こんにちは、ライターの新田です。今回はズバリ、ロシア建築を紹介します。「ロシア建築」と聞いてどのような建物をイメージされるでしょうか。
ロシア建築の大きな特徴はとにかく重厚であること。まず、横に異様に長いのが特徴です。そこは世界一広いロシアだからこそ、できる芸当なのでしょう。そして、とにかく「これでもか!」というくらい豪華です。ハッとさせられるようなロシア・ブルーから目がクラクラするような金ピカの部屋も忘れてはなりません。
そして、「男らしい」建築物が多いことも特徴です。特に、スターリン棋に建てられた建築群はスターリン、そのものを表現しているような気がします。前段が長くなりました。それでは、ロシア建築を解説していきましょう。
1. エルミタージュ美術館
世界を代表する美術館のひとつがサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館です。横に広く、全体をカメラに収めるには対岸から写さなくてはなりません。
エルミタージュ美術館は「冬の宮殿」と呼ばれ、エカチェリーナ2世が18世紀に建てました。最盛期には4,000人以上もの召使がいたそうです。エルミタージュ美術館に興味がある方はアレクサンドル・ソクーロフ監督の映画「エルミタージュ幻想」をチェックされるといいでしょう。
2. ロシア美術館
エルミタージュ美術館ばかり注目されますが、同じサンクトペテルブルクにあるロシア美術館にも注目しましょう。こちらはレーピンなど、ロシア人画家の作品が数多く展示・収蔵されています。
ロシア美術館の建物は19世紀初頭にロシア・クラシズム様式で建てられました。ロシア・クラシズムとは19世紀初頭に確立されたロシアオリジナルの建築様式です。古代ギリシャ、ローマの要素を取り入れながら、簡素で落ち着いた雰囲気が特徴。ロシアだけでなく、ヨーロッパでも賞賛された建築様式です。
なお、ロシア美術館にあるレーピンの作品「ヴォルガの船曳」はとにかくすごいです。あまりの迫力に圧倒されます。
3. ペトロパブロフスク要塞
サンクトペテルブルクは18世紀に作られた人工都市です。サンクトペテルブルク最初期に建てられたのがペトロパブロフスク要塞。特に、天に突き刺さるような塔を持つペトロパブロフスク聖堂が有名です。
この聖堂の建築様式はバロックです。塔からは縦方向に躍動するサンクトペテルブルクを感じられます。聖堂内も豪華です。ぜひ、チェックしてみましょう。
4. スモーリヌイ修道院
まるで、おとぎ話の世界に出てきそうな建物ですね。スモーリヌイ修道院の建築様式はエリザヴェータ・バロック様式です。
「バロック様式は聞いたことはあるけど、エリザヴェータ・バロック様式は初耳だ」。そう思われる方が多いでしょう。バロック様式とは華麗で豪華な建築物で知られています。エリザヴェータ・バロック様式はロシアオリジナルの超豪華バロック様式だと思ってください。18世紀にサンクトペテルブルクを中心に広まりました。
ところで、スモーリヌイ修道院を上から見ると、十字架のような形をしています。ロシアにはこの類の教会や修道院がたくさんあります。
5. 血の救世主教会
人工都市、サンクトペテルブルクにあってロシアらしい建物が血の救世主教会です。
1881年3月13日、血の救世主教会の建設のきっかけとなる事件が起きました。何と、この場所でロシア皇帝、アレクサンドル2世が暗殺されたのです! 殺された場所に血の救世主教会が建設されたわけです。
外観はエストニア産の大理石を使うなど、豪華絢爛。遠くからでも、本当に目立ちます。他のロシア教会よりもスタイリッシュに見えるのがサンクトペテルブルクらしいですね。ちなみに、写真に写っている川は完全に凍っています。撮影だけで精一杯でした。
6. 聖ワシリイ大聖堂(ポクロフスキー大聖堂)
次は首都モスクワを案内しましょう。「ロシア」と聞けば、聖ワシリイ大聖堂を思い浮かべる方が多いでしょう。
16世紀、ロシアはモンゴル帝国の一部であったカザン・ハン国の首都、カザンを攻撃。苦戦の末、なんとかカザンの奪還に成功しました。その成功を祝って建てられたのが聖ワシリイ大聖堂です。
