“おんせん県”と呼ばれる大分県でも、由布岳のふもとにある風光明媚な「由布院温泉」は人気の温泉地。今回訪れたのは、由布院温泉でも個性の異なる2軒の宿。「由布院別邸 風の森」は源泉掛け流しの離れ宿、「ENOWA YUFUIN」はファームを起点とした革新的なオーベルジュです。対照的な2つのラグジュアリー体験を紹介します。
心躍る由布院温泉へ

大分県由布市の由布院温泉は、同じ大分県の別府温泉に次ぐ全国2位の湧出量を誇る実力派の温泉地。ショッピングや食べ歩きのできる湯の坪街道や、冬の朝には朝霧で幻想的な佇まいとなる金鱗湖など人気のスポットがあり、季節を問わず多くの観光客が訪れます。

朝の金鱗湖
宿泊施設は多彩で、全室露天風呂付きの隠れ家的な宿も少なくありません。今回筆者は世界最大級のデジタルトラベルプラットフォーム・Booking.com(ブッキングドットコム)のプレスツアーで由布院温泉を訪れ、「由布院別邸 風の森」と「ENOWA YUFUIN」に宿泊しました。

観光客で賑わう湯の坪街道
2軒ともラグジュアリーで素晴らしい体験のできる宿ですが、印象は真逆といって良いほど違います。このギャップもまた心に刻まれる旅となりました。
全室露天風呂付き! 源泉掛け流しの離れ宿「由布院別邸 風の森」

「由布院別邸 風の森」はJR由布院駅から南へ徒歩約20分ほどの山手に建つ和モダンの宿。玄関のすぐ横で源泉が湧いていて、モクモクと湯けむりが上がっているのを見ると、温泉好きとしてはたまらない。

一歩中に足を踏み入れると渡り廊下の緑の鮮やかさが飛び込んできます。古民家風の黒い板壁や柱とのコントラストが美しい。
左手がフロントやロビーのある建物で、右手及び左奥に離れの客室が点在しています。敷地の広さはおよそ1200坪。全客室が離れで内湯と露天風呂付き。プライベートを重視した滞在が叶います。

ジュニアスイートの和洋室「すいれん」
私が泊まったのは、一番手前の「すいれん」のお部屋。まずお部屋の広さにびっくりさせられます。和洋室なので、畳もベッドもソファーもテーブルもあります。どこでくつろいだら良いか迷うほど。

迷った末に、ソファーで腰を落ち着けることに。ソファーの手触りも高級感があり、ほどよく沈み込んで体をホールドしてくれます。

ベッドサイドの棚には茶器。

質の良いティーカップも湯呑も揃えてありました。

コーヒーも豆から挽けます。

浴衣とパジャマの両方があるのも嬉しい。
なお、晴れていれば窓から由布岳がドーンと見えるのですが、到着日は少し雲が多く、くっきりとした由布岳を見るのは翌朝になってからでした。
自慢の美肌の湯は自家源泉

パウダールームのアメニティ。一番右は風の森源泉を濃縮した「温泉水ミスト」
さて、お待ちかねの温泉を紹介します。こちらのお宿は全室に内湯と露天風呂が付いています。もちろんこの「すいれん」のお部屋にも。

檜の内湯と岩風呂の露天風呂。私は肌に触れた時に柔らかみのある檜の浴槽が好きなのでこれはとても嬉しい。露天の岩風呂も風情があります。

お湯は自家源泉の単純温泉。pH9.0のアルカリ性というだけで、肌をクレンジングして綺麗にしてくれる働きが期待できるのですが、成分的にはあと少し濃度が濃ければナトリウム―塩化物・炭酸水素塩泉となる源泉で、炭酸イオンやメタケイ酸の成分も多く、とろみのあるツルツルとした感触は極上の肌触りを体感させてくれます。
ご主人いわく「このお湯が気に入ってリピートしてくれるお客さんも多いんだよ」と。

