半島は緊張状態にあるだとか、反日・嫌韓感情が高まっているだとか、韓国旅行もためらってしまうという方も多いことでしょう。
しかし、この状況の中であえて今、韓国に韓国語を学ぶために留学している人がいます。今日は、そのような20代の語学留学生を3名ご紹介したいと思います。
親切のリレーに加わりたい
お名前:辻和真(つじ・かずま)さん
出身:大阪府吹田市
留学しているところ:韓国外国語大学校
留学している期間:2017年3月から2017年12月(予定)
留学生の姿に刺激を受けて、自分も
-日本ではどんなことをしていらっしゃいましたか。
大学生です。大学4年生なんですけど、休学して韓国に来ました。
-留学しようと思ったきっかけを教えてください。
大学1年生まで特に韓国には興味がなかったんです。入った大学で日韓交流パーティーみたいなものがあって、誘われて行ってみました。その時にやった韓国伝統遊びが面白かったな~と思いました。
その後、大学の付属の語学研修施設に来る語学留学性のお世話やお手伝いをするボランティアに登録し、いろんな留学生たちに会いました。中国人が一番多かったですけど、韓国人も、ほかの国から来た学生もいました。それぞれが、就職なり、進学なり自分なりの目標に向かって一生懸命がんばっている姿を見て刺激を受けました。
-この状況の中で韓国に来ることに抵抗はありませんでしたか。
それはなかったですね。だって韓国から留学生が来ているのだから、僕が韓国に行けないわけはないだろうと(笑)。両親は……そもそも母が韓流好きだったので、そこは楽でしたね。
ただ、専攻が英語なのに韓国留学というところで「なんで?」言われました。だから、頑張って1人で勉強して、韓国語の検定試験に合格したりして。そしたら、「和真の留学したいは本気なんだ」ってわかってもらえました。
-韓国生活、大変なことはありませんでしたか。
日本人だからということで差別されたり嫌がらせにあったりしたことはありません。どちらかというと生活スキルとか、日本についての知識の少なさに歯がゆい思いをすることのほうが多いですね。
こちらで、一生懸命日本語や日本文化を勉強している学生さんたちと交流したりすると、日本のことについて色々聞かれるんです。伝統的なものも、アニメのことも。でも、答えられないことがよくあって。もっと勉強しておけばよかったなと思います。
語学を通じて人助けをしたい
-今後の予定について教えてもらえますか。
帰ったらすぐ就活します。僕は、語学学校のスタッフをやりたいんです。僕の原点は日本に留学してきたいろんな国の留学生で、外国語を学んでみたい、留学してみたいと思ったのは彼らのおかげだし、彼らを助けたいというのが第一歩だし。
だから、学んだ韓国語で日本にいる外国人を助けたいという気持ちが大きいんです。それから、僕のように、外国語を勉強したいという日本人を先輩として助けたいという気持ちもあるし……。そういう思いを持った人をサポートしていけたらいいなと思っています。
やってみなければわからない。とにかく行動あるのみ
お名前:なつめさん
出身:愛知県
留学しているところ:梨花女子大学校
留学している期間:2017年6月から2018年5月(予定)
韓国のイメージは「戦後の日本」だった
-韓国語や韓国に興味を持ったきっかけはドラマですか。
それが、全然韓流ドラマとかアイドルとかに興味なくて……。日本にいたときやっていた仕事で韓国の方と仕事したことは何回かあったんですけど、その時も全く興味なかったんです。
進学のために名古屋に来てからずっと1人暮らしで、就職して何年かしたとき少し時間ができたんですよね。それで何か習い事でもしようかなと思ったんです。近所にあったのがたまたま韓国語の教室で、それでなんとなく韓国語を習い始めたのがきっかけです。(笑)
だから、韓国そのものに行ってみようという気すらなくて……。1年くらいたったころですかね。先生から「せっかく韓国語習っているし、1年たったから、腕試しに行ってみては?」といわれたのは。
