からすみはフランスでもよく知られる食材だった!
フランス

フランスでからすみが作られているって、フランス人も食べるって、聞いたことありますか?

実は、からすみは南仏マルティーグの伝統産業のひとつなんです! 
……と、今でこそ、こんな風にエラソウに口にしていますけど、マルセイユで暮らし始めるまで、ゼンゼン知りませんでした。

というより、想像もしませんでした。

 

和食の高級食材としてのイメージしかなかったので、最初、南仏(マルセイユから車で25分ほどの)マルティーグのビストロのメニューで見たときには、Poutargueというフランス語名の単語自体知らなくて、「Mugeという魚の卵です。日本にもあると聞いていますよ」と言われても、どの魚のことだからかも見当もつかず(日本でいう「ボラ」のことでした)。
「現物持ってきますね」と、お店のマダムに見せてもらってびっくり。

地中海の恵みのひとつ”マルティーグのキャビア”とも呼ばれています

どうして、メニューの内容をきっちり確認していたのかというと、評判のその店は、週ごとに前菜とメインのメニューが決まっていて、選べるのはデザートだけ。

 

ただし、もし苦手な食材や味付けがあれば、代わりのものを考えて変えてもらえるというスタイルだったので。

魚卵は苦手な人の多いフランス。それでも、キャビアは大好きという人が多いのは先日書いた通りなんですが、Poutargueからすみは、南仏プロヴァンスではキャビアと同じぐらい愛されている印象をうけるものの、パリをはじめ、よその土地ではそれほどでもない感じ。

むしろ、(私の知っている限りでは)苦手な人が目立つぐらいだったりします。

 

だからでしょうね。お店のマダムも、最初に食前酒の註文を訊きながら、「今日はどちらからですか?」

「私たちはマルセイユに住んでいるけれど、他の二人はパリから」と言うと、「Poutargueからすみは、お好きですか?」という会話になったわけです。「苦手な人も少なくないから」と。

「マルティーグのものは、召し上がったことありますか? 他の土地のものとは、ちょっと違うんですよ。」とも付け加えて。

 

そうなんです。Poutargueからすみは地中海の恵みのひとつ。沿岸諸国で作られています。

 

イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、トルコ、そして、チュニジア、アルジェリア……。

同じように、南欧で収穫され作られているオリーヴオイルの品質や味わいがそれぞれ異なるようにPoutargueからすみも、原産国や製法によって、乾燥具合や味わいが極端に違うことさえあります。

 

真空パックになった状態、蝋細工で長期保存できる状態になったものが、フランス中のスーパーマーケットなどに並んでいるんですが、その多くが、フランスより物価の安い外国産。

だから、価格も抑えられています。

あれ?と思いましたか?

 

キャビアは国産の方が新鮮で、味や食感がいいと言われる上に買いやすい価格帯なのに、国産(南仏マルティーグ)のからすみは外国産より美味しいけれど、その分値段も高いんです。どんどん稀少になっているらしいから。

ここのものが逸品というのはよく知られていて、マルティーグ産のからすみは『Caviar martégalマルティーグのキャビア』とも呼ばれているんです。

 

地産地消費がフレンチスタイルなので、八百屋さんでも買えたりします

魚卵は苦手という人の目立つフランスなので、それほど家庭の食卓に上ることはないし、パリのビストロメニューでもそう見かけることはないんですが、南仏の魚介専門店はモチロン、八百屋さんのレジ脇には、今の季節、旬の南仏名産トリュフと一緒にマルティーグ産のからすみが置かれていたりします。

写真向かって左が真空パック(封を開けたら早く使わないと風味が変わってしまいます)、真ん中は蝋で包んだもの(使う分だけ輪切りにするだけ。残りはひと月は美味しいままいただけます)、そして、摩り下ろしたものの瓶詰め(このままパスタに使えます)。

 

蝋加工の場合はこんな感じです。

家庭でのレシピを訊ねると、どれもフレンチスタイル(当たり前ですね)なのに、しっくり。

ドライソーセージみたいに、スライスしただけの状態でアペリティフに出されることも。

 

ビストロメニューとしてもポピュラー。モチロンいただきかたが洋風なのは、1番最初の写真のタルティンヌ(バゲットの薄切りに、バターとポロねぎスライスとからすみのスライスをのせただけのもの。でも、とびきり美味しい!定番)でもお分かりいただける通りです。

基本的にはスライスして、もしくはすりおろして。

シンプルに素材の味を楽しむのは、同じですね。

 

そしてモチロン、和風でも絶品!

とはいえ、厳密に言うと、やっぱり日本のからすみとは食感も味も少し異なるので、洋風にいただいた方が美味しいのかと思い始めていたんですが、プロの手にかかると、さすが! 世界が広がりますね。

 

ニースのSushi-Kのシェフは、こんな風にフュージョンさせていて、フランス人たちをうならせています。

美味しいものに国境はありませんよね。

 

食も暮らしも、しなやかになればなるほど、ふり幅が広がっていく気がしています。

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

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