源泉は97度近い高温で湧いていますが、こちらをタンクで少し冷まし、70度台にしたところで少しずつ各お部屋のお風呂へ。チェックイン日の午後に入浴した時は、暑い日に嬉しいぬるめの温度でしたが、自由に源泉を足すこともできます。
午後から夜は体温程度の不感温浴でゆったりと湯あみし、翌朝は熱い源泉をたっぷりと足して鮮度を楽しみました。お部屋のプライベートなお風呂だからこそできる、究極の悦楽です。
「関あじの姿造り」にも感動!「由布院別邸 風の森」の夕食

夕食には「由布美人」など地元のお酒をあわせて
夕食はフロント棟の2階のお部屋でいただきました。和食をベースとする会席料理ですが、先付にホワイトアスパラのポタージュ、焼き物の一部に山桃ワイン煮、デザートに抹茶ティラミスと桃のムースなど、洋風の味わいも彩りを添えます。

アスパラ豆腐黄身酢や海老旨煮などを盛り合わせた前菜
季節を感じる地元食材に、丁寧な仕事の見てとれる目にも美しい盛り付け。一口ごとに感動を与えてくれるお料理の数々。

中でももっともインパクトがあったのは「関あじの姿造り」。関あじは大分県大分市の佐賀関で水揚げされるブランド鯵ですが、これをそのまま姿造りで提供する贅沢。鮮度が良く歯ごたえと甘みを感じるだけでなく、一尾まるまるお皿の上に乗っているので、頭の近くから尾の方まで繊細な味の違いも堪能できます。

台物で提供された「おおいた和牛」のすき煮鍋はとろけるような柔らかさ。
※お料理のメニューは季節やプランによって異なります。
由布岳を望む展望フリースペース

館内で、客室以外でゆったり過ごせるところといえば、フロント棟の一番奥にある「展望ラウンジ」がおすすめです。晴れていれば窓からは由布岳を独り占め。
午後の15:00〜22:00と朝の7:00〜10:00に開放されていて、お酒やおつまみも用意されています。夕食後の一杯をいただいてもいいし、朝の読書タイムにも使えます。

またこの「展望スペース」からは、源泉の立ち上る湯けむりもよく見えます。

郷土料理の団子汁や”りゅうきゅう”も並ぶ朝食

ゆっくり朝寝坊したいと思いつつ、夕食の美味しかった宿は、朝食も期待してしまいます。フロント棟の階段を上がり、支度の整えられたテーブル席へ。二段になった箱盛りの中には、小鉢、焼き魚、煮物など和のおかずが彩りよく並びます。

卓上で温める鍋の中は大分の郷土料理「団子汁」、小鉢の中には新鮮な切り身のお魚をタレに漬け込んだ「りゅうきゅう」も。

卓上のお釜で丁寧に炊きあげられたご飯は、お米の一粒一粒がふっくらと立って光ります。噛みしめるほどに甘みのある味わい。このご飯のために箱盛りのおかずと団子汁の鍋があるのでしょう。チェックアウトが名残惜しくなる、そんな朝食の時間でもあります。
「由布院別邸 風の森」は、どこか懐かしい古民家風でありながら、居心地の良さを追求した質の良い空間でのプライベートな滞在が叶いました。上質な和風の温泉旅館をお探しなら、間違いのないお宿だと感じます。自家源泉のお湯の良さも印象に残りました。
大分県由布市湯布院町川南371-1
電話:0977-84-2510
ファームから始まる「ENOWA YUFUIN」

「先にメニューありきではない、先に野菜ありきでメニューを組み立てる」
そう説明しながらENOWAファームを案内してくれたのは、「ENOWA YUFUIN」でエグゼクティブシェフを務めるチベット自治区出身のタシ・ジャムツォさん。ニューヨークのミシュラン星付きレストランで副料理長を務めたのちに由布院に移住してきた経歴の持ち主です。

