いま、韓国旅行は危ないのか?2017年秋・冬の現地状況をお伝えします。
韓国

日本では、朝鮮半島ピンチ!という報道が連日流れているようです。韓国でも、「日本に戻ってきた方がいいんじゃない?」という連絡を受けたという留学生たちがちらほらいます。今日は気になる最近の韓国事情をお伝えします。

ソウルっ子の関心の先は?

まずはソウル市民たちに聞いてみましょう。ソウルっ子たちは今の状況をどうとらえているのでしょうか。ソウル市民に聞いてみました。

※2017年4月に取材を実施

―韓国ではいまどの程度、北朝鮮の脅威を深刻に感じていますか。
「韓国人たちはほとんど気にしていないですね。私も今みたいに海外の新聞やテレビなどで『朝鮮半島は危ない』という記事を見たりした経験は、こどもの頃からよくありますけど……」(20代大学生)

ーあなたは個人的に今の状況は危険な状況だと思いますか?
「私はまったく深刻な状況だとも危険な状況だとも思っていないのですが」(20代大学生)

ー危険な状況ではないと思っているんですね。その理由を教えてください。
「私自身も軍隊に行ってきました。その時の状況や今の北朝鮮の事情などを考えると、キム・ジョンウン政権は国民たちに嘘をつきながら政権を維持し続けている状況なんです。なので、キム・ジョンウン政権にとって一番重要なのは、この政権を長く長く続けていくことなのでリスクをおかすようなことはしないと思いますよ」(20代大学生)

ー今の韓国人にとって関心のあるニュースはなんですか?
「選挙ですね。一番関心のあるニュースは大統領選挙です。その次はセウォル号の事故の調査ですね。北朝鮮関連のニュースは3番目くらいの扱いでしょうか」(50代会社役員)

ーどうしてそんなに扱いが小さいのでしょうか。
「北朝鮮の脅威っていったって、あそこはいつも挑発威嚇行為をしているじゃないですか。昔は本気で戦争を再開する可能性が今よりも高かったですけど、今はその当時ほど条件が整っていませんからね」(50代会社役員)

町に出て様子を見てみましょう


ソウル駅前です。車の流れも人の流れもいつも通り過ぎて、緊張感のかけらもありません。

地下鉄では車両によってはニュースなどを流していますが、そのニュースでも流れているのは大統領選挙の話題です。

各候補に対して対北対策についての質問や討論などはありますが、特に今の状況が緊張しているからという感じではなく、あくまでも大統領になったらどんな政策をするのかという話の1つとして聞いているような論調でした。

週末、ソウル駅前はすごい人出。赤い服を着た人とか、韓国の国旗を持った人がたくさん集まっていました。何事かと思って近づいてみると……

大統領候補の1人、ホン・ジュンピョさんの選挙演説でした。北朝鮮が攻めてくるぞ~、的な緊張感なんて全く感じられません。日本側の報道から聞いた情報がなければ緊張が走っている時期だなんて考えられないくらいです。

下町のおじさんたち。日の高いうちから屋台で友人たちと一杯やっています。なんてことない日常の風景。のんびりした時間が流れます。

こちらは、観光地としても知られている「トンイン市場」のお弁当スペースです。市場の中で売られているお惣菜を詰めて作ったオリジナル弁当を楽しめるとあって、地元の人のみならず外国人観光客や、地元じゃない韓国人観光客にも人気の市場です。

こちらもいつも通りのにぎわいです。食堂スペースは順番待ちができるほどの賑わいで、戦争前夜的な買い占めもパニックも、その兆候すら見られませんでした。

気になる在韓日本人社会は?

