ボロボロでサビだらけの看板を見ると、営業しているとは思えない珍スポットのようなお店があります。営業している雰囲気がまったく無く、地元でも怪しげな外観のためか、敬遠している人も少なくないようです。
以前から看板を見かけていたのですが「廃業はしていない」との噂を聞き、勇気を振り絞ってお店に飛び込んだ時のことを今でも鮮明に覚えているお店です。ボロボロでサビだらけの看板に騙されてはいけない、「バーベキューあらはた」を紹介します。
決して外観や名前に騙されてはいけない「バーベキューあらはた」とは?
イルミネーションで賑わう「西武園ゆうえんち」が近いこともあり、散策するたびに、独特の雰囲気の看板が気になっていました。色あせた文字もさることながら、サビでボロボロのうえに、所々電球も無くなったままになっている看板を目の前にすると……、「本当にやっているのかな?」と思うほどです。
年に数件のクチコミなども目にしますが、お店の全貌が定かではなく、まだまだ謎の多いお店と言えます。
駐車場入り口に建っているこの看板は否が応でも目に留まりますが、初めて店を訪れる人にとって、どこにお店の建物があるのかわからないかもしれません。入口の案内板も無いですが、ショッキングイエローの建物を目指しましょう。
建物の窓は目隠しされていることもあり、外から店内の様子を伺い知ることができません。
壁がショッキングイエローの建物と真っ白なテーブルとイスを見る限り、沖縄でよく見かけるような雰囲気さえ感じます。看板の名前に騙されて「バーベキューができる」店かと、思ってしまうでしょう。
ジャンルづけに困る「バーベキューあらはた」
店内は古民家風の造りで、純和風の座敷になっています。日本文化を感じられる座敷や襖が、最近増えた外国人観光客の方々に好評のようです。
座敷のすべてが4人がけのテーブルで、13席ほどあります。ちょっと遅めのランチタイムに訪れてみましたが、平日は余程のことがない限り入れないということはないように思えます。
土曜日・日曜日・祝日には満席になってしまうことがあり、順番待ちすることもあるようです。
▲ランチメニュー
「バーベキューあらはた」のランチメニューは、焼肉セットとラーメンセットです。
グランドメニューを見ると、焼き肉やラーメンなどを中心に和食にも力を入れているため130種類以上あり、ドリンクやデザートは80種類を軽く超えています。
看板メニューがわからずに入ってしまうと、目移りしてどれを注文すればいいか困ってしまうほど、このお店はどのジャンルに振り分けていいのやらわからないお店かもしれません。
ランチのオススメは「焼肉とラーメン」
見ての通り、テーブルは焼肉用です。他にも、鍋物が楽しめるようなテーブルが配置されています。
「バーベキュー」と名乗っていることから想像できるように、焼肉にチカラを入れているのは明らかです。
▲「ミックスセット100g」1,080円(税別)
目移りして迷っているなら、「ミックスセット100g」をオススメします。「ミックスセット」は、牛ロースと牛カルビにライス付きです。
さらに、ちょっとした伝説の基にもなっているラーメンですが、プラス210円でミニラーメンをオーダーできるのでお得感があります。「バーベキューあらはた」を訪れた人のほとんどがオーダーするというラーメンは外せません。
その特徴は、「うどんの麺」と見間違えるほどの太さがある、麺にあるのかもしれません。
「牛ロースと牛カルビ」を食べ始めてから、後悔することも多い人が少なくないと思います。食べている最中に、「もう少し焼肉を食べたい」と思ってしまうんです。追加で「牛タン」と「牛ハラミ」をオーダー! 提供されるお肉は、機械切りではなく、1枚1枚、包丁で手切りされています。
焼肉に箸が伸びれば、ライスが欲しくなるものです。モチモチしたライスのファンがいるほど。セットメニューなら、おかわり1杯まで無料なんですよ。
隠れた名物の「五目釜めし」
▲五目釜めし960円(税別)
さっきライスを食べたばかりなのに……、まだ食べるの?1人前が少ないの?と思われるかもしれませんが……、
隠れた名物の五目釜めしは、熱々でモチモチご飯とお焦げが一緒に味わえるので外せません。シンプルですが、焼肉やラーメンがメインのお店で味わえる本格的な五目釜めしは、大きなエビやホタテが入っていて格別です。
「バーベキューあらはた」にまつわる都市伝説
▲「にっぽん縦断こころ旅」(NHK BS番組)来店記念の暖簾
俳優の火野正平さんが荒幡富士へ向かう前に来店したこともある「バーベキューあらはた」には、ちょっとした都市伝説があります。
サビだらけでボロボロの看板の外観や名前に騙されてはいけない!と、最初に話した通り、「廃業している」わけでも、「バーベキューができる」わけでもありません。
▲火野正平さんがラーメンを食べたテラス
都市伝説が生まれるほどのお店ということもあり、「マスコミ嫌いなのか?」などの不安もありましたが、インタビューをさせて頂くことになりました。店主は普段、厨房に入っているため、本当のところ、誰も話を聞く機会のないまま、ウワサだけが独り歩きしてしまっていたものと思われます。
「ラーメン二郎」の山田拓美氏との師弟関係がある?