-それで行ってみたんですか。
はい。ただ、メディアもそうですけど、周りの人も韓国についてはネガティブなイメージを強化するような話しかしてなくて。正直私も何も期待していないというか、むしろ「白黒写真で見る戦後の日本」みたいなのしか想像していなかったんです。
-戦後の日本イメージですか。
はい。建物とかぼろぼろで……的な? それが、来てみたらすごい大都会じゃないですか(笑)?それでびっくりしてしまって。面食らって……。私が考えていた韓国ってこんなんじゃなかった、なんて。
日本より進んでるところもたくさんあるじゃないですか。そこではじめて関心がわきました。それまではほんとに関心なかったんですけど……。来てみるって大事ですね。 あと、実際に韓国語をしゃべってみて「楽しい」って思って……。
イメージや期待は何度も裏切られる
-それが留学に来ようと思ったきっかけですか。
そうですね。それから頻繁に韓国に来てみて、韓国語を話してみて。それが楽しかったし、もっと話せるようになりたいと思ったので、1年、韓国に留学しようと。
-そうですか。韓国留学生活はイメージどおりでしたか。
それが……。ここでもイメージが裏切られました。最初のクラスの時、考えたらあたりまえなんですけど、韓国語のクラスには韓国人は先生以外いないんですよね。寮のルームメイトも日本人だったし……。
私は、韓国来たら韓国人に囲まれて韓国語漬けの日々が待ってるぞ!!と期待してきたのですが、現実は韓国人に会う機会なんてほとんどない。「これが留学生活?」とショックを受けました。それで、何とかして韓国人の友達を作ろうと。いろいろやりました。校内のチューターさんに友達になってほしいとお願いしたり。
そのあと、よく行く、個人経営の小さなカフェの店員さんに話しかけてみたり。そのカフェは、経営者のほかは、責任者とマネージャーさんとバイトさんが1人という小規模なカフェだったので、今では全員と仲良くなって週に2回くらいは通っているんです。常連さんたちとも仲良くなりました。
ソウルに住んでいてもイケメンはあまりいない。
-やっとイメージ通りの留学生活になったようですね。
そうそう。イメージといえば。韓流好きな人からは「韓国ってイケメン多いんでしょ?」「韓国男子ってかっこいいでしょ」といわれるんですけど、実際住んでみると「そうでもないかな」って。
カフェは、江南にあるんですけどね。江南って、ほら、韓流の中心地みたいなところじゃないですか。どうも経営者さんは芸能人かそこに関係ある人らしいんです。で、そこに毎週何回も行くんですけどね。時々来る経営者はさすがに「スタイルいいなぁ」「頭小さいな」と思いますけど、正直「みんなが言うほどイケメンはいないぞ」って。
留学が終わったら……。
-留学後はどういう予定なんですか。
そうですね。今、そこを悩んでいます。「とにかく韓国語を上達したい」一心で来てしまいましたからね。韓国語はもっと磨きたいけど、韓国で働いてみたいなという気持ちもあるので、ワーホリをとって、少し働いてみようかなとも思っています。
「韓国人」になれというお義母さんから見える「日本式」
お名前:まゆさん
出身:北海道
留学しているところ:建国大学校
留学している期間:2017年9月から ? まで
韓国人にとっての「北朝鮮のミサイル」は私たちにとっての「震度3」
-どういうきっきかけで韓国に来ようと思ったんですか。
2年前夏。1か月の短期留学をしたんですよ。韓国というよりハングル文字がかわいくてなんとなく。その時も北朝鮮が暴れているときで、私も家族も心配はしていたんです。
-北朝鮮の脅威はその時も感じていたんですね。
印象にのこっている出来事があります。ある日、日本人の友達と食堂に入ったんです。その時、私たちすごく心配していたんですよ。北朝鮮ミサイル打つかな、やばいかなって。食堂のテレビからは北朝鮮のニュースが流れていて。
