韓国で評判の冷麺店を5ヶ所まわって食べ比べしてきました。
韓国

「韓国料理」と言ったら、何を思い浮かべますか?
焼き肉? キムチ?
今回は韓国料理初心者でも知っている「冷麺」がテーマです。名店が集まる明洞の評判冷麺店を5ヶ所食べ比べてみました。

冷麺は意外に奥が深いんですよ~。

冷麺の本場は北朝鮮

代表的な「韓国料理」である冷麺。けれどもその本場は朝鮮半島北部、今の北朝鮮のエリアなんです。北朝鮮にある二つの都市が本場だといわれています。
一つは「ピョンヤン」。あの、北朝鮮の首都のピョンヤンです。

そしてもう一つが海沿いの町「ハムン」。

最近では南北会談の時にピョンヤンから冷麺を運んできたことが話題になりました。

出だしから韓国国内に冷麺の本場はないみたいなことを書いてしまいましたが、ソウルでもおいしい冷麺は食べられます。

明洞徒歩圏は冷麺のレベルが高かった

観光客にとって定番の観光地「明洞」。

 

冷麺の名店は明洞の近くに集まっています。今回は評判の高い、忠武路(チュンムロ/충무로)のピルトンミョノク、乙支路(ウルチロ/을지로)のウルチミョノク、奨忠洞(チャンチュンドン/장충동)のピョンヤン冷麺、孔徳(コンドク/공덕)のウルミルテ、そして議政府(ウィジョンブ/의정부)市にあるピョンヤンミョノクを取材してきました。

そば粉からつくるビビン冷麺~ピョンヤンミョノク・チャンチュン派

お店の世襲をしない韓国では珍しく3代続くお店。冷麺グルメのお話で必ず出てくる「ピョンヤン冷麺・チャンチュン派」の総本山です。

ここでは圧倒的にビビン冷麺が人気なので、ビビン冷麺にチャレンジ。

かなり辛い感じの面がまえ。辛いよ~辛いよ~と主張してくるようです。

ここに来たら一緒に食べてもらいたいものがあります。

それはマンドュウ。餃子に近い韓国料理です。
ほとんどのお客さんがビビン冷麺にマンドュウの組み合わせで食べています。

 

冷麺は、そば粉から作った麺のせいか、日本でなじみのコシのある麺ではなく、口の中で簡単に噛み切れました。

辛そうに見えたビビンのソースは程よく甘みも効いていて、さすが老舗。辛くないマンドュと一緒に食べると口の中の辛さが緩和されて、相乗効果で食が進みます。

 

ちなみに水冷麺のほうは、とてもさっぱりしていて玄人向きなのかもしれません。両方食べてみましたが、こちらのお店はビビン冷麺が美味しかったです。

大通り沿いで建物も目立つので、韓国街歩き初心者でも比較的簡単にたどり着けます。

ピョンヤンミョノク 평양면옥 (チャンチュン派)
ソウル市中区 獎忠堂路207 (서울시 중구 장충당로207)
営業時間:11:00-21:30
定休日:なし

入り口はどこ? ウルチミョノク

透き通ったスープ、やや透明感のある麺。最後に振りかけられたトウガラシの粉の赤さが鮮やかな冷麺。

それがウルチミョノク(乙支麺屋)の水冷麺。今回食べ比べた冷麺の中でもさっぱり冷麺部優勝です。

 

週末や平日関係なく地元の方々でにぎわうこのお店。お客さんの年齢層が広くてびっくりしました。

普段あまり外食しなそうな方でもここは来る価値ありと思われているんだなと感じました。店内もインテリアなどは凝っていませんが、清潔だし居心地は悪くありません。

ですが!!

問題は入り口を見つけられるか、なんです。

大通りに面し、古いビルをくりぬいたようにして作られている入り口。この穴、いえ、門をくぐって建物をつっきったその奥に、お店はあるのです。

 

ランチタイムともなると、この長いトンネルのような通路は行列で埋まってしまいます。

あっさり、さっぱり。上品な味の冷麺を食べたかったら、明洞から20分ほど歩いてみませんか。

ウルチミョノク 을지면옥
ソウル市中区笠井洞161(서울시 중구 입정동 161)
営業時間:11:00-21:00
定休日:日曜日

しっかり味が好みの方に「ピルドンミョノク」

明洞(ミョンドン)駅のお隣にある忠武路(チュンムロ)駅。そこから7分程度のところ、南山のふもとの閑静な町にあるのは1985年創業のピルトンミョノク。

 

この地域の住所であるピルドン(筆洞)の麺屋という意味ですね。

街並みも素敵、お店も素敵。
中心地とは思えないほど明るく静か。安心して歩けそうなこの町はその昔、朝鮮総督の官邸があったところのだそうです。つまり植民地時代の高級住宅街。

 

今は東国大学の学生街となっていて、ほのかに下町感が漂う閑静な住宅街という感じがしました。

ビビン派と水冷麺派に意見が分かれていたようなので、両方チャレンジしました。

ビビン冷麺から。ピョンヤンミョノクに比べて……白い。コチュジャン(トウガラシ味噌)のペースト状のソースではありません。どちらかというと、薬味を乗せた感じ。

味もそのまま。トウガラシ味噌の辛さではなく、コチュカル(トウガラシの粉)やネギの味が絡んでくる感じでした。

辛さはやや辛いほう。しかしどこまでも上品。

次は水冷麺。

トッピングの赤い粉が極端に少ないです。もちろん全く辛くありません。

 

