「千と千尋の神隠し」モデル地は箱根・強羅?地名の由来を元に訪ね歩いてみた
日本

「千と千尋の神隠し」モデル地探し。千尋のお父さんお母さんがブタにされる前、石像が山の斜面にゴロゴロ転がっている草原を歩いて進むシーンを覚えているでしょうか? モデル地探しをしていて、なかなか現在の日本の風景の中で見つからない背景でもあります。

以前から「強羅(ごうら)」という地名が気になっていましたが、地名の由来を掘り下げていくうちに、イメージのピッタリな話にぶつかり、現地へ出かけることにします。

強そうな地名の「強羅」とは?


箱根にある「強羅(ごうら)」という珍しい名称の由来って知ってますか? 初めて見た時に、「何て読むんだろう……?」と思った人も多いのではないでしょうか?

不思議で珍しい地名に興味を持って調べてみると、主に3つの地名の由来に辿り着きます。

▲早雲山の山肌から煙を上げる早雲地獄

1つは「ゴロゴロ……ゴーラ説」です。強羅は早雲山の山裾にひろがる岩石の堆積で出来た傾斜地で、軽自動車ほどの大きな岩がゴロゴロと散在していたことから「ゴーラ」という地名なったという語呂合わせのような説があります。

2つめは「亀の甲羅に酷似説」です。箱根の険しい山のなかにあって強羅は非常に固い地盤だったことから、亀の甲羅に酷似していたからという説があります。

▲参考:2018年干支の梵字

3つめは、寺社仏閣で接する機会のある梵語(サンスクリット語)説です。ゴーラは「石の地獄」という意味からとったという説があります。(※梵語=梵字の意味ではありません)

これらの他にも、古くから強羅を訪れる外国人も多かったこともあり「go around」なんてダジャレを言いながら、甲羅を巡っていたという説まであるようです。

諸説いろいろありますが、どれが正解なのかはわかりません。

強羅という土地を自分の足で確かめてみる!


強羅の地名の由来についてはいろいろな説があることがわかり、いずれにしても「岩や石」がキーワードになっているようです。由来を調べる以外は特に準備していたわけではなく、ちょっとしたトレッキング気分の思いつきで坂道を辿ってみることにしました。

強羅の坂道について、何も情報収集せずに出かけるのも無謀すぎると思い、宿にした旅館「強羅天翠」でフロント横の足湯カフェ&バーにいるスタッフさんに聞いてみると……、

「えっ!? 強羅駅から早雲山駅までの坂の歩いて上るんですか?」と、スタッフさんの声にこちらがキョトンとするほどの反応でした。

ほとんどの旅行者は、強羅の坂道をわざわざ歩こうなんて思う人はいないようです。だから、箱根登山ケーブルカーがあるわけですけど……。

後悔することなど微塵も思ってもいなかったので、勢いで、強羅駅前からケーブルカーの線路沿いに歩いてスタートしました。

垣間見える荒々しい本当の強羅の姿


▲強羅の坂から見下ろすことができる明星ヶ岳

普通に坂を歩いているだけでは、どれぐらいの高さまで上がっているのかわからないので、時々ケーブルカーの無人駅に入って歩いた高さを確認して進みます。スタートしてから10分ほどで、箱根強羅公園のそばにある「公園下」駅に着きます。スタートの強羅駅とゴールになる早雲山駅以外は無人駅なので、出入りが自由です。

箱根強羅公園は早雲山の急斜面でありながら、よく整備された日本初のフランス式整型庭園です。

園内を散策しながら、「千と千尋の神隠し」で描かれている背景を思い起こしてみます。「豚にされた両親に逢わせる」と、千尋がハクに導かれていくシーンが覚えているでしょうか? 都市伝説化して未だにジブリファンが見つけることができていない、季節感がバラバラの花畑を通って行くシーンに登場するような場所が「強羅公園」なのかもしれません。

園内は季節によって様々な花が咲き誇り、もしも季節を度外視していっぺん咲いたら……なんて想像力を膨らませてみると、「千と千尋の神隠し」で描かれていた花畑のようになるのではないでしょうか? しかし今回は遅い紅葉狩りだったため、花らしい花を見ることができませんでした。

たくさん花に彩られる箱根強羅公園ですが、軽自動車ほどの大きな岩が散在しています。

早雲山の斜面を上るにつれて荒々しさを増す強羅の土地


更に早雲山の斜面を進み、箱根美術館のある日本庭園の「神仙郷」を訪れてみましょう。

苔庭に目を奪われがちですが……

よく見ると苔庭全体が、ゴツゴツした岩の上にあるのがわかるでしょうか?

竹林の中にも外塀よりも大きな岩の存在感に圧倒されます。

緑の斜面に大きな岩が散在している光景は……「千と千尋の神隠し」の世界


四季折々の風景を眺めながらお茶とお茶菓子が楽しめる、茶室「真和亭」の周りも例外ではありません。

緑豊かな早雲山の斜面ですが、強羅という土地の荒々しい本来の姿を見ることができます。勘の鋭いジブリファンなら気がついているかもしれませんが……

「千と千尋の神隠し」の中で、千尋家族が赤い楼門から入り、駅みたいな建物から出てきたときに目にしたシーンです。陽ざしを浴びた草原の中に大きな岩のような石像が点在している光景です。

強羅の坂道は、「千と千尋の神隠し」で描かれているような岩が点在する風景を容易に想像させる風景が広がっているので、探し求めていた不思議な世界へ迷い込む入口なのかもしれません。

強羅を代表する2つの庭園にも、イメージとは違う荒々しい土地の由来にもなった風景を垣間見ることができます。箱根美術館の水色の屋根も、どことなく現実離れしているような風景に見えてきます。

早雲山の斜面は、箱根美術館を過ぎたあたりから急に勾配がきつくなります。箱根登山ケーブルカーでも最大勾配200%(63.4349度)の坂を上っていく難所です。今さらですが……折れそうな気持ちにムチ打って、1時間かけて早雲山駅まで辿り着いたころには、陽が暮れて真っ暗になってしまいました。

そういえば、情報収集した旅館「強羅天翠」のスタッフの方に、注意を受けたことを思い出しました。「陽が暮れると気の荒いタヌキが出没するらしいから、暗くなる前に早雲山を下りたほうが良いですよ」……とのアドバイス。とっとと山を下りなくちゃ!

この記事を書いた人

MAKIJI

MAKIJI

秋田生まれ東京育ち。中年デビューのスピリチュアル系フリーライターとして、都市伝説でウワサされる神秘的なエリアをotaku感覚で追いかけます。日本人が忘れかけている魅力的なスポットの隠された謎を一緒に紐解きしませんか?五感をフル活用した情報であなたの背中をそっと後押したいと思います。

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