なのに、周りの韓国人たちがだれもテレビを見てないんですよ。なので、「うちらの震度3くらいなんだろうな」と友達と話して。だから「意外と大丈夫なんじゃないかな」とその時思ったんですよね。
「韓国人になれ」というお義母さん
-まゆさんは、いつまで韓国のご予定なのでしょうか。
ずっとですね。韓国人の彼と結婚するんで。
-あ、そうなんですか。おめでとうございます。
でも、お義母さんから「韓国語はもちろん、ちゃんと韓国人になってからじゃなきゃ結婚しちゃダメ」といわれて、今、花嫁修業中なんです。
-韓国人になってからじゃなきゃダメ……ですか。厳しいですね。
そういうわけで、お義母さんと彼と暮らしているんです。まずは韓国語からですね。
-そうなんですか。ということは、韓国料理を作ったり、キムチをつけたりするのもお義母さんに習いながらの生活なんでしょうか。
いえ、それが。お義母さんも忙しい人なので、韓国料理のレシピ本を渡されて「1人で勉強しなさい」って。なので、普段の食事の支度は私がやるんですが、もっぱら日本で作っていたものです。
韓国人の意外な食生活
-韓国料理じゃないといやだとか言われませんか。
それが、お義母さんのお母さん、おばあちゃんですけど。おばあちゃんが、ソウルの日本人の多いところに子供のころ住んでいたらしいんです。周りの友達も日本人ばかりで、日本人の学校に通って。
そんな人だったので、日本の料理もとても上手だったようです。そのおばあちゃんに育てられているので、お義母さんも、彼も日本の料理を食べなれているんです。だから毎日、日本の料理で大丈夫なんです。
-おばあちゃんが日本料理を日常的に作ってらした?
はい。あんみつとか……。お義母さん、そういう料理で育ったらしいです。おばあちゃん、数年前にお亡くなりになったんですけど、ご存命の時は、毎日字幕なしで日本の相撲中継を見て楽しんでいたり、海外渡航に制限があった時代にも何回も日本に来ていたみたいです。
生活全体がすごく日本的だったって言ってます。人付き合いにしてもどこか日本っぽかったらしいです。だから、なんか、一緒に生活していてもどこか日本っぽいなと思うことが多いです。
韓国ってこわい?
-とはいえ、いわゆる「反日の国」にこれからもずっと住むのは不安ありませんか。
最初の短期留学の前後で考えが変わりましたね。それまでは、やっぱり日本人だから、韓国に住んだらなんだかんだ嫌がらせされるかなと思っていたんです。ネットでの評判とかも見ていたから。悪口言われたり、ぽったくられたりするんだろうなぁと。
そういうことが全くなかったわけでもなくて、東大門市場で1回嫌な思いしたことはあるけど、それよりも「人があったかいな」というほうが強かったです。「困ってるの? 助けてあげるよ」って言ってくる人がたくさんいるんです。
友達の言葉を借りると「うっとおしいな」ってくらい。私にはこの暖かさが魅力的に感じて。人情味があるから、それに惹かれて、長く住みたいなと思ったのかなと思います。
三者三様-でもとりあえず体験してみて
大学の学びの延長の辻さん。社会人生活をリセットしてやってきたなつめさん。結婚永住を目指すまゆさん。それぞれのストーリーをご紹介しました。人に触れて興味を持つ人、韓国語に魅力を感じてやってきた人。
韓国に留学というと「情勢が不安定で危ないのに、韓流で浮かれて……」なんて言われたりもしますが、今日ご紹介した3名は韓流とは関係のないところで韓国に興味を持ち、自分なりの情報収集で情勢についても考慮したうえでやってきた方々でした。そして、留学経験の活かし方も三者三様になりそうです。
けれども、なつめさんのおっしゃるように、一度も韓国というものを見たことがないときにイメージしたものと、実際来てみたら印象が変わったという方は少なくないはずです。
語学留学に限らず、韓国には、長期留学生として、結婚して、韓国で起業して、ビジネスのためにしばらく滞在して、韓国の企業のスカウトを受けてなどなどいろんな日本人が住んでいます。
そんな人たちのストーリー1つ1つご紹介したいところですが、今日はこの辺で。