ようやくドイツの長い冬が終わり、春が到来しました。そしてドイツに春を告げるのは、桜でもチューリップでもなく、「白アスパラ」。
町中に白アスパラを売るスタンドがオープンし、レストランの扉には「白アスパラ始めました」の文字が踊ります。今が旬の白アスパラ、ドイツ人が崇め讃える春の味覚をお試しあれ!
白アスパラ、その美味とは
(ドイツ・シュヴェツィンゲンの白アスパラガス売りの像)
白アスパラ(Weiss Spargel)はその名の通り、白いアスパラです。おなじみの緑のアスパラに土を被せるなどして日光を避け、手間隙をかけて作ります。アスパラと共に歴史は古く、ローマ帝国の時代のレシピにもその名前が登場しています。
さてお味と言えば、まず感じられるのが甘み。触感は柔らかく、鼻に優しい香りが抜けます。味付けにもよりますが、食感は概して軽く、無限に食べられる味わいです。その優しい味覚は正に母の味。畑のママです。
日本でも白アスパラの缶詰は見受けられますが、残念ながらあなたの本当のママではありません。北海道では新鮮な白アスパラが作られていますが、まだまだレアなお品です。
フランスやベルギーなどでも試すことが出来ますが、そちらの国には普段から美味しいものが沢山ある為、ドイツ程の情熱は薄いようです。やはり白アスパラに挑戦するならドイツが本場です。
みな違ってみな美味しいステキな白アスパラガスの選び方
白アスパラの旬は、イースター明けから5月の下旬位までと言われています。この期間中はドイツ各地でアスパラが収穫されます。
スーパーで買って良し、市場で買って良し、町中に出展する特設スタンドで買っても良し。売り場に整然と並ぶ無数の白アスパラ。その区分けは、概ね「太さ」で分けられています。
純粋に太くがっしりしたアスパラの方が高価で、ひょろいものは値段が落ちます。また、折れたものや割れたものは格下げ品としてまとめ売りされます。
くたくたに煮た味付けが好きなら寧ろ安い細いものを買った方が好みに合いますが、ステーキにするなら太いアスパラでないと風味が吹き飛びます。スープにするなら折れたアスパラでも十分ですね。デキる料理人はまず白アスパラを買う所から違うという訳です。
前菜から主食まで、白アスパラは活躍の場を選ばない
とにかく食べてみましょう! まず最も多い食べ方は「茹でる」事です。
前菜でも大活躍。サラダにしても、スープにしても美味しいです。写真は酢で締めてサラダにした白アスパラ。サラダとは思えないボリュームで、とことん白アスパラが主役です。
メインにするなら、ホーランデーソース、直訳すると「オランダのソース」と呼ばれるソースをかけて食べるのが最もメジャーかも知れません。
ホーランデーソースとは、バターと卵黄を混ぜ、レモン汁と塩コショウで味を調整した、濃厚な黄色いソースです。肉や魚にかけても美味しく、パスタにも使えます。このソースは白アスパラと共に、パックや瓶詰めになって売っている事がほとんどです。
しかし……我ら日本人にとってホーランデーソースはいささか濃厚すぎます。白アスパラのモチベーションを殺しかねません。
もっと活かしたいアスパラガスの本気~オーブン焼き~
そこで試してみたいのが、オーブン焼き。お店では滅多に見かける事のない料理ですが、新鮮な白アスパラの風味を楽しめます。
まずは下ごしらえ。根元の部分を大胆に切り落とし、更に根元部分の皮を剥きます。
もったいなく見えますが、根元の部分も皮も捨てません! 後々茹でて出汁を取る事が出来ます。出汁はスープやリゾットで大活躍。根元を捨てている所をドイツ人に目撃されると怒られますので、お気をつけ下さい。
バター、またはオリーブオイルをかけ、塩と胡椒で味付けします。耐熱紙で包んで、まずはレンジで30秒~1分程チンしましょう。後はオーブンに入れ、200度前後で10~20分程焼けば完成です。時間は白アスパラの太さによって変わります。
付け合せにピッタリの料理も紹介します。「カッセラー」です。
ドイツのスーパーでは、写真のような塊肉がよく売られていますが、これは豚肉を塩漬けにし、燻製にしたものです。ハムステーキにして良し、煮物に入れて良し。半調理品の為、調理時間も短くて済みます。今回はザワークラウトと共に炒め煮にしました。
あっという間に完成です。メインはあくまで白アスパラ。オーブン焼きにした白アスパラは、風味が煮汁に溶けていないので、シンプルな味付けでさっぱりなのにジューシー。優しい春の風味も健在です。
あなたも一緒に白アスパラを讃えよう!
春の到来を告げる象徴的な食べ物として、生育に手の掛かるちょっとした高級品として、何より老若男女を選ばない美味の極みとして、長らくドイツ人に愛されている白アスパラ。
足が早い食べ物ということも手伝って、春の間の数ヶ月間しか食べる事が出来ません。まさに今が旬、ドイツ人が競って食べる白アスパラ。生きている内に一度はお試し下さい! きっと毎年何度も食べる事になってしまいます。