さて、そんな中に住んでいる在韓日本人たちはどうなっているでしょうか。韓国社会と日本の家族・友人を通して日本社会のはざまで生活している在韓日本人はちょっと複雑なようです。

日本大使館からは

在韓日本人向けに在韓国日本大使館はメーリングリストを使って安全情報などを提供しています。

去年暮れからのろうそく集会については、毎週1回、多い時は2回メールが流れてきて、平和的な集会ではあるものの大規模なので何かの拍子に危険な状況になるかもしれず、事故にも遭いやすくなるので週末はできるだけ近づかないようになどという連絡が来ていました。

その大使館からも、今回の北朝鮮とアメリカの緊張についてはメールが1回来たっきり。それも、「今後事態が急展開することはないともいえないのでニュースなどをよくチェックしてください」というだけの、拍子抜けするくらいの内容でした。緊急度の低いテーマなのか、それっきりメールも来ていません。

駐在員さんたちは

日本人駐在員さんのところが今のところ一番緊張が高まっているように思えます。私の知り合いを含め、すでに何軒かの駐在員家庭が帰国しています。駐在員さん自身は残っているものの家族は急いで日本に戻るようにという本社通達があったと、緊急帰国になった家庭の話題がちらほらと聞こえます。

留学生たちは

韓国の大学などに留学している留学生のところにも、事態を心配した親御さんやお友達から帰国を促す連絡が入っているという話がよく聞こえてきます。帰ったほうがいいだろうかという相談を持ち掛けられることもありますし、相談を持ち掛けられたという在還暦の長い友人たちもたくさんいます。

ただし、いまは韓国の大学の中間試験どき。帰国を選んで日本に戻った留学生さんもいるようですが、「単位を落としてしまうよ」と困っている留学生もいるようです。

語学留学生の場合は、中間試験時ではないのでもう少し帰国を選んだ人が多いと聞いています。また、これから留学に来るつもりだった留学予定者たちのキャンセルは相次いでいるようです。

結婚移民たちは

結婚移民。韓国の人と結婚して、こちらに生活の基盤のある人たちのことです。このカテゴリーの人たちは、韓国生活歴が長く韓国語も堪能で韓国側からの情報が多い人たちです。

彼らは、こういう南北緊張を何回も経験しているからか、今回の事態についても静観しているようです。「また北が騒いでいるだけでしょ?」くらいの冷めたスタンスの方が多かったです。

2017年6月の近況

6月の近況のご報告です。

選挙がらみの動きも落ち着き、“なんの変哲も無い日常”に戻ったようなソウルです。

友人と、北朝鮮料理店で北方地方の料理を楽しんでいたら、お店のテレビからは南北会談のニュースが流れていました。私たちのテーブルの隣では思い出話などをしながら北朝鮮地方の鍋をつついていました。

2017年10月の近況

日系の駐在員:春に一時帰国させていた家族たちも韓国に戻り、日本人学校も通常通り授業を行っています。

米国大使館:韓国の人が韓国政府の発表以上に信頼する米国大使館の動きですが、在韓アメリカ人に韓国国内に投資している財産を引き上げるように言ったといううわさが流れています。ただ、市場が混乱しているわけではないところを見ると、ごく一部のうわさ程度のものとみられます。また、大使館職員からも直接差し迫って危険な状態ではないとのことでした。

ソウル市民:ソウル市民のもっぱらの関心は、日々の生活です。保守系の新聞で報じられるのは、文政権の行き過ぎた「過去の清算」を批判する記事、リベラル系の新聞では、「ろうそく集会(朴大統領の退陣要求でも)」から1年の節目に関する記事が中心になっています。北朝鮮や日本など対外的な問題に関する関心は高くないようです。

「安全不感症」という言葉が韓国にはあります。対北についても対日感情についても、ほとんどの韓国人には関心のないことなんだなぁと感じる日々です。

この記事を書いた人

エナ

エナライター / エナツアー主催

横浜出身のソウルっ子。2000年から2002年、ワーホリ滞在。その後横浜での10年間を経て2011年、再度渡韓。本業は日本語教師。ソウルの町歩きが大好きなネイリスト。ソウルの博物館、市場が主な生息地。普通の町を普通じゃなく感じさせるエナツアーなるものを企画していました。最近は日本家屋の残る町にはまり気味。

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