美術館や美術展、行かれますか?
「実際に行ってもし好みじゃなかったらいやだな」「よく知らないから行こうか迷うな」と思っている方もいるかも知れません。
今回は、わたくし美大生きたこが実際に見てきたおススメの展覧会をご紹介します。このざっくりではありますが解説つきの紹介を読んで、GWのお出かけの参考にしてください!
国立新美術館開館10周年
「草間彌生 わが永遠の魂」
あふれるエネルギー度:★★★★★
これだけは知って行こう:草間彌生
・88歳にして現役で毎日絵を描き続けている日本を代表する前衛芸術家(2017年現在)
・水玉の強烈な色合いの絵で有名だし人気
・そもそもは幻覚に悩まされて、見えてしまうものを絵に描くようになった
・10代から日本画を学んでいた
・50年代にアメリカに渡って徐々に評価を得るようになった
・絵だけじゃなく小説も書くし立体作品も多い
・2016年、文化勲章受章
▲《南瓜》
▲《トラヴェリング・ライフ》
言わずと知れ過ぎていて逆に実はよく知らない、草間彌生という前衛芸術家の歩んできた歴史を総ざらいできる大規模な展覧会。大広間の約130点ペインティング群は圧巻の一言です。GWは大混雑が予想されますが、是非ショップでお気に入りの草間グッズもゲットしてください!
詳しい草間彌生展のレポートはこちら
国立新美術館開館10周年 チェコ文化年事業
「ミュシャ展」
めったにお目にかかれない度:★★★★★
これだけは知って行こう:ミュシャ
・19世紀後半、今のチェコ共和国に生まれる
・27歳でパリに移る
・女性とお花や曲線を組み合わせたポスターが有名
・晩年は大ドイツ主義と小ドイツ主義の抗争の中、スラヴ民族のナショナリズムの機運が高まっていた
・要はドイツ人に支配されてしまったら、自分たちスラヴ民族の文化とか大切なものが消えてしまうんじゃない?っていう心配がされていた
・そんな中50歳でチェコに戻って約16年かけて手がけたのが、今回の目玉《スラヴ叙事詩》
・《スラヴ叙事詩》はミュシャのオリジナルのタイトルで、この名前の物語があるわけではない
▲スラヴ叙事詩《スラヴ民族の賛歌》
▲スラヴ叙事詩《聖アトス山》
会場に一歩入った瞬間「えっ、でか!」と声に出ていました。壁一面に描かれた幻想の世界! 実際には壁ではなく巨大なカンバスに絵の具で描かれているのですが、大きさが尋常じゃない。しかもその数なんと20点!
ミュシャといえばお花の冠をかぶった女性像の版画など、繊細で柔らかく綺麗という印象で実際に私も好きだったのですが、こんなにダイナミックな作品群があったなんて!と驚きです。
故郷の危機に際して、チェコ国民が自分たちの民族の歴史に向き合い希望を持つために描いたそう。こういった事実を知らなくても、単純に大きな絵の世界に入ったみたいな体験ができるのは貴重です。異国の物語にどっぷりと浸ってみてください。
チェコ本国での展示の様子はこちら
オルセーのナビ派展:美の預言者たち ーささやきとざわめき
かわいいを発見度:★★★★★
これだけは知って行こう:ナビ派
・19世紀末のパリの画家グループ
・「ナビ」とは「預言者」のこと
・簡略化されたモチーフと抑えられた陰影で平面性を強調
・要はペタッとしてて色と形がかわいい
・実は日本の版画から大きな影響を受けている
正直、ナビ派なんて言葉は知らなくてもいいんです。今回の展覧会が日本で初めての本格的な展覧会なのですから。
ざっくり言ってしまうと、それまでの伝統的なキッチリした構図とか遠近法とか、絵のストーリーとかはさておき「そもそも絵って色の組み合わせでできた平面だよね」と言って20世紀の新しい美術につながる方向性を示した一派。なので色の組み合わせが素敵です。
構図も日本的というか、ちょっと漫画みたいなのですが、これも浮世絵の影響の表れかもしれません。かわいいもの好きの日本人に刺さる、今後大注目のナビ派。入門に是非!
