フランスにも待機児童はいる?日本と異なる育児事情からヒントを得る
フランス

フランスでの育児。国は援助してくれるし、パートナーも協力的で、家事の負担もないから仕事も続けやすい、とよく言われていますよね。

だから、フランスの女性達は、いつまでも女であることも忘れない。キレイにしていられるし、キャリアアップも家庭の充実も思いのまま……なんてイメージありませんか?

とんでもない!

保育園の待機児童リストが存在するのは、フランスでも(都市部では)アタリマエのことだし、妊娠していることを確認できたら、まず保育園のチェックをするのも大事な出産準備のひとつ。

生まれてもいない状況で公式手続きは無理だけれど、根回しはできるわけです。

『縁故を使う』というと悪い印象になるかもしれませんね。でも、『縁故に頼る』というのは、フランス生活のすべてにおいて、とても重要なもののひとつだと私は感じています。

ズルして入れてもらうというのではなくて、周りの人に助けが必要なことを声を上げておくことで、気に掛けておいて貰えるから。

私自身は、家族は遠くて、忙しい夫以外に頼る人がいないことを周りに知ってもらえたお陰で、逆にいろんな方が教えてくれたり、助けてくれました。

保育園不足!はフランスも同じ。支えるのは、祖父母や保育ママの存在。


妊娠がわかった時点で保育園の申し込みを出来るところ(0歳児からの預かりの場合など)もあるし、公的機関から紹介される保育ママ以外に友人知人の関係から打診しておくことも。

保育ママは3人まで預かることが出来る法律なので、親しい同士・近所同士で同じ人に頼む人もいるし、イメージ的には比較的簡単に見つかりそうですよね。

でも、そうでもないんです。優秀と評判の人が必ずしも相性いいとも限らないし、保育への価値観が違うこともありますから。

そして、そうした一切が難しそうな状況なら、(赤ちゃんにとっての)祖父母や親族、小さい子どもがいて休職中の親族・友人知人、などなど体制を整えていきます。

イクメンというのは、日本で語られているほどステレオタイプに普及しているわけでもなくて、カップルごと、家庭ごとにケース・バイ・ケースです。

日本でこの頃、不幸の象徴のように耳にするワン・オペ体制というのも、フランスでは、案外、普通のこととして受け継がれてもいます。今の祖父母の世代では、子どもを持ったら会社を辞める女性がまだまだ主流だったんですから。

むしろ、子どもが小さいうちは、できるだけ子どもと一緒に過ごしたいという女性は案外多いんです。(その話は、追ってまた)

そう、ずっと以前はフランスもほとんど専業主婦だったし、今、定年になっている世代の人たちあたりまでは、まだまだそういう時代でしたから。

うんとキャリアも収入もあって続けているという夫婦もいれば、パートナーの収入だけでは十分ではないからという事由のひともいるし、本当に、100の家庭が100通りのスタイルを持っています。

カップル社会といわれているフランスですが、子どもの教育への価値観で、生活リズムはずいぶん違います。

母親が子育て一切を仕切るスタイルも存在しているし、学校のことを考えて住まいを決めたり、父親が転勤になっても母子の引越しは子どもの学年の切り替わりにするという子ども優先の家庭も目立ちます。単身赴任も、意外と少なくないんですよ。

フランスでは、幼稚園の送り迎えにパパをよく見かける理由

育児半々の象徴としてよく見かける写真は、子どもの手を繋いで幼稚園や小学校に向かうパパたちの姿。妻が仕事を続けるために協力的な夫!に違いはないんですが、お迎えのほとんどはママンたちなのが主流です。でも、そちらは、報道はあまりされていないですね。

出産後に職場復帰、または、再就職する女性たちは、mi-temps(ミトン)と呼ばれる時短就業を選ぶ人が目立つんです。週35時間労働の約半分。

毎日半分というわけではなくて、週4日だけ、午後4時までの就業にしたり、学校が午前中だけの水曜日は半日だけ、または就業しない、というスタイル。

そのかわり始業が早かったりもするし、子どもの身支度をして自分も……となるより、パパが通勤途中に送り届けるほうが合理的。それに、その時間のふれあいを楽しみにしているパパたちも少なくないんです。決して、家事育児半々の義務的意識なんかじゃなくて(それは、そういう人もいるでしょうけど)。

