美大生はお金がかかる。製作に必要な材料費もそうだけど、勉強のための展覧会費用がバカにならない。年に何度も行くから、少しでも安く済んだら嬉しい。
今回は抑えるところは抑え、使うところは使う、美大生2人の美術館はしご旅をお届けします。
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最初の目的地
東京駅で待ち合わせ、「オルセーのナビ派展」が開催中の三菱一号館美術館に向かいます。
三菱一号館美術館 入り口です。青いビル群に囲まれた赤レンガの建物と緑のお庭が印象的。明治時代に建てられた日本初のオフィスビル・三菱一号館の姿を、そっくりに再建したものだそう。意外にも周りのビルと付かず離れず、いい具合に調和していて素敵な外観でした。
内装もいわゆるホワイトキューブ(真っ白な空間)ではなく、こっくりと落ち着いた色の壁面で、暖炉のレプリカの上に作品を展示していたりするのが素敵でした。
そもそもナビ派って聞いたことありますか? あまり日本ではまだ馴染みがないですよね。私も最近知ったんです。今回の展覧会が日本初の本格的な展覧会なのだそう。
なお、ゴッホとの共同生活を送っていたことでも有名な画家ゴーギャンは、ナビ派と呼ばれる画家たちに師と仰がれる存在で、大きな影響を与えたと言われています。
個人的には少し前からモーリス・ドニがなんとなく好きだなーと思っていたのですが、実際に見たら初めて見た絵も含めてとても良かったです!
薄く輪郭線があって、デフォルメされた形があって、軽やかな色と平面的な模様。ハーフトーンやペタッとした印象は、どこか日本的。日本の浮世絵の影響も大きかったそうです。100年以上も前の作品なのに親しみやすさを感じるのはそのせいかもしれないと考えました。
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「かわいい」という言葉をアートに向けるのはどうなのか?という問題があると思いますが、「かわいい」はプラスな感情を色々とひっくるめて一言で言えてしまう便利な言葉です。
古典でいう「いとおかし」です。やたら出てきますよね。大抵「しみじみと趣深い」と訳されます。
どちらにせよ言いたいのは「感動」な訳です。あまりに凄すぎて「すごい! 本当にすごい!!」しか言えないのと同じように、あらゆるときめきや愛情や感情が一気に押し寄せた時に出るのが「かわいい」だと思うのです。
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ナビ派展は思わず「かわいい!」と声に出した作品が多くあり、かなり観てよかったと思いました! グッズも物欲が刺激させる素敵なものばかりでしたが、ここはグッとこらえて。
展示は一時間強で見終わり美術館を後にしました。早めに近くのカフェで軽くお昼ご飯。土地柄、ある程度のお値段は覚悟をしていたものの、1,000円以下で食べられたのでラッキーでした。
世田谷美術館へ
大手町駅から地下鉄で用賀駅へ移動し、次に向かったのは世田谷美術館。バス代を節約して徒歩で20分ほど歩いて行きました。
途中の歩道は百人一首が彫られた石の装飾がされていてなかなか素敵です。
案内板も多く、迷うことなく目的の世田谷美術館に到着しました。
お目当ては、「花森安治の仕事ーデザインする手、編集長の眼」という展覧会。少し前に朝ドラの題材となり、今も出版されている『暮しの手帖』の初代編集長・花森安治の仕事にスポットを当てた展示です。
ナビ派展の半券割引で大学生は700円で入場できます!
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それにしても結構な密度の展示で、花森安治の仕事ぶりはもちろん、毎号印象的な『暮しの手帖』の表紙原画や、孫に当てた可愛らしい直筆の手紙も見ることができました。
当時のままの展示物も数多く、花森の息遣いが聞こえてきそうでした。画家や作家という何かを作り出す人々の、パーソナルな部分が見られるというのは面白いんですよね。
写真撮影可能だった、壁に絵を描く花森の姿。『暮しの手帖』の展示会場の準備をする場面です。編集長直筆の内装なんて貴重ですよね!
編集長でありながら、文字のレイアウトや表紙の原画、執筆、新聞や中吊りの広告まで全て自分でやらずにはいられなかったようです。なんというバイタリティ……。才能に生かされたのですね。私も自分の出来ること、やるべきことを早く見定めたいと思いました。
おわりに
実はもう2箇所、花森安治展との相互割引で行ける美術館があったのですが、残念ながら今回は歩き疲れてここで終了。
横浜美術館で4月15日~6月25日に開催の「ファッションとアート麗しき東西交流」展は、ナビ派展の半券で相互割引価格で見ることができるので楽しみにしたいと思います!