基本的にロシアの伝統的なスタイルを引き継いでいますが、壁の張り方は外観の装飾はローマやコンスタンチノープル(イスタンブール)の影響を受けています。
7. グム百貨店
赤の広場に隣接する、ロシアを代表する百貨店。それがグム百貨店です。ソ連時代はモノがないことで有名でしたが、現在はモノで溢れかえっています。グム百貨店の建物は百貨店とは思えない堂々としたものです。
グム百貨店は19世紀末にネオ・ロシアスタイルで建てられました。ネオ・ロシアスタイルとは昔のロシア諸公の屋敷(表現力のある構成、平面が自由)を活かした建築手法。合理的で現代的な彫刻と17世紀半ばのスタイルが見事に融合しています。
本当に「百貨店」というよりは「お屋敷」のような建物です。迷子にならないようにご注意を。
8. トレチャコフ美術館
サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に対し、モスクワを代表する美術館がトレチャコフ美術館です。トレチャコフ美術館を訪れたら絵画作品だけでなく、建物自体にも注目してみましょう。なかなか、日本では見られない建築スタイルではないでしょうか。
現在のトレチャコフ美術館の建物は19世紀、ネオ・ロシアスタイルの代表であったV・ヴァスネツォーフによるものです。エルミタージュとは異なり、また違った「ロシアらしさ」を醸し出しています。
9. ホテル「モスクワ」
この建物を見て「あれっ」と思われた方が多いのでは? そうです。右棟と左棟のデザイン(窓枠)が違うのです! なぜ、このようなデザインになったのでしょうか。
ホテル「モスクワ」が建てられたのは1930年代です。当初、ホテル「モスクワ」の建設を任せられたのは構成主義の建築家2人でした。しかし「ソ連の共産主義と構成主義は合わない!」と当局がダダをこね、主任建築士にネオ・クラシズムの建築家を就任させました。
結局、構成主義の建築家VSネオ・クラシズムの建築家の争いとなったのです。その結果、構成主義と古典主義が混ざった現在のような姿になりました。ソ連時代の文化政策の混乱を示す建築物ではないでしょうか。
10. ホテル「ウクライナ」
もしかすると、世界で一番「男らしい」姿をしたホテルではないでしょうか。ホテル「ウクライナ」はソ連の指導者、スターリンの時期に建てられた「スターリン・スタイル高層ビル」のひとつです。高さは約170m、29階建てです。
スターリンはニューヨークの摩天楼に対抗するために、次々とこの類のビルを建設しました。現在も現役のホテルとして活躍しています。ロシア以外にも、ラトビア、ポーランドにも「スターリン・スタイル高層ビル」があります。
11. ウラジオストク駅
次に日本に近い極東を見ていきましょう。列車に乗らなくても、ぜひ立ち寄ってほしいのがウラジオストク駅です。ウラジオストク駅はモスクワへと続くシベリア鉄道の起点駅として知られています。
現在の駅舎は20世紀初頭に建てられたもので、建築スタイルはネオ・ロシアスタイルです。アジアに現れたロシア式宮殿、という感じがします。1998年に修復工事が行われ、その際にロシア建築同盟から表彰されています。なお、ウラジオストク駅の時計はモスクワ時間です。ご注意ください。
12. ウラジオストク空港新ターミナル
これは思いっきり現代の建物です。ただ、個人的に現代ロシアを象徴する建築物ではないかな、と思い選んでみました。
ウラジオストク空港の新ターミナルはAPEC首脳会議に合わせる形で2012年に竣工しました。日本からの便は全て新ターミナルに到着します。
ガラス張りの建築物はソビエト時代にもありましたが、ウラジオストク空港新ターミナルはとにかくスタイリッシュ! ソビエト時代とは全然違います。夜になると、ライトアップされ、とても美しいですよ。
最後に
今回紹介したのは、ごくわずか。ロシアには魅力的な建物がたくさんあります。その際、ロシアの建築文化を少しでも知っていると、「見る」楽しみが倍増するはずです。
ぜひ、この記事を参考にして、ロシアの建築めぐりを楽しんでください。