ドイツに住む筆者は、日本の友人から「ドイツの食べ物ってソーセージとプレッツェル以外なにがあるの」とよく言われます。
日本では、ドイツといえばビールにソーセージとプレッツェルというイメージが根強いですが、実はドイツにはまだまだ知られざるご当地グルメや季節のグルメがあるのです。
ドイツで秋の味覚として人気が高いのが玉ねぎケーキと新ワイン。一度味わってみると、病みつきになること間違いなしですよ。
ドイツの秋の味覚「玉ねぎケーキ」ってなに?
ドイツを代表する秋の味覚が「ツヴィーベルクーヘン(Zwiebelkuchen)」。直訳すると「玉ねぎケーキ」という意味です。
名前だけ聞くと「玉ねぎのケーキ!? それおいしいの……?」と思ってしまうところですが、ケーキといっても甘いお菓子ではなく、塩味のきいたキッシュのような軽食です。
レシピは地域によって、またお店や家庭によっても違いがありますが、小麦粉や牛乳、バターや塩などから作った生地に、玉ねぎやベーコン、チーズ、サワークリームなどから作ったフィリングを流し入れて焼くのが定番。
たっぷりの玉ねぎがおいしさの決め手
ツヴィーベルクーヘンの味の決め手は、なんといってもたっぷりの玉ねぎ。26センチのタルト型で作るツヴィーベルクーヘンに500グラム以上の玉ねぎを使うので、その玉ねぎの量にびっくりしてしまうかもしれません。
でも、じっくりと炒めることで玉ねぎの優しい甘さが引き出されるからこそ、深い味わいが生まれるのです。
バターのまろやかさと玉ねぎの甘み、ベーコンの塩気が一体となった芳醇な味わいはクセになりそう。冷めてもおいしくいただけるので、持ち寄りパーティーやピクニックにも最適です。
材料は日本でも簡単に手に入るものばかりなので、なかなかドイツに行く機会がないという人は自分で作ってみてもいいかもしれません。インターネットで検索すれば、日本語でもたくさんのレシピが出てきます。
ドイツで食べるツヴィーベルクーヘンは、日本人には塩気が強すぎることが多いので、本場のものよりも塩分を控えめにして作るのがおすすめです。
ツヴィーベルクーヘンと相性抜群の新ワイン「フェダーヴァイサー」
ツヴィーベルクーヘンと一緒にいただきたいのが、季節限定の新ワイン「フェダーヴァイサー(Federweiser)」。
9~10月にかけて、ワイン用のブドウの収穫時期のみ味わえる秋の風物詩です。ブドウ果汁にたっぷりと含まれた酵母が白い羽のように見えることから、その名が付きました。
瓶の中で炭酸が作られ続けているため密閉することができず、栓がしっかりと閉まっていないことから、長距離輸送には不向き。そのため、ワインの産地やその周辺だけで楽しめる特別なワインなのです。
飲むタイミングによって味が変わる「生きているワイン」
フェダーヴァイサーの面白いところは、瓶の中で徐々に発酵が進んでいく「生きているワイン」であること。アルコール度数は4パーセントから始まり、最終的には11パーセント程度になります。
そのため、飲むタイミングによって風味が変わり、売り出されたばかりのフレッシュなフェダーヴァイサーは、みずみずしいスパークリングジュースのような味わい。これなら、ワインが苦手でもフルーツが好きなら絶対においしく飲めるはずです。
その後発酵が進むにつれて苦みや深みが増し、よりお酒らしい味わいに変わっていきます。ジュースでもない、かといって完成形のワインとも違う、ジュースとワインの中間のような風味が楽しめるのはフェダーヴァイサーならでは。
色んなタイミングで少しずつ飲んでみて、自分が一番好きな味を見つけるという、普通のワインにはない喜びがあります。
ツヴィーベルクーヘンとフェダーヴァイサーの最強コンビ
ツヴィーベルクーヘンとフェダーヴァイサーが「相性抜群」と言われるわけは、ツヴィーベルクーヘンの塩気のきいた濃厚な味わいを、フェダーヴァイサーのフレッシュな甘さが中和してくれるから。
それぞれがお互いを引き立て合うので、交互に口にするうちにどんどん食が進むのです。
ツヴィーベルクーヘンはベーカリーやデリショップなどで買えるほか、スーパーに冷凍食品として売っている場合もあります。フェダーヴァイサーはスーパーやワインショップ、マルクト(市場)などで。
カフェや郷土料理レストランでは、ツヴィーベルクーヘンとフェダーヴァイサーのセットメニューを用意しているところがあるので、もちろんお店でいただくことも可能。
さらに、秋にドイツで開催されるワイン祭りや中世祭りでは、高確率でツヴィーベルクーヘンとフェダーヴァイサーが登場します。いずれも季節限定なので、見つけたらぜひ秋限定の人気コンビを味わってみてください。
おいしいのに秋しか味わえない……そんな希少価値があるからこそ、みんなが心待ちにするアイドルのような存在がツヴィーベルクーヘンとフェダーヴァイサーなのです。