「バーベキューあらはた」にまつわる都市伝説の、代表的な噂話のひとつをひも解いてみましょう。残念ながら、恥ずかしがり屋の店主の姿は撮影することが叶いませんでしたので、お名前も伏せて、店主として話を綴らせていただきます。
「「ラーメン二郎」の山田拓美氏との師弟関係がある?」との都市伝説があります。
「最初にラーメン作りを手ほどきした」とか「一番弟子ではないのか」とか、そんなウワサがありますが、本当のところどうなんでしょうか?なんて、いきなりの質問にも関わらず、苦笑いしながら快く気さくに答えて頂きました。
店主がサラリーマン時代に勤めていた会社の近くに新しくできたラーメン店(世田谷区の都立大学駅前)こそ、「ラーメン二郎」の創業者・山田拓美氏との出会いだったそうです。以来、親しくなり友達付き合いするようになりました。
その後店主は、当時の「バーベキューあらはた」の持ち主と出会います。当時は休業状態にあった建物を利用して「商売をしてみないか?」という話を持ち掛けらたそうです。一晩考えて「挑戦してみよう!」と決心をしましたが、店主に料理の心得がありませんでした。
34歳の時、住んでいた世田谷の池尻から、奥様と3人のお子さんを連れて、現在の所沢市荒幡へ引っ越してきました。お金も無い、家も無い……、守るべきものは家族だけという環境。
そんな時「バーベキューあらはた」を開業するにあたって、なんと駆けつけてくれたのは、山田氏でした。そこで「料理の基礎」を教えてもらったようです。
山田氏は「肉料理を出したいのか? 魚料理を出したいのか?」と、店主に尋ねたそうです。「魚は足が早いから……」という理由と、旧「バーベキューあらはた」で使っていたバーベキュー用の鉄板や鍋などを持ち主から譲り受けていたこともあり、店主は肉料理を選びました。開業してから38年経ちましたが、その時のことを今でも鮮明に覚えているそうです。
▲こだわりの「牛タン」
「質と味わい」にこだわり続けた結果、厚みのある牛タンなどは機械切りせず、自らの手で「手切り」にして提供するほどのこだわりようがうかがえます。
開業当初は、焼き肉をメインにしていましたが、ランチに弱いという点がありました。店主は3年目のある日、焼肉と共にランチで提供できるラーメンの作り方を学ぶために、山田氏を訪ねたようです。もともと和食の料理人だった山田氏から、ラーメン作りの始めとして、料理の基礎を教えて頂いたようです。
山田氏から学んだ後、自分好みの「和風ラーメン」を創作してお客様に試食してもらうと、味が薄すぎて不評だったそうです。その後、試行錯誤を続けて現在に至っているそうです。
▲牛ロース
最後に「大きな声では言えませんが……」と前置きしたうえで、口を開いてくださった言葉が印象的でした。
「正直に言えば、ラーメン二郎のラーメンは脂っこくて苦手だった」と、興味深い言葉まで飛び出しました。ゆえに、自分が食べたいメニューを試行錯誤しながら、お店を続けているそうです。
▲牛ハラミと牛カルビ
「ラーメン二郎」の隠れ弟子ではないか?なんてウワサから、ラーメンマニアが訪れることもあり、「ラーメン二郎」とは似ても似つかない……なんて、言葉を耳にすることもさえあるそうです。
ウワサを鵜呑みにしたラーメンマニアに誤解されていることが残念ですが、「ラーメン二郎」のラーメンを目標に作り始めたわけでは無く、そもそも目指すモノ・コンセプトが違うことを理解したいものです。
「バーベキューあらはた」のラーメンで言えば、「あさりラーメン」「とんかつラーメン」「チーズラーメン」などがあり、試行錯誤の結果生まれたメニューの豊富さからも、納得できる話です。今では、ラーメン専門店と言われてもおかしくないほど、ランチタイムに訪れるほとんどの人が、ラーメンをオーダーしています。
「バーベキューあらはた」は奥様と共に、日本料理を学んだ長男も手伝っている家庭的な雰囲気に満ちています。「懐かしいと思ってもらえるような」「家族や子供に食べさせたい」と思ってもらえるようなお店として永く続けていきたいと、店主は熱く語ってくださいました。
シンプルな料理と共に紹介してきましたが、万人向けするように妥協した料理を提供するのではなく、マニアックと言われようが、「バーベキューあらはた」の味に共感できる・ハマる人だけが来店し続けてもらえるように、全力を注いでいる姿がうかがえます。
実は、知る人ぞ知るツウ好み、リピーターの多いことでも知られるお店です。マニアックなモノが大好きなワタシもハマっている1人なので、これからも「バーベキューあらはた」から目が離せません。「シンプル・ザ・ベスト」の感覚は、想像力を膨らませるもので、「ひとり旅を楽しむ」旅人と、共感するものなのかもしれませんね。