「海の京都」とも呼ばれる京都府の日本海側に、かつて鎮守府(海軍の拠点)が置かれた舞鶴市があります。
今も残る赤れんがの海軍関連施設跡、現役の護衛艦が寄港する舞鶴港、ユネスコ世界記憶遺産の登録資料を展示する舞鶴引揚記念館など、この記事では東舞鶴(舞鶴東地区)の見どころをたっぷりご紹介します。まだ知らなかった京都がきっとここにあります。
東舞鶴駅から徒歩約12分の北吸トンネル

JR東舞鶴駅
旅の始まりはJR東舞鶴駅から。
京都駅発の特急まいづるの終点がこの駅。歩き始めると「三笠通り」という通りの名前が目につくかもしれません。碁盤の目状に作られた通りは、南北は一条通、二条通と数えますが、東西は「三笠」「初瀬」「敷島」など戦艦名が付けられているのです。

さらに歩みを進めるとカーブした歩道のタイルの色が異なる道に出ます。これはかつて鉄道(軍港引き込み線)が通っていた跡。やがて見えてくるれんが造りの北吸トンネルも鉄道のために作られたトンネルです。

北吸トンネル
北吸トンネルは車は通行できませんが、歩行者と自転車は通れます。強固なイギリス積みのれんがのトンネルは今も地元の生活道路として使われています。国の登録有形文化財にして、日本遺産を構成する文化財にも認定されています。

●北吸トンネル
京都府舞鶴市北吸740
東舞鶴で外せない観光名所「舞鶴赤れんがパーク」

北吸トンネルを潜り、線路跡をたどり、さらに進んでいくと舞鶴市役所に隣接する「舞鶴赤れんがパーク」に到着します。東舞鶴駅からここまで徒歩約20分程度。
ここは赤れんが造りの元海軍倉庫が12棟残るフォトジェニックなエリア。映画「わたしの幸せな結婚」や「アルキメデスの大戦」のロケにも使われました。

まず撮影場所として人気があるのは、#MAIZURUモニュメントの前。
次に芝生広場側から赤れんが3号棟と4号棟を左右に見るスポット。この2ヵ所は押さえておきたいところです。

夜にはライトアップされて幻想的な雰囲気になるので、デートスポットとしてもおすすめです。

赤れんが1号棟は「赤れんが博物館」として他の棟とは少し離れて建っています。ここはあとで詳しく紹介するとして、先に市政記念館としてアート・展示スペースに使われている2号棟と、まいづる知恵蔵として使われている3号棟をちょっと見てみましょう。

2号棟
2号棟1階はGW前後に、舞鶴名物の海軍カレーが食べられる新しいカフェがオープンする予定です。
2階に上がると「舞鶴市のあゆみ」展示コーナー。見学は無料です。
舞鶴市ゆかりのオリンピック選手の展示コーナーもありますが、注目したいのは発掘された縄文丸木舟の展示。当時こんな小さな船で危険を冒して外洋へ漕ぎだした人たちがいることに驚きを隠せません。

縄文丸木舟の展示
3号棟は1階がお土産ショップと日本遺産の展示コーナー。人気のお土産はやはり海軍カレー。レトルトタイプなら自宅でもお手軽に当時の味が再現できます。

3号棟の2階は有料ですが、お洒落なコワーキングスペースになっています。受付でビジター料金を払えば旅行者でも利用できるので、休憩スポットとしても◎。コーヒーも自由に飲めるし、何より歴史を感じる文化財の赤れんが倉庫で足を休めることができるのですから、贅沢感たっぷり。

最後に、少し離れた1号棟の「舞鶴市立赤れんが博物館」を紹介します。こちらは元魚雷庫を活用したミュージアムで、世界で唯一のれんがをテーマとした博物館です。

館内は世界のれんが、ホフマン窯コーナー、日本のれんがの歩み、舞鶴市とれんがなどのコーナーに分かれており、最初に注目したいのは古今東西のれんがを展示する世界のれんがコーナーです。
エジプト、メソポタミア、古代中国など古代文明でもれんがは大きな役割を果たしてきました。また赤れんが博物館で紹介しているヨーロッパのれんがの歴史はイタリアから始まっています。

また日本のれんが製造の歴史も見逃せません。かつて舞鶴でも多くのれんがが製造されました。12本の煙突を持っていた舞鶴のホフマン窯の模型も展示されています。

「歴史を証言するれんが」コーナーでは、戦争と平和に因んだれんがが展示されており、こちらも必見。
京都府舞鶴市北吸1039-2
電話:0773-66-1096
こんなに近くていいの!? 海軍ゆかりの港めぐり遊覧船

さて、舞鶴市立赤れんが博物館を出ると、すぐ目の前が「海軍ゆかりの港めぐり遊覧船」乗り場です。所要時間は約30分。次はこのクルーズに参加してみましょう!
明治時代に海軍の鎮守府が置かれた舞鶴・横須賀・呉・佐世保の4つの港のうち、舞鶴は唯一日本海に面しており、唯一現在米軍基地がないという環境。
特に米軍の施設がないことから他の港の遊覧船と比較して、ぐっと艦艇に近づくことができるのが最大の魅力です。現在のところ停泊しているすべての艦艇が、日本国所有ですから。

出航してすぐに停泊する艦艇が見えてくる
さらにクルーズ船が出航してすぐに始まる愉快な……そして一部お寒いダジャレ満載の案内人の口上は、限られた遊覧時間を有意義に思い出深いものにしてくれます。

