この水玉模様のピンクのキャップをかぶった瓶、一度はどこかで見たことがありませんか?
これは、その抜群のセンスから「ジャムの妖精」と呼ばれるフランスのパティシエール、クリスティーヌ・フェルベールさんのコンフィチュール。
世界中のグルメから熱視線を浴びる彼女のコンフィチュールは、オーダーが入っても実際に出荷できるのはわずか10分の1ほどだといいます。
日本で買うと一瓶2,000円を下らない「クリスティーヌ・フェルベール」のコンフィチュールは、ジャムの概念を変えてしまうほどのおいしさ。
今回筆者は、フェルベールさんが自身の故郷に構えているお店「メゾン・フェルベール」を訪ねてみました。
「ジャムの妖精」クリスティーヌ・フェルベール
フランスにおける女性菓子職人「パティシエール」の先駆者的存在がクリスティーヌ・フェルベール(Christine Ferber)さん。
1998年にシャンぺラー&パティシエ連盟最高パティシエ賞を受賞した彼女が生み出すコンフィチュールは、フランスの名シェフ、アラン・デュカス氏や、パティシエのピエール・エルメ氏といった食のスペシャリストからも絶賛される実力派。
食材の旬と最もおいしい食べ方を熟知し、魔法のようにおいしいコンフィチュールを生み出すフェルベールさんは「ジャムの妖精」の異名をとっています。
「クリスティーヌ・フェルベール」のコンフィチュールの特徴は、世界に名だたる人気ブランドでありながら、すべて直径50センチの銅鍋で作られていること。それ以上の量を炊くと味が落ちるため、一度に仕込む量には上限を設けているそうです。
その年や季節に食べごろを迎える素材を使い、果物の状態を見極めながらひとつひとつの作業を手で行います。
これほどのブランド力があれば、もっと事業を拡大することも簡単なはずですが、フェルベールさんはあえてそうせず、手作りだからこそできる「最高のコンフィチュール」にこだわり続けているのです。
フェルベールさんのコンフィチュール作りには手間がかかりますが、そのぶん素材のもつ味や香り、色合いを最大限に引き出した逸品が仕上がるのですね。
女心をくすぐる、ピンク地に水玉の布を使ったラッピングも、すべて手作業だといいます。
世界的有名人のお店はアルザスの田舎に
世界中のグルメたちを魅了してやまないジャムの妖精、フェルベールさん。彼女のお店「メゾン・フェルベール(Maison Ferber)」があるのが、ドイツとの国境に近いフランス・アルザス地方の小さな村、ニーデルモルシュヴィル(Niedermorschwir)です。
アルザス地方らしく、カラフルな木組みの家々が並ぶ可愛らしい村ではありますが、観光地化はされておらず、「メゾン・フェルベール」以外にお店らしいお店もありません。
フェルベールさんはこの村で生まれ、24歳のときに父親が経営するパン屋の洋菓子・チョコレート部門を引き継ぎました。
フェルベールさんほどの有名人ならパリにおしゃれなメゾンを構えることも容易なはずですが、自らが生まれ育ったこの村を拠点にし続けているところに、フェルベールさんの郷土愛や家庭的なビジネスへのこだわりが感じられます。
思いのほか庶民的な「メゾン・フェルベール」の店内
「これがあのフェルベールさんのお店!」と胸を高鳴らせながら店内に足を踏み入れると、そこは意外にも庶民的な空間。
「世界的に有名なパティシエールのメゾン」というよりは、「町の食料品屋さん」といった雰囲気です。
店内には、コンフィチュールだけでなく、フルーツタルトやアルザス菓子として有名なクグロフ、チョコレートなどさまざまなお菓子が並びます。
パンやハム、野菜、果物、乳製品といった基本的な食料品も売られているのは少々驚き。ワイナリーを除けばここ以外にお店がないニーデルモルシュヴィルだけあって、「メゾン・フェルベール」は地元の人々が日常的に必要なものを買いに来る場所にもなっているようです。
お総菜コーナーの前には雑誌や新聞……なんとも庶民的な光景です。
陶器好きなら、ここでしか入らないアルザス陶器も見逃せません。「クリスティーヌ・フェルベール」のトレードマークともいえる水玉があしらわれた陶器たちは素朴なあたたかみを感じさせる可愛らしさです。
ずらりと並ぶ絶品コンフィチュール
「メゾン・フェルベール」にやってきたら、やはり一番のお目当てはコンフィチュール。全部で360種類ほどのジャムのレシピがあるといわれているだけに、棚には色とりどりのコンフィチュールがずらりと並びます。お値段は一瓶7~8ユーロ。
