近年、ロンドンに巻き起こっているのがラーメンブーム。
ひと昔前までは、イギリスで本格的なラーメンを食べるなんて夢物語でしたが、ここ数年で新しいラーメン屋が次々とオープン。いまやロンドンは日本に引けを取らないラーメンが食べられる場所だといいます。
特に人気が高いのが豚骨ラーメンで、ロンドンきっての繁華街・ピカデリーサーカス周辺は何軒ものラーメン屋がひしめく激戦区となっています。
そんな中でも絶大な人気を誇っているのが、「Kanada-Ya(金田屋)」。ロンドンで行列ができるラーメン屋の味はいかほどか、ロンドン店ならではのトリュフラーメンを実食してみました。
福岡の名店「金田屋」がロンドンに上陸
ロンドンに次々とオープンしたラーメン屋のなかでも一番との呼び声が高いのが、2014年にオープンした「Kanada-Ya(金田屋)」です。
金田屋は、食べログの福岡ラーメン部門で1位に輝いたこともある名店。日本で口にした金田屋の味に感動し修行したイギリス人のオーナーがロンドンにオープンした暖簾分けです。
カフェ風のおしゃれな店舗
ロンドンにあるKanada-Yaは、コヴェント・ガーデン店とピカデリー店の2店舗。いずれもロンドンの一等地です。今回筆者は、コヴェント・ガーデン店にお邪魔しました。
白い外観が印象的なナチュラルテイストのカフェ風の店舗は、一見ラーメン屋さんには見えないほどおしゃれ。それだけに、インパクト大のイラスト入りの看板が目を引きます。
道路を挟んだ向かいには、博多発の有名店ラーメン屋「一風堂」が。Kanada-Yaほどではないにしてもこちらも盛況で、ロンドンにおけるラーメン人気の高さをうかがわせます。
2軒のラーメン屋に挟まれた道路を、ロンドン名物の2階建てバス「ダブルデッカー」が通る光景は、なんだか不思議。
アジア系の若者に大人気
筆者がKanada-Yaに到着したのは、夕食には早い午後17時半。入店時にはまだ席に余裕がありましたが、あれよあれよという間に満席に。店を後にした18時ごろには、入店待ちの列ができるほどになっていました。
筆者の来店時は、お客さんの9割がアジア系の若者で、その多くが中国系のようでした。
嬉しそうにポイントカードを差し出していた青年もいれば、スーツケースを抱えてやってきた女性グループもいたので、ロンドン在住者だけでなく観光客にも人気のようです。
あいさつは日本語で
筆者の来店時、Kanada-Yaのスタッフは1人がヨーロッパ人で、あとは東・東南アジア系。日本人の姿はありませんでした。それでも「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」というあいさつは日本語で統一されていました。
BGMはケイティ・ペリー、リッキー・マーティン、ビヨンセなどの洋楽コンピレーション。特に日本らしさはありません。
以前、日本人町があるドイツのデュッセルドルフでラーメンを食べたときは、スタッフのほとんどが日本人、お客さんも半数は日本人、BGMはJポップで日本にいるような錯覚を覚えましたが、ロンドンのKanada-Yaはあくまでも日本文化を取り入れた海外のお店といった雰囲気です。
ロンドン店だけのトリュフラーメン
ロンドンのKanada-Yaには、とんこつラーメンやチャーシューメンといったスタンダードなラーメンのほかに、むしろ本家の福岡のお店では味わえない変わりダネがあります。
そのひとつが、お値段14ポンド(約2,100円)の「トリュフラーメン」。サービス料を加えるとほぼ2,500円です。
物価の高いイギリスとはいえなかなか強気の価格設定ですが、上品な高級食材のトリュフと、B級グルメのラーメン……ミスマッチな組み合わせに興味をそそられます。これは一度試してみなければ!
トリュフの香りが広がる優雅なラーメン
ラーメンが運ばれてきた瞬間、トリュフの香りがあたりに広がりました。その香りのもとは、ラーメンに浮かぶトリュフペースト。これがこんなに強い香りを出しているとは、さすがはトリュフ。
「ラーメンにトリュフってどうなんだろう……」と思いながらスープを一口すすってみると、これが意外に合います。トリュフの優雅な香りと豚骨の不思議なマッチングがクセになる、きのこ好きにはたまらない一品。
Kanada-Yaのスープが濃厚な豚骨でありながら、臭みがなく上品で重たくないからこそ、トリュフと合わせても違和感がないのでしょう。
硬さが選べる本場福岡の細麺
麺は本場福岡のストレートの細麺を使った本格派。「EXTRA HARD」「HARD」「REGULAR」「SOFT」の4段階から麺の硬さが選べるのも、日本人には嬉しいところです。
「HARD」を注文したところ、日本の一般的なラーメンと同じくらいの硬さだったので、硬めが好きな人は「EXTRA HARD」を選んだほうがいいかもしれません。日本に比べると、海外では柔らかめのラーメンが好まれることが多いように思います。
麺が筆者の好みよりはやや柔らかかったとはいえ、チャーシューも味がしみて柔らかく、まさに「日本のおいしいラーメン」そのもの。さすがは「ロンドンで一番」と評判のラーメン屋だけのことはあります。
むしろ日本ではあまり見かけないトリュフラーメンは、和と洋が出会ったロンドンらしい進化形ラーメンといえるかもしれません。
ピザやパスタがもはやイタリア料理の枠を超えて「世界食」になっているように、ラーメンもそうなりつつあるのかもと「Ramen」の計り知れない可能性を感じました。