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    規模のわりに噴水と本屋が多い町がある。それには理由もありました
    チェコ

    こんにちは、ライターの新田です。今回は学生の町として知られるオロモウツを取り上げます。オロモウツは派手なバロック様式の柱像と社会主義を表現した天文時計が共存する不思議な町でもあります。

    それでは、チェコの歴史を紐解きながらオロモウツの魅力に迫ってみましょう。

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    オロモウツへのアクセス


    オロモウツ方面行き急行

    オロモウツはチェコとスロバキアを結ぶ幹線上にあるので、鉄道が便利です。プラハ発コシツェ(スロバキア)行きの特急がオロモウツに停車します。プラハからオロモウツまでは2時間~2時間30分、本数は1時間に1~4本です。

    ブジェツラフ(Břeclav)経由オロモウツ行き

    一方、チェコ第2の都市、ブルノからも鉄道でアクセスできます。ブルノからオロモウツまでは約1時間30分、本数は1日10本前後です。

    ただし、ブルノからの場合は絶対にブジェツラフ(Břeclav)、プシェロフ(Přelov)経由の列車に乗ってはいけません。遠回りになるので注意が必要です。

    世界一美しい共産趣味スポット 


    オロモウツには共産趣味者(共産主義的グッズを愛する人)にとって必見の世界遺産があります。それが、市庁舎にある天文時計です。

    一見すると「かわいい天文時計」にしか見えません。しかし、よく見るとヨーロッパの時計には描かれないはずの人物がいることに気づきます。

    そうです、下に大きく描かれている科学者と労働者です。通常、このような天文時計には神や天使が描かれていますが、この天文時計には一切ありません。

    天文時計が最終的に完成したのは20世紀のこと。社会主義時代の1950年代に修復され、現在に至ります。側面部分や人形をよく見ると、同じような一般庶民が描かれています。このような労働者重視の天文時計はオロモウツだけでしょう。

    毎日12時になると5分間、からくり時計が動き出します。コミカルな音楽と共に、人形がクルクル回る姿は本当に愛らしいです。そして、最後は何ともいえないニワトリの鳴き声。ぜひ、12時にからくり時計に行ってみましょう。

    カトリックのプロパガンダ「聖三位一体柱」 


    市庁舎の横にある迫力満点の柱が世界遺産に登録されている「聖三位一体柱」です。「これでもか」というくらい、像が置かれています。そして、遠目でもわかる派手な装飾。1回見ると、なかなか忘れられない柱です。

    この聖三位一体柱はペストの終焉を記念して1716年~1754年にかけられて作られました。様式はバロックスタイルです。高さは35mにもなり、これほど立派な柱はなかなか見当たりません。そのため、2000年に世界文化遺産に登録されました。

    ところで、この柱にはもうひとつの意味があります。それが「カトリックの宣伝」です。17世紀、チェコではカトリックとプロテスタントが激しく対立し、大戦争に発展しました。それが「三十年戦争」(1618年~1648年)です。

    結果的に、カトリックが勝利し、チェコではカトリック化が進められました。その過程で進められたのが、バロック様式を使ったカトリックの宣伝でした。豪華な装飾を人々に見せつけ「カトリックはすごいぞ!」と宣伝したわけです。

    このようなカトリックとプロテスタントの激しい対立があったからこそ、このような豪華な柱が生まれたのでしょう。

    噴水と本屋が多いのはなぜ?


    オロモウツを歩いていると、町の規模のわりに噴水と本屋が多いような気がします。これにはきちんとした理由があります。

    まず、噴水。オロモウツではキリスト教のラッキーナンバーに基づいて「3つの柱と7つの噴水」を作ることが夢とされてきました。

    3つの柱と6つの噴水ができた後、7つ目の噴水がなかなかできませんでしたが、2002年にようやく7つ目の噴水「アリオンの噴水」ができました。この噴水は小さな子供向けのプールにもなっています。

    こちらは「トリトン」の噴水です。しんどそうに支えている男性は海の男「トリトン」です。柱と噴水はライバルであったチェコ第2の都市、ブルノに対抗する意味でも作られました。

    本屋が多い理由はオロモウツに高等教育機関が集中しているせいです。オロモウツにあるパラツキー大学はチェコで2番目に古い名門大学。パラツキー大学には日本学科が設置されており、日本人留学生も学んでいます。

    そのため、本屋はもちろん、学生向けのバーもたくさんあります。バーで学生と交流するのもおもしろいかもしれませんね。

    ビールに合うユニークなチーズ、オロモウツチーズ


    オロモウツにはユニークなチーズ、オロモウツチーズがあります。

    オロモウツチーズが文献に出るのは15世紀のこと。本格的に製造されたのは19世紀です。オロモウツチーズはコニャックと同じように、オロモウツで作られたチーズしか認められていません。

    早速、いろいろなオロモウツチーズを試してみました。何ともいえないクセはありますが、個人的には好きな味でした。中にはにんにくのような味がするオロモウツチーズも!

    いろいろなオロモウツチーズとビールを味わうといいでしょう。ちなみに、オロモウツの住人はビールと揚げたオロモウツチーズを楽しむらしいですよ。

    オロモウツ

    この記事を書いた人

    新田浩之

    新田浩之鉄道&中東欧旅行研究家

    1987年生まれ。神戸市在住。専門は鉄道と中東欧です。国内では鉄道系イベントの取材、国外では中欧、東欧、ロシアの歴史スポットを訪ね歩いています。チェコアンバサダー2018

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