「味が薄くない?」一口目はきっとそう思うでしょう。しかし、食べれば食べるほど出汁のきいたスープのうまみが現れてくるのです。

しっかり出汁が効いているので決して薄くないのですが、どこまでも上品。ウルチミョノクにも通じるものがある……。

ピルドンミョノク 필동면옥
ソウル市中区筆洞3街1-5(서울시 중구 필동3가 1-5)
営業時間:11:00-21:00
定休日:日曜日

本家の本家~ウィジョンブ派の本山へ

ピョンヤン式の冷麺のおいしい店というと必ず出てくる2つのお店。「ピョンヤン冷麺・チャンチュン派」と「ピョンヤン冷麺・ウィジョンブ派」。

ウィジョンブといえば、ソウルの北側にあるお隣の市。ソウル市の外から、その名をとどろかせるお店に興味があり、てくてくと北上しました。

 

ソウル市内を走る地下鉄1号線一本で行けます……が、駅から徒歩10分ちょっと。決して行きやすいところではありません。

平日の食事時でもない午後4時ころですらお客さんがいます。

 

席に着きオーダーをしたところ、「もし、味が薄かったら言ってください。調整はいくらでも可能ですからね。」
とオーダーを取りに来たお姉さんが丁寧に何度も説明してくれます。何かあるのかな?

あら~これはまた、透きとおった冷麺だこと……。

決して味が薄いわけではないんです。ただ本当に繊細な味。
韓国料理といえば辛くてインパクトの強い味ってイメージがありませんか? でもこれは、味そのものが繊細なんです。麺の味も、麺そのものの作りも、スープも、トッピングされている数々のものも。

 

調べてみたところ、韓国の人の中にもこの繊細な味に舌がついていけなくて「味がないよ。期待して損した。」なんて評価する人がいるよう。それで、オーダーの時にお姉さんは気を遣ってたんですね。

食べているだけで幸せになる味です。

気になるビビン冷麺はこちら。

 

……あっ! ピルドンミョノクに似てる。

それもそのはず。実はこのお店の長女さんがやっているのがピルトンミョノクなのだそう。ちなみに次女さんのお店はウルチミョノク。

す、すごい。ソウルを代表する冷麺屋さんの一大派閥の総本山ではないですか。このお店、1970年創業で、本店は長男さんが継ぎ、三女さんは江南にお店を持っているのだそうです。す、すごい!

 

ピョンヤン冷麺・チャンチュンドン派とウィジョンブ派。あっさり好きにはウィジョンブ派かなという気がします。

ピョンヤンミョノク 평양면옥 (ウィジョンブ派)
京畿道議政府市平和路439番ギル7(경기도 의정부시 평화로 439번길 7)
営業時間:11:00-20:30
定休日:火曜日

日替わり味変わり?~ウルミルテ

最後にもう一つユニークなお店を紹介しましょう。日本人ビジネスマンにもおなじみのマポ・コンドクエリアです。

 

駅から10分ほど歩いたうえに、大通りに面してもいません。

それなのに長い長い行列ができるお店です。

行列解消のために増築したり、周辺の建物を買い取ってつなげたりしたため、もはや店内は迷路のようになっているお店。それが「ウルミルテ」です。

 

トイレに立ったら戻ってこられるかな? 遅刻してくる友達は部屋を探し出せるかな? 迷路のような店舗はウルミルテ七不思議の1つめ。

ついてくるキムチが赤いです。キムチが赤いのは普通の韓国料理世界では当然なのですが、ピョンヤン冷麺界隈ではむしろ珍しく感じます。

赤いキムチが合うおいしい冷麺。七不思議の2つ目です。

 

さて、このウルミルテの七不思議の3つ目は、日によって味の強さが全然違う。普通はレシピが完成しているし、継ぎ足していくはずなので、そんなに違いはないはずなのですが。

七不思議の4つ目は、味が濃くても薄くてもおいしいんです。

ウルミルテに来たら味わってもらいたいのが、食前のユクス(蕎麦湯のようなゆで汁)。ウルミルテ七不思議の5番目「食膳のユクスと食後のユクスの味の変わりよう」。気になる方はチャレンジしてみてください。

 

残るウルミルテ七不思議の2つは、お店に直接行って観察してみてくださいね。

ウルミルテ 을밀대
ソウル市麻浦区塩里洞147-6(서울시 마포구 염리동147-6)
営業時間:11:00-22:00
定休日:旧正月・秋夕

夏といえば、南北会談といえば、と何かと話題になる冷麺。

評判のお店を食べ比べしてみました。あなたはしっかり味派? あっさり味派?

この記事を書いた人

エナ

エナライター / エナツアー主催

横浜出身のソウルっ子。2000年から2002年、ワーホリ滞在。その後横浜での10年間を経て2011年、再度渡韓。本業は日本語教師。ソウルの町歩きが大好きなネイリスト。ソウルの博物館、市場が主な生息地。普通の町を普通じゃなく感じさせるエナツアーなるものを企画していました。最近は日本家屋の残る町にはまり気味。

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