さて、11月も半ばになると、フランス各地でクリスマス・マルシェが特設されます。ここマルセイユでも今日・19日土曜日から始まったところ。この街ならではの特長は、フランスの(多くの家庭の)クリスマスに、ツリーと共に欠かせないサントン人形専門のマルシェと、美味しいものや名産・銘品の並ぶマルシェと2つあることで、その距離も歩いて1分ほど。前者は世界最古の証券取引所の建物が、後者は港の大きな白い観覧車が目印です。
去年はテロの影響で、どの街町でもクリスマスマルシェの開催が躊躇されて、開始日が延期されたり。予定通りに始まったここマルセイユでも、人出がぐっと少なくなっていたんですが、今年2016年は初日の朝からこの通り。
その場で口に出来るソーセージ類やチーズ料理、クレープ、甘いお菓子のいい匂いが漂って来て、思わず足が止まります。クリスマス・マルシェの定番、ココアやホットワイン(はパリでは普通だけれど、マルセイユのカフェではそう扱っていないので)のスタンドもあって、それも楽しみ。
お馴染みの子どもの遊具(廻る電車)も、トナカイに引かれるソリ仕様。でも、こちらはまだガラガラ。子どもを連れてくるのは、日が暮れて、イルミネーションに包まれる時間帯を狙ってというママンたちの方が多いようですね。
さて、こちらが夜7時過ぎの光景。何しろ、この廻り、こんなにライトアップされるんです。
観覧車もこの通り。
キレイでしょう? こうして見上げて眺めながら進んでいくのが、毎年の楽しみ。
パリのシャンゼリゼ大通りもそうだけれど、白とブルーはここ数年のマルセイユの港の定番イルミネーション・カラーです。海辺の街に、輝く星屑が舞い降りてくるみたいな……
シャレーの出展者もおおむね常連店舗で、地元マルセイユの老舗の名品・銘菓をはじめ、南仏各地、コルシカ島、そして、イタリアから、美味しいものがどっさりやってきます。
このチョコレートたち、見覚えありませんか? そう、ここは、以前ご紹介したL’Espérantine Marseille(レスペランティン マルセイユ)のシャレー。
そして、こちら……そう、Le blé de léspérance(希望の小麦)です。
それから、南仏陶器たち。カラフルでひまわりやオリーヴのモチーフというのが定番イメージですが、ここのマルシェで毎年特に人気なのは、こちらの2つ。
シックな独特の色合いと控えめなモチーフの作品を作り出している、サロン・ド・プロヴァンスの陶芸家。器だけでなく、手作りジャムの濾し器やお玉おしゃもじ置きなどのキッチン用品なども。オリジナル柄のタイルたちも、同じトーンでとても素敵なんです。
こちらは、色こそカラフルなものの、デザインはいたってシンプル。薄くてとても軽いのが特長のカシの陶芸家ご夫妻の作品。
オリーヴオイル入れから大鉢・花瓶・水差しなど定番の食器たちのほかに、和食にも合う小さなお茶碗がずらりと揃っているのが圧巻。どちらの工房も、時季によっては、単発でもアトリエ(お教室)を受け付けてくれるのは、フランスではよくあるスタイル。教材としての作品も、自分で選べる場合が多いのも特長です。
陶器や陶製のタイルは、南仏暮らしに密着したもののひとつ。外塀に表札代わりにも陶製タイルがよく使われていたり、門扉の上にちょっとした陶製の物が対になって飾られているのを、映画や雑誌でみかけたことありませんか? 面白いのは、番地の数字と一緒に並ぶ名前は、その家の人の姓ではなくて、その家や塀の中のVilla(ヴィラ)と呼ばれる一角をさす名前(船みたいに命名します)なこと。日本のマンションなどにそれぞれ名前が付いているのと同じ感覚ですね。違うのは、名前の他に、魚だったり花だったりを描かれた陶製プレートやモザイク柄が一緒に施こされていること、そうでなかったら模様付きタイルを帯のように埋め込んだり……アパルトマン住まいの場合には、ベランダや室内の壁にタイルや絵皿を飾る人も見かけます。ちょっと、スペインやポルトガルみたいなイメージ、でしょうか。地中海沿いに地続きなので、食住の感覚は、南欧独特の共通点がありますね。
そうした表札やタイルなどを扱うシャレーも出ているし、パリやアルザス、リールなど、北フランスのマルシェとは、また趣異なる品揃えと空気です。機会があったら、ぜひ! iD TGVをうまく使えば、そう費用もかかりませんし……ただ、せっかくなので、この夜の空気を愉しんで行くには、日帰りではちょっと厳しいかも。とはいえ、TGVの発着駅サン・シャルルからは、メトロで2駅でVieux Port(ヴュー・ポー)駅へ。この広場正面への出口も、直結していますから、初めてでも、迷わず来られるはずです。