト空港からフランスやイタリアに行くなら、もう「なんで……?」という想いになるグルメは味わえないかも知れません。ぜひ異文化に触れてみてください。
比較的美味しいフランクフルト名物の記事はこちらから

4.ドイツ名物は何でも買える! ショッピング

フランクフルトに来たからには、ショッピングをしない手はありません!
フランクフルト中心部には、ドイツの代表的なブランドはほとんど全て揃っています。
歩行者天国であるツァイル通りは、フランクフルト市の目抜き通り。とりあえずここを歩けば、ブランドはもちろん、ドラッグストアやスーパーも揃っています。
お勧めは、ガラス張りの建築が印象的、週末はドイツ人でにぎわう「マイツァイル(My Zeil)」。地下にはスーパーとドラッグストア、ドイツの紅茶ブランド「ロンネフェルト」専門店も含む、庶民的なショッピングセンターです。自分土産を探すにも最適です。

ドイツ人だって不味い飯ばかり食べている訳ではありません。行くところに行けば、美味しいものも売っているのです。そんな穴場が、庶民の市場クラインマルクトハレ。塊で吊るされている迫力たっぷりの肉屋、見た事も無いような野菜や、華やかなスイーツ。チーズやパンと言った食品のお土産を探すなら、デパ地下感覚で楽しめるクラインマルクトハレがお勧めです。
市場直営の立ち飲みバーやレストランはいつもドイツ人で賑わっており、味はお墨付きです。

5.「欧州」へようこそ 混沌のフランクフルト中央駅


「ダークツアリズム」に興味があろうとなかろうと、観光客の多くが通らざるを得ないフランクフルト中央駅。レトロモダンなガラス張りの建物が美しい場所ですが、天井を見上げているとトランクをひったくられる、欧州有数の治安が悪い場所です。
フランクフルト中央駅は、ここ1~2年はテロのターゲットとして警戒が強まり、プラットホームだけは表向き平和になりました。
しかし、地下鉄駅に続くその地下は、朝には注射器が転がっている薬物の一大マーケット。薬物はドイツにおいては犯罪ですが、余りに容易に手に入る為、タバコのポイ捨てと同じく「目の前で売ったり打ったりしてたら捕まえるか……」ぐらいの優先順位の低い犯罪です。

また、フランクフルト中央駅から、先に挙げたフランクフルト旧市街までの、徒歩15分程度の道のりがよりによって半スラム街と化しています。
駅前であるにも関わらず、ゴミまみれの道、平日の昼間なのにブラブラしている人々、半裸の女性、やっぱり転がっている注射器……と「現代」を感じさせる道です。駅前のカイザー通り(Kaiserstraße)より北には立ち入らない事をお勧めします。

6.一路隔てれば異国へ ヘキスト市


フランクフルト市に含まれながら、空襲を逃れた郊外、ヘキスト市。フランクフルト公式観光局のホームページにも掲載されている、木組みの家々、可愛らしいお城や豪華絢爛な宮殿が建つ、ノスタルジックな旧市街が自慢です。
恵まれた観光名所にも関わらず知名度が低いのは、西には偶に爆発して毒ガスをまき散らす化学工場、東をプチイスタンブールことスラム街に挟まれている為でしょう。
ドイツには複数、プチ・イスタンブールと言われているエリアがありますが、決してエスニックな意味ではなく、移民の多いスラム街をちょっとオシャレに言い換えただけの場所です。観光客は立ち寄らず、本物のイスタンブールに行きましょう。
ドイツのリフォーム技術が光る麗しの旧市街、そしてぼろぼろのスラム街。これが通り一本を隔てるだけのヘキスト市は、現代ドイツを象徴する眺めと言えるかもしれません。

空港の街、乗り継ぎの街と言った印象のフランクフルト。しかしその実態は、そんな観光客でもしっかり楽しめるドイツ有数の大都市です。有り余る博物館の数に圧倒され、尽きる事のないショッピングを楽しみ、フランクフルトの名物料理を注文して「これがドイツか……」という想いにお浸り下さい。観光の初日、そして最終日もしっかりとドイツを満喫できますよ。

この記事を書いた人

華酉

華酉ライター/中世マニア

北海道生まれドイツ暮らし。大学では歯学と宗教学を修めた為、いつ中世ヨーロッパに飛ばされても活躍できる逸材です。その特性を活かし、日系企業ドイツ支店のお堅い正社員として貿易に励んでいます。 訪れた国は30ヵ国以上、時の権力者に城を陥落されて北海道に逃げ延びたご先祖様の無念を晴らす為、より強い城を求めて各国を放浪中。いつ剣と弓の時代が訪れても良いように、皆様にも選りすぐりの歴史情報をお届けします。

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