いよいよ観光シーズンに突入しサマータイムを楽しむロンドナーや多くの観光客で活気に溢れるロンドンの6月。悲劇的なテロ事件と波乱の総選挙を終えた、素顔のロンドンの状況を現地からレポートします。
生粋のロンドナーに聞いたロンドンの“今”
日本人と関わる機会も多いロンドンの語学学校で、ロンドン生まれロンドン育ちの英語講師の女性に、今のロンドンについての率直な意見を聞いてみました。※2017年6月取材
――今年に入り4件ものテロ事件が発生していますが、その前後でロンドンの様子は変わりましたか?
「大きな変化はないけれど、個人的にはイスラム教徒に対する偏見やムスリムへの攻撃に対してとても心配しています。」
――ここしばらくのロンドンの様子について、どのように感じていますか?
「とても悲しいです。私はロンドンで生まれ、ロンドンで育ちましたから。多くのムスリムの友達もいます。テロ事件は宗教や信仰とは無関係なんです。」
――総選挙について、テロ事件の影響はあったと思いますか?
「重大な影響はなかったと思います。」
――総選挙の結果についてどう思いますか?
「この結果は、この国が2つに分かれていることを再び思い出させるものでした。この国は、高齢者と若者の間、そして都会と田舎の間で、人々の意見に大きなギャップがあります。それらが、こうした真っぷたつの結果を生んだのだと思います。」
――テロの前後で語学学校の学生について変化はありましたか?
「詳しくは分からないけれど、同校の他キャンパスで2グループの留学キャンセルが出たと聞いています。」
――Brixitを含め、他国との関わりという点において、今後イギリスはどのように変わっていくと思いますか?
「私は、イギリスがより孤立して行っているように感じています。それはとてもネガティブなことです。しかし、これは国民の50%の意見しか反映していません。残りの50%は、今でもとてもオープンで、グローバルコミュニティーの中に居たいと感じています。」
――これから留学や観光、仕事などでロンドンを訪れる日本人に向けて一言お願いします。
「ロンドンに来る皆さんを、私たちはあたたかく迎えます! 誰でも大歓迎ですよ。どうか、最近のテロ事件でロンドンに来ることを諦めないでください。メディアによって誇張されて報道されるのは今に始まった事ではないけれど……。テロを勝たせてはだめ! あなたの勇気と冒険心を思い起こして、ぜひこの街を訪れてください。」
彼女が一番伝えたいのは、「私たちはいつでも誰でも暖かく迎えるよ! だからロンドンに遊びに来てね!」ということ。
テロ事件はもちろんとても悲しい出来事だけれど、ロンドンの様子について日本メディアが過度に深刻な報道をすることはやめてほしい、というのがインタビューを通じて語ってくれた彼女の思いでした。
London Bridge
痛ましいテロ事件の現場となったLondon Bridge。
ここには、犠牲者や果敢に戦った人々への多くの献花とメッセージが捧げられています。
テロ以降、ロンドンの合言葉は「We Love London」。みんな、この街を愛しているんです。
Borough Market
以前にも増して活気に満ちたBorough Market。新鮮なフルーツ、多国籍な屋台飯、色とりどりの調味料に砂糖たっぷりの激甘スイーツ……ワインやビール片手にマーケットを楽しむ人々で賑わっています。
「Feel The Love Borough Market」Tシャツを着たカップルを発見! とっても陽気な2人で、快く撮影に応じてくれました。本当に楽しんでいるのが伝わってきますよね。
Pub
London Bridgeで発生したテロ事件の際、「さすがイギリス!」とSNSを中心に話題になった「ビールを抱えて逃げる男性」を覚えていますか?
どんな時でもビールを愛するイギリス国民の憩いの場パブは、連日賑やかな笑い声に包まれています。ロンドナーたちが愛するビール「LONDON PRIDE」の名の通り、ロンドンはいつだってたくましい活気にあふれていますよ。
在英日本人の様子
私の居るフラットは日本人の大家さんが管理しているのですが、自営業の場合はそれほど影響がないようです。また、フラットメイトの学生さんも相変わらずレポートとエッセイに追われる日々を過ごしています。
ただ、日本法人のロンドン支店に勤務していた日本人男性は、企業がイギリス撤退を決めたようで、退職勧告を受けたと聞きました。
これはテロだけでなく、どちらかというとBrixitの影響が大きいようですが、世界的に事業を展開している企業の場合、多かれ少なかれ影響があるようです。
まとめ
日々のロンドンでの生活、そして今回の取材を通して感じたことは、何よりこの街のたくましさです。ともすれば、日本では不謹慎だ自粛だの声が噴き出してきそうな状況でも、一夜にして立ち直ることのできる強さ。
もちろんテロ事件は痛ましい悲劇であり、決してその被害に遭われた方や影響下にある方への配慮が無いのではありません。
むしろ、テロに負けない、屈しない、徹底して戦う、そういう姿勢を示すことで自分たちの愛する街を守ろうとしているのです。