エグゼクティブシェフのタシ・ジャムツォさん
「ENOWA YUFUIN」の自家農園である「ENOWAファーム」は、決して綺麗に定規で整えられた圃場ではありません。できるだけ自然の状態で野菜を育てているため、昆虫とも共存しているのです。また年間200種類以上の農作物を育てているため、ファームはまるで宝探しのよう。さまざまな種類の野菜、ハーブ、果物などがまるで植物園のように活き活きと生育しています。バジルひとつとっても、ミントバジル、ムラサキバジル、シナモンバジル、タイバジルといったい何種類あるんだか。それぞれに合った料理が異なります。

収穫したてのマイクロキュウリ
アート空間のような「ENOWA YUFUIN」

チェックイン手続きは館内のライブラリーで
まるで現代アートのような宿だ、「ENOWA YUFUIN」の最初の印象はそれでした。無国籍で、無機質さと温かさが同在しているような近未来的な空間にも思えます。

客室は離れのヴィラタイプとホテル棟のザ・ルームスなどがあり、私が泊まったのはザ・ルームス。海外のリゾートホテルの特別室のような、たっぷりとした広さとこだわり抜かれたデザインのお部屋でした。

お部屋備え付けのカップやカトラリー

パウダールームのアメニティも、一つ一つエグゼクティブシェフのタシさんがこの宿に合うものをセレクトしている。
客室に生花の飾られている宿は多いですが、こんな形で植物を取り入れているお部屋は初めて。

ベッドは窓を向いています。そして窓の外には露天風呂。
「ENOWA YUFUIN」の温泉

「ENOWA YUFUIN」は全19室、全てが露天風呂付き。プライベートな感覚で温泉に入れます。

お湯は敷地内で湧出する自家源泉で、64度弱の弱アルカリ性単純泉を湯雨竹(ゆめたけ)という温泉冷却装置で冷ましています。チェックイン時は少し熱めのお風呂に調整されていますが、自由に加水することができるので、好みの温度でゆっくり入れます。優しいとろみのある美肌の湯です。

露天風呂のある屋根付きの屋外空間は広々として、イスとテーブルが置かれているのが良い。

客室の冷蔵庫にはセレクトされたドリンクとともに、「ENOWA YUFUIN」オリジナルアイスが入っているので、お風呂上りにバスタオル巻きでこのアイスを食べるのも至福の時間です。ミルク感が強くザラッとした舌触りがたまらない。

なお、ヴィラタイプのお部屋は見学だけさせていただきましたが、ザ・ルームスより広いだけでなく、インフィニティプールが付いています。この景色をプールから独り占めできるのは本当にラグジュアリー。
五感で体感する「ENOWA YUFUIN」の夕食

「ENOWA YUFUIN」の驚きはまだまだ続きます。夕食のスタートは館内のレストラン「JIMGU」ではなく、なんとハーブガーデンの温室から始まります。
いったい何故温室に!?

温室の一角にテーブルがあり、そこに始めのお料理が運ばれてきました。まるで物語の一節のようです。野菜を収穫するように。手でそのまま食べるのも独特でした。カトラリーを使わないぶん、指先から伝わる食材の命を直に感じます。

不思議な趣向だと思いながら温室のテーブルで立ったまま2品ほどのアミューズをいただいて、そのあとレストランの席へ案内されました。

ここからが夕食の本番
安心安全かつ、こだわりも貫いたFARM TO TABLEの考えをさらにアップデート、ファームこそを起点とするFARM-DRIVENの精神を掲げて、野菜の生命力をそのままいただくような食体験。それこそが「ENOWA YUFUIN」の夕食でした。


