「東洋の真珠」とたたえられるマレーシアのペナン島。その中心都市であるジョージタウンは、西洋と東洋が混在する独特の町並みが評価され、2008年には歴史地区全体が世界遺産に登録されました。
その後、古い町並みを引き立たせる楽しいストリートアートが続々とお目見え。「アートの町」に進化を遂げたジョージタウンは、いまや世界中のアート好きが集まるストリートアートの聖地になっています。
ジョージタウンでピカチュウ発見
「ストリートアートの町」として人気再燃中のジョージタウン。
ジョージタウンのなかでも特に有名なアートや可愛らしいショップが集中するアルメニアン通りを歩いていたら、見覚えのある「あの子」が。
そう、日本人なら、いえ日本人でなくとも何度も目にしたことがあるであろう世界のアイドル「ピカチュウ」です。後ろ姿だけでもひと目でそうとわかりますね。ぽってりとしたほっぺやお尻のラインがとってもキュートです。
そんな賑やかな通りで、身を隠すかのように奥まったところにこっそりと描かれています。ピカチュウがいる建物は、屋根の上に掲げられたカラフルな傘が目印。
世界的な人気者をあえて目立たないところに描くところに、遊び心を感じませんか。
ストリートアートの町に生まれ変わったジョージタウン
古くからの観光地であったジョージタウンですが、近年、ビーチリゾートとしての人気は急速に開発が進みつつあるランカウイ島に押され気味でした。
そんなジョージタウンに大きな変化が訪れたきっかけは、2012年にリトアニア出身の若手アーティスト、アーネスト・ザカレビッチがウォールアートを描いたこと。彼は地元の人々をモデルに、ペナン島の日常を表現した温かみのある作品群を創り上げました。
すると、彼の作品に刺激を受けたアーティストたちがさらに多くの作品を制作し、ジョージタウンはすっかり歴史的な町並みとアートが一体化した、ストリートアートの町に生まれ変わったのです。
現在、ジョージタウンにはペナン州観光局が配布しているパンフレットに掲載されている公認のウォールアートが18点、さらにペナンの歴史や人々をいきいきと表現した針金アートが52点あります。
しかし、実はパンフレットには掲載されていない非公認アートのほうが圧倒的に多く、その数は現在も増え続けているといいます。まるで物陰に隠れるようにひっそりとたたずんでいたピカチュウも非公認アートのひとつ。
「犬も歩けば棒にあたる」ではありませんが、思わぬ場所で思わぬアートに遭遇する。アートで溢れるジョージタウンにはそんな楽しみがあるのです。
廃材を利用した歴史的な町並みに溶け込むアート
「ストリートアート」と聞くと、やけにヒップでカラフルなアートを想像するかもしれません。
確かにカラフルな作品も存在するのですが、ジョージタウンで目立つのは、その歴史的な町並みにふさわしい情緒あふれる作品たち。世界遺産に登録されたジョージタウンの歴史や文化に対するリスペクトが伝わってきます。
なかでも有名なのが、アーネスト・ザカレビッチが手掛けた「Kids on Bicycle」。自転車に乗る幼い姉弟の興奮が伝わってきて、見るだけで元気になれる傑作です。
この作品には、本物の自転車が使われているのみならず、剥がれた壁や黒ずんだ建物の外壁をあえてそのままにし、歴史都市にぴったりのノスタルジーを演出しています。
こちらの作品「Brother and Sister on a Swing」には、古いブランコが使われています。外壁が崩れて露出したレンガがなんともいえない深い味わいを生んでいますね。
アート効果でおしゃれカフェも次々に誕生
ストリートアートの町として活気を取り戻したジョージタウンには、近年歴史的建造物を改装したおしゃれなカフェが次々に誕生しています。
たとえば、カンベル通りに位置する「Moustache Houze」。「Moustache(ヒゲ)」の名の通り、ちょびヒゲマークがキュートなこのカフェは、壁画で彩られたレトロポップな店内と、フォトジェニックなドリンクが魅力。
ストリートアートさんぽにカフェめぐりの楽しみが加わり、アートの町、ジョージタウンの楽しみ方がますます広がっています。