詳しいナビ派展のレポートはこちら
近くの他の美術展
シャセリオー展 -19世紀フランス・ロマン主義の異才
勉強になる度:★★★★★
これだけは知って行こう: シャセリオー
・19世紀のフランスの画家(フランス革命後の不安定な社会に生きた人)
・ロマン主義(簡単に言うと、個人の感情・感性を大切に、神秘的で劇的な表現で描く)
・もっと簡単に言うと、キレイにリアルに描いた人
・演劇とか物語好きな文学青年
・絵のモデルの女性と恋に落ちるが、絵をめぐって争い、2年で破局
・アルジェリア旅行でエキゾチックな衣装に興味を持つ
・何を描くにも「日常」や「母子愛」を大切なテーマにした
・37歳で亡くなる
会場入り口のみ写真撮影できます。この「カバリュス嬢の肖像」は二月革命直後に発表された作品。混乱極まる現実世界と正反対の静けさ、穏やかさに包まれていて、画家はどんな気持ちでこの絵を描いたのでしょう。
展覧会は全体的に派手さありませんが、歴史的背景や画家の人物像に迫るキャプション(説明)が充実しています。作品とともに1つずつ、じっくり読みながら進むと、シャセリオーという画家に近づいていけるような、興味深い展示でした。フランスの歴史や演劇、神話に興味がある人はもっと深く楽しめると思います。
「スケーエン:デンマークの芸術家村」展
さわやか度:★★★★★
これだけは知って行こう:スケーエン
・デンマークのユトランド半島最北端の村
・海沿いで漁村だった
・1870年代から、首都コペンハーゲンで活動していた若い画家たちが移り住んだ
・海辺や砂浜に魅せられ、光や色の表現に長けた画家の作品が多い
・ミカエル・アンカーとアンナ・アンカーは画家夫婦
▲ミカエル・アンカー《海辺の散歩》1896年 スケーエン美術館 ©The Art Museums of Skagen
日本・デンマーク外交関係樹立150周年を記念して国立西洋美術館・新館展示室で開催中。当日に限り上記のシャセリオー展の観覧券で鑑賞できます。
デンマークの画家ってあまり知られていないですし、北欧が好きだと騒いでいる私も全く知らなかったのですが、スケーエンの土地の空気を伝える魅力的な作品が多かったです。海の絵も人の絵もさわやかで優しく、癒されました。
常設展会場の一角なので、他の収蔵作品も一気に見れます。シャセリオー展も常設展もくまなく見るとなるとちょっと疲れますが、がっつりアートに浸る1日、いかがでしょう。
2017年2月10日~5月28日
9:30~17:30(金・土曜は20:00まで)月曜休館(5月1日は開館)
スケーエン:デンマークの芸術家村 詳しくはこちら(国立西洋美術館公式HP内)
近くの他の美術展
・ボイマンス美術館蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展
・特別展 雪村 -奇想の天才-
ヴォルス --路上から宇宙へ
想像力で愉しむ度:★★★★★
これだけは知って行こう:ヴォルス
・本名 アルフレート=オットー=ヴォルフガング・シュルツ
・第一次世界大戦後のドイツの裕福な家庭に育った
・7歳から始めたヴァイオリンが天才的に上手かったうえ、写真家としてデビューするという芸術の神様に愛された人
・フランスに移るもドイツとフランスの戦局悪化に伴い収容所を転々とすることを余儀なくされる
・生活のためヴァイオリンは売るわカメラは失くすわで水彩画に没頭するようになる
・極細の線の小さい絵が多い
・が、写真も銅版画も油彩画も手がけた
・38歳で亡くなる
▲《人物と空想の動物たち》1938-40年 ギャラリーセラー
千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館にて開催中。この展示室内は映像作品を除く他のすべての作品が撮影可能です。作品はチラシやポスターでしか見たことがなかったのですが、実物の絵は髪の毛よりも細い線で細かく描かれていてびっくりしました。
▲《植物》1947年 横浜美術館
抽象的な絵が多いですが、難しく考えないで、想像力を試しながら楽しむといいかもしれません。(※実際、ヴォルス本人は作品に自分でタイトルは付けず、妻のグレティが管理のために付けた名前なので、何から着想を得ていたのかは誰にもわからない)
鑑賞後に外を歩けば、普段は気に止めもしなかったものが、絵のように魅力的に見えてきます。
GW、何観る??
このGWは「日本初」「世界初」の貴重な展示のある展覧会が多いです。これを逃すと次に見られるのは何年後かわかりません。見逃さないでくださいね!