マルセイユには45%以上のアルコール飲料なのに麦茶のように親しまれるお酒がある
フランス

マルセイユといえば……のPastisパスティス

南仏ではポピュラーだけど、パリや北フランスではあまり馴染みのない、この名前、耳にしたことありますか?

南仏で、年配ムッシューたちが午前中からカフェで頼むのは、エスプレッソではなくてパスティス!と言われるぐらい、国民的というか南仏住人的飲料です。薬草の匂いぷんぷんだし、なんだかカラダにイイものみたいに勘違いしそうになりますけど、実はアルコール度数45パーセント以上の、立派なお酒!

これを飲みながら南仏でペタンク(フランス発祥の球技)に興じるのが、フランスの正しい定年後生活の過ごし方と揶揄されています。

……冗談はさておき、今日は、そんなパスティスについてご紹介しますね。

パスティスって?

アニスベースのリキュールです。薬草酒と表現したらいいのか……基本的には、アニスをはじめリコリス、フェンネルなどの(どちらもひとくせある、特徴ある香りですよね)ハーブの利いたお酒なんですが、シナモンを利かせたものや、さまざまな特徴あるバリエーションを造っている製造者もいます。

もともとは(南仏名物の)アブサンが製造禁止になった時代に、代用品として作られ始めたもの。南仏プロヴァンス一帯の名物になって、アブサンの生産も再開されている今でも、パスティスの方が定着普及しています。

 

ウイスキーみたいな琥珀色の液体なのに、水を注ぐと白濁する不思議な飲み物(アブサンは緑色なんですが、やはり水を加えると白濁します)。南仏やマルセイユ紹介のテレビ番組などで、必ず出てくる名物だがら、案外、ご存知の方も少なくないかも。

マルセイユ名物としてよく知られているのは、最初に世に出した、日本にも輸出している生産量世界1のシェアを誇るRICARDリカール社(マルセイユのRICARD一族が1932年に興しました)のものだから。社名もそこから。

でも、そのパスティスも、第2次世界大戦中には製造禁止になってしまい、生産再開できるようになったのは10年以上経ってからのこと。

それなのに、こんなに定着しているのは、本当に驚かされます。だって、夏は、まるで日本の麦茶みたいに親しまれているんですよ。

 

※ 写真左が原液。右が、水で割った状態。

 

基本は、水割り。でも、飲み方、愉しみ方はTPOや人それぞれ。

さて、そんなパスティス。爽やかなイメージなんですが、意外と強いんです。なんとアルコール度数45パーセント以上(でないと認められない)なので、水で割って氷を足して……が一般的な飲み方。

 

こんな風に、この頃は、トレードカラーは太陽の黄色。(フランスでは、太陽は赤ではなくて黄色。子どもたちにお絵かきをさせても、黄色やオレンジなんです。面白いですよね)

 

食前酒としても愛されているパスティスなので(フランスの食前酒はもともと甘いワインなどから始まったので、今も甘いものが人気です)、シロップと合わせたカクテルも色々

 

カフェで、エスプレッソではなくパスティスを頼んでいる光景は、マルセイユや南仏ではよく見かける光景で、(私の知っている限りでは)パリジャン達が南仏ヴァカンスに来ると、「やっぱりこれだよね」のひとつが、陽の高いうちからパスティスを飲むこと。

といっても、フランスでは夏には夜9時や10時まで日が暮れないので、長ーいアペリティフを愉しむことになるから、必ずしも昼間からというばかりでもないんですけど、やっぱりお陽さまが出ているうちにアルコールを口にするのは、夏ならではの醍醐味です。

 

マルセイユの下町の幼児教室に通っていた頃に、帰りに広場のカフェに寄った午後4時過ぎ、子ども達は目の届くところで走り回るテラスの席に座った途端、ママ友2人が「パスティス」と声をそろえたように註文したときには、聞き間違いかと思いました。

 

夕方のカフェでのママ友同士、驚きの注文

驚きながら、カフェ・アロンジェ(薄め倍量のエスプレッソ)を頼む私に、目を見開いたのはその2人も同じで、「こんな時間にカフェインのもの飲んで眠れなくならない?」

 

フランスでは、午後4時以降にカフェインを摂ったり、夜、寝る時間近くにビタミンを摂ると眠れなくなると言う人が意外なほど多くて(「じゃあ、夜中の食後のエスプレッソの習慣は何?」と思うんですけど、的確な回答にはまだ出会えていません)、ソフトドリンクを注文する人には慣れていたものの、夕方で子連れ母たちでアルコールをというのは初めて。そういうと、「パスティスは、アルコールじゃないわよ」