イチゴにリンゴ、ラズベリー、カシス、モモ、オレンジ、パイナップル、マンゴー、パッションフルーツ、ルバーブ……日本でもお馴染みのものから、日本ではなかなかお目にかかれないような種類のコンフィチュールもあって、目移りせずにはいられません。
数種類のフルーツをミックスしたものや、チョコレートやバニラ、スパイスなどを加えたものもあり、たくさん買い占めたくなってしまうこと請け合いです。
年によって、また季節によってもそのラインナップは異なるので、どんなコンフィチュールに出会えるのかはお店に行ってみてのお楽しみ。「クリスティーヌ・フェルベール」のコンフィチュールは、まさに一期一会の世界なのです。
至福の朝食タイムを叶えてくれるコンフィチュール
「クリスティーヌ・フェルベール」のコンフィチュールが加われば、いつもの朝食が至福の時間へと変わります。
今回筆者が選んだコンフィチュールは、イチゴ、ラズベリー(種入り)、オレンジ&マンゴー&パッションフルーツ、バナナ&パッションフルーツ&チョコレートの4種類。そのままパンに塗ってもおいしいですし、ベリー系はバターとも良く合います。
「クリスティーヌ・フェルベール」のコンフィチュールの特徴は、日本の一般的なジャムとは違って、半分液体のようにさらりとしていること。
「甘いものは好きだけれど、甘すぎるものは苦手」という筆者は、普通のジャムを舐めようとはまったく思いませんが、フェルベールさんのジャムはそのままペロリと舐めたくなるような上品な甘さと質感なのです。
どれをとっても、素材の味と香り、食感の良さを生かしたコンフィチュールは「見事!」の一言。それぞれまったく別の個性をもった一品に仕上がっていて、どれも甲乙つけがたいおいしさです。
筆者にとって、「ジャム」とは「気分が変わるくらいでどれを選んでも大差のないもの」だったのですが、「クリスティーヌ・フェルベール」のコンフィチュールに出会ってその概念が変わりました。同じパンでも、コンフィチュールの種類によってまったく違う食べ物へと変身するのです。
ヨーグルトやパンナコッタにかけて、クレープに塗って、料理のソースに混ぜて……とアイデア次第でそのおいしさはさらに広がりますよ。
「クリスティーヌ・フェルベール」のコンフィチュール選びのポイント
「クリスティーヌ・フェルベール」の話をすると、「どのコンフィチュールがおすすめですか?」と聞かれますが、どれも本当においしいです。ひとつひとつ、それぞれの素材を生かした個性的な味わいに仕上がっているので、極論を言ってしまえば「すべてがおすすめ」なのです。
自分のお気に入りに出会うには、結局自分がもともと好きなフルーツや素材を使ったものが一番。まずは、迷わず自分の好きな素材が使われているものを選んでください。
次に、どれかひとつはチョコレートやスパイスを使ったコンフィチュールを試してみることをおすすめします。
フェルベールさんは、ひと昔前ならコンフィチュールに使われることのなかったチョコレートやスパイスといった素材を取り入れた斬新なコンフィチュールを生み出したパイオニア。意外な組み合わせに思えるかもしれませんが、チョコレートやスパイスが見事にフルーツのおいしさを引き立てています。
さらに、日本ではあまりジャムに使われないフルーツを使ったものもおひとつどうぞ。ヨーロッパでは身近なルバーブや、マンゴー、パッションフルーツ、パイナップルなどのトロピカルフルーツフルーツを使ったものが人気です。
アルザス産の素材を使ったものが欲しいときは、「~d’Alsace」と書かれているものを選んでください。
チョコレートも美味
コンフィチュールの名手として知られるフェルベールさんですが、ショコラティエールとしても有名。日本のデパートで開催されるバレンタイン催事でも、彼女のチョコレートは高い人気を博しています。
こちらは、オレンジを使ったチョコレート。オレンジの果肉や皮をダークチョコレートで包んだチョコレートは上品でフルーティーな大人のおやつ。
果肉がもつフレッシュな甘酸っぱさと、皮のほどよい渋み、ダークチョコレートの洗練された甘みが一体となって、絶妙な味わいと食感を演出しています。
こうしたチョコレートの数々も、フルーツ使いの達人、フェルベールさんならではの逸品といえるでしょう。
「メゾン・フェルベール」には、ほかにもパイやクグロフ、フルーツタルトなど、スイーツ好きにはたまらない甘~い誘惑が満載。
そのときどきの旬の食材を使って作られたコンフィチュールやスイーツたちとの「一期一会」を楽しんでください。
18 rue des Trois-Epis, 68230 Niedermorschwir
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