開業当時から変わらないシグネチャーディッシュ、ただし使われる野菜はその時々でファームの旬のものを
お皿の上に描かれたアートのようなお料理、魚介類や肉類があっても、あくまでも主役は野菜。それもその日収穫されたものを見てから決まるのですから、こんな贅沢はありません。焼き立てのパンがまたとても美味しくて、ふわふわしながらまるで口の中で溶けていくよう。時間が経っても食べた味を思い出せる、そんなインパクトのある夕食でした。
専用カートで丘の上へ

敷地の広い「ENOWA YUFUIN」では、サウナやスパのある坂の上までは、スタッフに専用カートを運転してもらい移動します。これもなんだかアトラクションのようで楽しいですね。

まず「ENOWA リゾート スパ サガン」から紹介します。こちらのスパは2つのトリートメントルームを備えた天空のスパ。温泉を使った足浴スペースもあります。

そしてここでのトリートメントはまさに至福の極み。エステティシャンの肌に触れるタッチはまるで羽毛のように軽やかで、この素晴らしい時間を意識を保ったまま満喫したいという強い思いをあっさりと魔法のように包み込み、気が付いたときは終わりの時間でした。あまりにも夢のような体験でした。しかし肌はしっかり記憶していて、若返ったように思います。これもまたENOWAマジックなのでしょう。

薪ストーブを使った「Hill Top Sauna」は見学のみでしたが、広い窓からは雄大な景色を一望。こちらを貸切で使えるというだけで、わくわくするではありませんか。

実際の体験時はここに水が入ります。
水風呂がまた面白いんです。とても深くてびっくり。頭の先までしっかり冷やせそうです。ととのいイスから雲海が見られる日もあるそうですよ。
野菜とともに目覚める朝食

朝食も野菜たっぷり。主役はサラダといえるでしょう。
ドリンクは牛乳、林檎&ケール、オレンジの3種類ですが、この牛乳がまた忘れられない味。由布院塚原のクックヒルファームの低温殺菌牛乳です。

パンは3種類、卵料理はオムレツと目玉焼きから選びますが、選ぶ料理によって使う卵を変えるというこだわりっぷり。

デザートはラム・バナナのクレープ。熱いクレープの上にアイスがとろけてバナナと混ざり合います。

食後にガーデンを散策してみれば、ここにも様々なハーブが植えられていることに気づきます。ガーデンは癒やしの場であるとともに、やはり食材のファームの一部でもあるのです。
「ENOWA YUFUIN」は、ファームから始まり彩り豊かな野菜の生命力をまるごといただく驚きに満ち溢れた宿でした。とてもユニークで、ここでしかできない体験を提案してくれるラグジュアリーオーベルジュです。海外リゾートのような異国感もありました。
大分県由布市湯布院町川上 丸尾544
電話:予約センター 0120-770-655(受付時間 9:00-17:45)
由布院温泉の旅を終えて
今回のプレスツアーには、由布院を訪れる特別な理由がありました。
Booking.comが世界中の旅行者から寄せられた3億7,000万件を超える実際のクチコミをもとに、優れたホスピタリティを提供するパートナー施設を表彰する「Traveller Review Awards 2026」。その発表にあわせて選出された2026年の「日本で最も居心地の良い都市」10選に、由布市が4年連続選ばれたためです。
東京・大阪・京都といった定番の観光ルートではなく、地方の温泉地がこうして世界の旅行者から高く評価され続けているのは、由布院の宿一軒一軒が積み重ねてきたおもてなしの証といえるでしょう。今回の2軒の滞在は、その「居心地の良さ」の正体を確かめる旅でもありました。
最後に「由布院別邸 風の森」と「ENOWA YUFUIN」はそれぞれこんなタイプの人におすすめです。
由布院別邸 風の森がおすすめの人
- 静かな離れ宿で温泉を満喫したい
- 美肌の湯を客室露天風呂で楽しみたい
- 和の趣のある旅館が好き
ENOWA YUFUINがおすすめの人
- 食を目的に旅したい
- 普通の温泉旅館では物足りない
- 建築やデザインも楽しみたい
取材協力:ブッキングドットコム