哨戒艇
まずは艦艇が数多く停泊している北吸係留所をざっと眺め、海上自衛隊舞鶴教育隊やクレインブリッジ、海上自衛隊舞鶴航空基地などの近くへ。

クレインブリッジ
そして最後のクライマックスに、もう一度北吸係留所を通り、今度こそじっくりと遊覧してくれます。
あれがステルス艦、あれが哨戒艇など、流れるような説明を聞いていると、今まで艦艇などに興味がなかった人でも楽しめること請け合いです。

ぎっしりと艦艇が並ぶ北吸係留所


北吸係留所は劇場版「名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)」の舞台ともなったスポット。今やファンの方にも欠かせない聖地です。
※停泊している艦艇の数や種類は、行くまでわかりません。
京都府舞鶴市北吸
電話:090-5978-8711
高台のお洒落お土産スポットatick、海の見える絶景サウナも

舞鶴赤れんがパークを離れる前に、2024年9月にオープンしたatickに寄ってみましょう。ここは舞鶴港を見下ろす高台にある、お土産、アパレルショップ、カフェなどが入ったお洒落なスポット。

atick内のカフェ「GOOD SOUND COFFEE 舞鶴赤れんがパーク店」
デザインにも凝ったこだわりあるお土産が多いので、わざわざ立ち寄ってみる価値ありです。

またここには「海の見える絶景サウナ」という、名前そのまんまなサウナ施設もあります。しかし見えるのは海だけじゃない、運が良ければ港を出入りする海自の艦艇まで見えるかも! 実はなかなかレアな絶景サウナなのです。ガチのサウナ―さんでなくても楽しめます。
京都府舞鶴市北吸1049-1
電話:0773-77-5678
忘れてはならない記憶を紡ぐ「舞鶴引揚記念館」

かつて「岸壁の母」という歌や映画がヒットしました。旧ソ連からの引揚船が着くたびに息子の姿を探して桟橋で待つ母をモデルにした作品です。
引揚船とは、第二次世界大戦終結後に海外に残された日本人、およそ660万人以上といわれる人々を帰国させた船です。当初に指定された全国10港の引揚港の中で、13年の長きにわたり、一番最後まで引揚船を受け入れていたのが舞鶴でした。

タイムトンネルを潜るように展示室へ
「舞鶴引揚記念館」に収蔵されているシベリア抑留や引き揚げに関する資料570点が、ユネスコ世界記憶遺産に登録されています。

ユネスコの「世界記憶遺産」に登録されている「白樺日誌」
第二次世界大戦については義務教育でも時間を割いて学びますが、終戦後に行われたシベリア抑留の過酷さや理不尽さ、引き揚げが叶うまでに費やされた時間の長さなどはこれまで知る機会のなかった人も多いと思います。

「舞鶴引揚記念館」では、残っている写真、文書、再現された抑留生活体験室などから、当時の人々の生活や思いを垣間見ることができます。
舞鶴の観光スポットの中では非常に重いところですが、ぜひ多くの方に足を運んでもらいたいと思います。
京都府舞鶴市字平1584
電話:0773-68-0836
ディナーにおすすめ、明治時代にタイムスリップ気分のレストラン「松栄館」

東舞鶴観光で、最後に紹介するのは東郷平八郎ゆかりのレストラン「松栄館」。築100年以上といわれる木造2階建て和洋折衷の建物は、訪問者をそのまま明治時代にいざなうようです。
映画「飢餓海峡」「海賊とよばれた男」「日本のいちばん長い日」のロケに使われたスポットでもあります。

そして建物以上に注目したいのはメニュー。
舞鶴市内の海上自衛隊施設は、旧海軍の料理教科書「海軍割烹術参考書」原本などを所蔵しており、こちらのレシピをとことんまでこだわりぬいて再現したお料理が、この「松栄館」で食べられるのです。

舞鶴のお土産としても販売されている復刻版の海軍レシピ集。「松栄館」の名物メニューは右の「海軍割烹術参考書」のレシピを再現

海軍カレイライス

海軍肉じゃが
当時の味を当時の風情が残るレストランで。これ以上の贅沢があるでしょうか!なお、「松栄館」2階に舞鶴鎮守府に関する資料などのミニ展示室があるので、食後はぜひ見学してみてください。

●松栄館
京都府舞鶴市浜18
電話:0773-65-5007
東舞鶴観光のまとめとして
今も鎮守府時代の海軍の名残の残る町、赤れんがの風景や港めぐりのクルーズ、舞鶴引揚記念館まで、東舞鶴の見どころをたっぷり紹介させていただきました。
このほかにも、近畿百景第1位に選ばれた「五老スカイタワー」からの絶景、東郷邸や海軍記念館といった日本遺産の文化財スポットなど、まだまだ紹介しきれない見どころがたくさん残っています。
また記事では「海軍カレー」が食べられるお店を2軒紹介しましたが、昨今では現役海上自衛隊のレシピを使った16種類の「まいづる海自カレー」や、海自に負けるなと登場した4種類の「まいづる海保カレー」などの新名物も続々誕生。それぞれ、舞鶴市内で提供されています。カレー巡りの舞鶴旅もいいかもしれません。
さらに東だけでなくレトロ銭湯やレトロ商店街などが残された西舞鶴(舞鶴西地区)も見逃せません。興味を持っていただけたら、ぜひ舞鶴にお出かけしてみてください。
取材協力:舞鶴市