幼稚園や小学校は、公立の場合、自宅の最寄り、または、両親いずれかの勤め先の最寄りを選べるので、お昼休みに迎えに来て一緒にということも可能です。フランスの学校のお昼休みは2時間あるので、家に帰る子も意外と多いんですよ。

パリは別として、たいていの街町では、職住至近のライフスタイルが多いので、家族で食事という場合も。夜の食事は、大人と子ども別々にという家庭も少なくないですから。

ところで、そんな長い昼休み、私の周りのママンたちは、こんな風にちょっと素敵な使い方をしています。

上の子も下の子も平等。曜日決めで楽しみな、ママンを独り占め時間。

最初に、ぜひ知っていただきたいのが、フランスと日本の子育て感覚の決定的な違いーそれは、「お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから我慢しなさい」がないこと。

上の子に「大きいからできるでしょう?」とか「大きいんだから我慢しなさい」(下の子に譲ってあげなさい)がないんです。

もちろん、大きい子は小さい子に気をつけてあげることを教わるし、なんでも対等にということではなくて、両親との距離感はどの子も同じでいられるということ。

日本だと、よく、下の子が生まれると、お母さんは赤ちゃんにかかわりっきりになってしまうのが当たり前で、そうして、そのまま大きくなるにつれ、上の子はお母さんの補佐的存在になって、下の子はいつまでも赤ちゃん扱いで……どちらも、それぞれ、自分の扱われ方が不満になりがちですよね。

息子が幼稚園に就学して、いろんな家庭とかかわりあうようになって、目からウロコだったのが、きょうだいの育て方の違い。お昼休みの機会均等……ママンを独り占めできる時間がどの子にも存在するようにしているお母さんが多いんです。

仕事をしていてもいなくても、お母さんは、夕方時間がありませんよね。フランスの幼稚園は終わるのが遅いので、家に帰るともう5時過ぎ。夕食の支度をしてお風呂に入れて……ゆっくり話を聞いてやる時間もありません。でも、2時間もあるお昼休みなら? そして、1人ずつなら?

そう、曜日を決めて、子どもたちを1人だけ迎えに行って、お昼休みを過ごすお母さんが、意外と多いんです。どの子も順番だから余計な我慢はいらないし、話したいことは自分の日にということを理解させられるんですね。

だから、普段の日の忙しい夕方や、お母さんが別のお母さんとお茶を飲んで子どもたちだけ別に遊ばせているようなときに、むやみにまとわりついてくるようなこともなくなるわけです。

日本の働くママたちとの出会いで改めて感じたこと。

さて、フランスでの妊娠出産環境や医療福祉制度などがどうなっているのか、具体的にお伝えするのは追ってまた改めて。

進学や受験への意識・家庭でのコミュニケーションもゼンゼン違うのは、この夏も、日本のママ友と新たに驚きあってきたところで、本当に、根っこの部分から異なります。

単純に比較して、真似しあってということができるようなものではないから、出生率や待機児童問題、そしてこの頃では、高校無償化について議論されているようですけど、決して、同じにはなりえないんです。

同じ国で、学校で、同じであるべきと思いがちですが、子どもはそれぞれ、家庭もそれぞれ。こうあるべき、という視点ではなくて、この子はこうだからこうしてあげよう・させてあげたいと1人ずつと向き合うことは、とても大切な気がします。

私自身がフランス式にも日本式にも足かせを感じないで、イイとこ取りしてこれたのは、日仏双方のお母さんたち、そして、かかわりあってくれているすべての人たちのお陰。そのシアワセの連鎖(というとちょっと大げさですけど)がWeb越しに実現できたらと思っています。

下の写真2点は、友人のヴァレリーが、この記事のために提供してくれたもの。家族の、素顔の一瞬です。もちろんここ数年前のものなんですけど、モノクロ写真にするのを好む人が多いのもフレンチスタイル。空気が伝われば幸いです。

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

    チャンネル

    チャンネルをもっと見る