 

「え?じゃあ、何?」

「パスティスは……パスティスよ」とコロコロと笑う2人は、マルセイユ生まれのマルセイユ育ち。

 

そういうものかと思っていたら、そんなこともなくて、パスティスどころか、ワインもアルコールも一切口にしないと言う女性達もいっぱい。

宗教とは関係なく、食事や飲料に気をつけている人は、性別に関係なく目立つようになってきています。

一般的には、ワインやカクテルは飲むという習慣の人がやはり多いようで、パスティスも、シロップも加えてのカクテルがいろいろあって、食前酒として愉しまれています。

 

そして、もし、マルセイユに来ることがあれば、ぜひ、知っておいて、寄ってみていただきたい、小さな老舗の量り売りがこちら。

メゾン・ド・パスティス

マルセイユには有名無名メーカーもいろいろあるんですが、一般流通にはしないで、自家製のものを何種類か扱っているこんな老舗ブティックもあります。

 

Vieux Port ヴューポー港の(カヌビエール大通りに背を向けて向かって右側、舗道沿いの建物の下に続くアーケードを5分ほど行くとあるのがLa Maison du Pastis メゾン・ド・パスティス

小さい店構えながら、店内には、ぎっしり所狭しと各メーカーのパスティス(とアブサン)が並んでいます。その数75種。

そして、何より物売り物は、自家醸造の4種類のパスティス。

それぞれに、加えられている風味の種類と強さが少々違います。

こちらが、そのマダム。

日本のTV番組でも、お店もこのマダムも何度も紹介されているから、記憶にある方もいるかも。

こんな風に、長ーいカウンターが横切っていることでも想像いただける通り、気軽に無料で試飲を勧めてくれます。

好みを伝えて、あらかじめ選んでもらってもいいし、モチロン、4種類全部試してもいいし、それぞれの特徴を聞いて、自分で、ひとつかふたつに絞っても。

再使用できる、レモネード瓶タイプの蓋つきボトルが何種類か選べるので、数種類買ってもそれれぞれ異なるのが楽しいし、自分の好きな風味とボトルを選んで詰めてもらうのは、カスタマイズ気分でちょっと嬉しいですよね。

たとえば、こんな感じ。

よく知られたお店なので喜ばれるし、パリや遠くに済む人へのお土産には、いつも、ここに買いに来ます。

スーツケースに入れるために、こんな風に梱包もしてお願いできるんですが、エアーパッキンがいつもあるとは限らなくて、ダンボールを切って巻いて包んでくれたことも。

そんな心遣いも嬉しい、温かい対応のお店です。

 

石鹸やボンボンも。

最初に見たときは驚いたんですが、なんと、石鹸の香りとしても定番のひとつ。

マルセイユ石鹸といえば、世界で知られる存在ですが、メーカーはいくつもあります。香りの種類はどこも多いですが、ほぼ同じラインナップ。パスティスの香りのものも、各社定番なので、ここ以外でも買えますが、どうせなら、このロゴ入りの箱が雰囲気ありますよね。

右に並んでいるのは、パスティスの飴。買ったことはないので、味は知らないままなんですけど、話のタネにと写真に収めてきました。

La Maison du Pastis
108 Quai du Port, 13002 Marseille
営業時間は、平日10時半ー18時半、土曜10時-19時、日曜10時ー17時
公式HPはこちら

もうすぐヴィンテージなパスティスのための水差し

写真は夫が長いこと持っている水差し。親戚から譲り受けたというRICARD社のパスティス用のものです。

たぶんもうすぐ50年は経つものなので、そうしたらヴィンテージ入りなので愉しみです。
100年経ったらアンティーク。
もうすぐヴィンテージなパスティスのための水差し

この記事を書いた人

ボッティ喜美子

ボッティ喜美子仏日通訳翻訳・ジャーナリスト

フランス在住。東京で長らく広告・PR業に携わり、1998年に渡仏。パリとニースで暮らした後、2000年からパリジャンの夫の転勤で南米ブエノスアイレスへ3年、出産も現地で。パリに戻り、地中海の街マルセイユへ転勤して13年。南仏拠点で時々パリの実家へ、家庭優先で仕事しています。Framatech社主催の仏ビジネスマン対象のセミナー『日本人と仕事をするには?』講師は10年目(年2回)。英語・スペイン語も少々。

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