ドイツのパンの代表格といえば、ユニークな形と独特の食感が特徴のプレッツェル。本場ドイツではスタンダードなプレッツェル以外にも、さまざまなバリエーションがあります。
その名はよく耳にはするけれど、ドイツに行ったことがなければ実際に食べたことがないという人が多いかもしれないプレッツェル。ドイツに行けば、プレッツェルの種類の多さとそのおいしさに、きっと驚くはずです。
そもそもプレッツェルって何?
プレッツェルはドイツ発祥のパンの一種。その起源ははっきりとしておらず、かつてはドイツ領だったこともあるフランスのアルザス地方で生まれたとする説もあります。プレッツェルの最大の特徴のひとつが、そのもっちりとした食感。細い部分はカリッと、太い部分はふっくらとした食感が楽しめます。
加えて、光沢のある茶色をした生地も特徴的。小麦粉とイーストから作った生地を、数秒間水酸化ナトリウム水溶液に浸けてから焼くことで、表面が独特の茶色に焼き上がるのです。
ちなみに、日本では「プレッツェル(Pretzel)」と呼ばれていますが、これは英語表現で、ドイツでは「Brezel(ブレーツェル)」と呼ばれます。日本で食べられるプレッツェルの多くは、ドイツのプレッツェルをアメリカ人好みにアレンジしたもの。アメリカ式プレッツェルはカリカリした食感が特徴で、伝統的なドイツのプレッツェルとは異なります。
スタンダードなプレッツェル
「プレッツェル」と聞いておそらくみなさんが思い浮かべるのが、こちら。ハート型をしたシンプルなプレッツェル(Laugenbrezel)です。なぜスタンダードなプレッツェルはハート型をしているのか……諸説ありますが、一説には祈りをささげている修道士の腕をかたどったものだとする言い伝えがあります。
細い部分はカリッ、太い部分はふっくらモチモチとしていて、ドイツで食べる焼きたてのプレッツェルは感動的なおいしさ。おやつに、ビールのおつまみに、食事のお供にと、さまざまな場面で活躍してくれる存在で、食事と一緒にいただくなら、特にクリームを使った煮込み料理によく合います。
ちなみに、プレッツェルの表面にまぶしてある岩塩をそのままにして食べると、日本人にはかなりしょっぱいので、適度に塩を落としてから食べるのがおすすめ。筆者は基本的に塩はすべて落としてから食べますが、それでもプレッツェル表面にほんのりと塩気が残ります。
スティック型プレッツェル
ズッキーニのような太いスティック型のプレッツェル(Laugenstange)は見た目のインパクト大。スタンダードのプレッツェルよりも全体的に太いだけあって、強いもっちり感が楽しめるので、プレッツェルのもっちりした食感を存分に味わいたいという人におすすめです。
編み込み型プレッツェル
ぽってりとした独特の形が可愛らしい編み込み型のプレッツェル(Laugenknoten)。基本的に味はスタンダードなプレッツェルと同じですが、横に切るのが比較的簡単なのでアレンジがしやすく、サンドイッチ作りなどに向いています。
種つきプレッツェル
プレッツェルに限らず、ドイツでは表面に植物の種子や穀物をトッピングしたパンがポピュラー。こちらはひまわりの種ですが、ほかにかぼちゃの種をまぶしたものや、ごまをまぶしたものなど、さまざまなバリエーションがあります。
種をトッピングすることによって、タンパク質やカルシウムなどの栄養がプラスされるだけでなく、カリッとした種の食感や香ばしさも楽しめるヘルシーで滋味あふれるプレッツェルです。
ピザ風プレッツェル
ベーコンやチーズなどをトッピングしてピザのように焼き上げたプレッツェルはボリューム満点。プレッツェル自体の香ばしさにチーズの香ばしさが加わり、香り高さも倍増。ちょっとした軽食にうってつけです。
バタープレッツェル
筆者のおすすめが、ノーマルなプレッツェルにたっぷりのバターを挟んだバタープレッツェル(Butterbrezel)。少し塩気のあるプレッツェルと濃厚なコクのあるバターのまろやかさは相性抜群です。シンプルではありますが、筆者はひそかに「ドイツで一番おいしい食べ物のひとつではないか」と思っています。
ただし、炭水化物+脂肪という高カロリーに加え、たっぷりのバターは胃の負担になりすいので食べ過ぎに注意。
プレッツェルサンド
普通のパンを使ったサンドイッチは時にパサついて感じられることがありますが、外はツヤっ、中はもっちりとしたプレッツェルならその心配もありません。普通のサンドイッチのパサパサ感が苦手という人はぜひプレッツェルサンドを試してみてください。特に、中にクリームチーズが塗ってあるプレッツェルサンドは本当においしいです。
こちらは編み込み型プレッツェルを使ったものですが、スティック型プレッツェルや円形のプレッツェルを使ったものもあります。
新年プレッツェル
年末から新年にかけて、期間限定で発売されるドイツの年末年始の風物詩が新年プレッツェル(Neujahrsbrezel)。「プレッツェル」とは呼ばれていながら、日本でいう「ロールパン」のような生地で、ほかのプレッツェルとは味も食感も大きく異なります。そういう意味では、プレッツェルというよりも、「スタンダードなプレッツェルの形をした菓子パン」と考えたほうがいいかもしれません。
新年プレッツェルは普通のプレッツェルよりも大きいのが特徴で、人の顔の大きさをゆうに超えるものもたくさんあります。筆者はこれを見ると、いつも日本の「しめ縄」を思い出してしまいます……年末年始にドイツを訪れるなら、ぜひ期間限定のプレッツェルをゲットしてみては。