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    欧州各国でひたすらに写真映えする美しい図書館を探す
    アイルランド

    最近なにかと話題にあがる、新しい図書館のあり方。

    デザインとは。本とは。智とは……人間……富……生と死……そんな深遠なテーマを秘めた『図書館』ですが、世には千年近く前に建てられ、現在に至るまで愛され続けている図書館が存在しているのです。

    時に命より重く、人の心を捉えて離さない至宝『本』を収蔵する理想の図書館の形を探ってみましょう!

    ソクたびソクたび

    智は命 中世の宝物庫としての図書館


    チェコ・ストラホフ修道院 神学の間

    ヨーロッパで『図書館』と言えば、それは長らく修道院の事でした。

     

    ローマ帝国が滅びて以来、人々に知恵を授けるのは修道院の重要な役割となります。

     

    紙のない時代、製本はすさまじいコストが発生する作業でした。写本、製本作業は重労働。専門知識を要し、従事する修道士たちはしばしば失明し、寿命を縮めていたと言います。

     

    中世において『本』がいかに高価であったかは、古書を巡る殺人事件が題材の『薔薇の名前』やイギリスの貴書・リンデスファーンの祈祷書を死守する『ヴァイキング・サーガ』と言った映画に詳しいです。

    エバーバッハ修道院
    映画『薔薇の名前』のロケ地

    活版印刷が登場する16世紀まで、古書とは人の命より重く、金銀財宝と同価値を持つお宝だったのでした。

     

    そんな財宝扱いの古書ですから、保存は非常に厳重です。

     

    まず、窓ガラスのない時代ですので、雨風を避ける為に窓を大きく作る事はできません。かと言って蝋燭を室内に持ち込ませると、今度は煤で本が汚れてしまいます。

     

    こういった背景から、写本室・閲覧室は別途作る事になります。写本の劣化を防ぐ事がまず第一、「書庫」は多少暗い状態でも構わないのです。

     

    しかし、「本」は宝!財宝を見せつけたい!修道院の富を見てくれ!!という人の欲望は消せません。折角の財宝を薄暗い中に収めていては、「映え」ないじゃないですか!!

     

    といった心境からか、裕福な修道院の書庫は大変にデコデコでデコラティブです。たとえ室内が暗くても、凝りに凝った内装、華やかな彫刻、美しい色彩は富を十分に見せ付けてくれます。


    哲学の間

    世界一美しい図書室の一つとして名高いのが、チェコのストラホフ修道院の図書室。

     

    12世紀に建てられ、「哲学の間」「神学の間」の2室が公開されています。

     

    光がなくても室内を美しく見せ付ける手法、現代にも学ぶ所がありそうですよね。

    進化する技術 硝子が彩るオシャレ図書館

    いよいよ16世紀、グーテンベルクにより印刷技術が確立されると、本は庶民に近くなりました。

    もう田舎の修道院に本を隠しておく必要は無くなったのです。

     

    更にはこの後、ヨーロッパでは宗教戦争とナポレオン戦争が勃発。各地の修道院は焼かれ、製本技術を持った修道士たちも居なくなりました。時代は変わったのです……。

     

    宗教的支配者たちに代わって智を求めたのは世俗の領主たち。図書館の形も新しくなります。


    オーストリア国立図書館

    18世紀に作られたオーストリア国立図書館は、富と保存性を両立した形。

     

    高い位置に窓があるので、採光性を持ちながら、書物に直射日光が当たる事はありません。

    現代でもこのタイプの図書館建築は少なくないのですが、ハプスブルク家の図書館は内装が尋常ではありません。

     

    全面に描かれた壁画、広い室内に起立する彫刻、芸術性にも凝っています。

    ザンクトガレン修道院
    ザンクトガレン修道院
    photo by ザンクトガレン修道院

    同じく18世紀に再建された、スイスのザンクトガレン修道院のバロック式図書館の美しさも見逃せません。

     

    収蔵品は中世からの貴書が中心ですが、明るい室内と豪華な内装の良い所どりです。

    ただし、カメラのフラッシュによる本の劣化が案じられる為、内部は写真撮影禁止となっています。

    読まれてこそ輝く本の価値 大学図書館の在り方

    この時代までの本は、超貴重な財宝であり、厳重に保管されていました。

    しかし、識字率が上がり、本の値段は下がり、実用的な面が重視されるようになります。

     

    次は使いやすい図書館の時代です。

    ボローニャ大学図書館
    ボローニャ大学図書館

     

    ヨーロッパの古い大学、イタリアのボローニャ大学やアイルランドのトリニティ大学図書館などは、中世の時代に建てられながら、数々の改良が加えられ、今でも学生たちが試験勉強に励む場所です。

     

    そのキモは、誰にでも目的の本が探しやすい分類法、日の明かりではなく電灯で照らされる事を前提とした明るい室内。

    トリニティ大学図書館
    トリニティ大学図書館

     

    こうした大学図書館の更なる特徴は、「まだ生きている」図書館である為に、次々と最新技術でのリフォームを繰り返している点。

    大英博物館
    大英博物館
    また、大英博物館の図書室などは、フラッシュを焚いた写真撮影さえ可能になっています。

     

    これは、フラッシュの強烈な光をも無効化する特殊なガラスで本を保護してるためです。

     

    美しい図書館は、魅了された我々、観光客も立派な資金源にするのです。

     

    どうなるこれからの新しい図書館

    シュトゥットガルド市立図書館
    シュトゥットガルト市立図書館
    photo by シュトゥットガルト市立図書館

     

    人々の関心を集める美しい図書館は、歴史的な場所が中心ですが、近年建てられたばかりの有名な図書館もあります。

     

    ドイツ・シュトゥットガルト市立図書館は、現代的な美しさで一躍有名になりました。

     

    外観はサイコロのようで、内部は大変に近未来的。

    機能的ですし、環境に配慮されており、新しい時代の図書館と言えます。

    各国、美しい図書館の形を紹介しましたが、理想の形は見つかりましたでしょうか。

     

    明るく風通しの良い図書館にすると本が傷みますが、書架に鍵が掛かっている修道院型の図書館は使いにくいもの。理想を巡る試行錯誤、そして本に対する愛と情熱が、数々の図書館を美しく彩っているのかも知れません。

    失われた図書館の形

    人は歴史から学ぶと言いますが、知識が失われてしまう事も少なくありません。ローマ帝国一と讃えられた、トルコ・エフェソスの図書館も今は廃墟です。
    最古の図書館は、焼失したエジプト・アレクサンドリアの図書館だと言われています。一体どんな立派な建築物だったのか、ロマンが尽きませんね。
    失われた図書館の形

    この記事を書いた人

    華酉

    華酉ライター/中世マニア

    北海道生まれドイツ暮らし。大学では歯学と宗教学を修めた為、いつ中世ヨーロッパに飛ばされても活躍できる逸材です。その特性を活かし、日系企業ドイツ支店のお堅い正社員として貿易に励んでいます。
    訪れた国は30ヵ国以上、時の権力者に城を陥落されて北海道に逃げ延びたご先祖様の無念を晴らす為、より強い城を求めて各国を放浪中。いつ剣と弓の時代が訪れても良いように、皆様にも選りすぐりの歴史情報をお届けします。

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