アイルランドの国宝である『ケルズの書』は、豪華な装飾とケルト文化が色濃く残された貴重な本です。
アイルランドの首都・ダブリンのトリニティーカレッジでは、パネル展示の他、半年に一度入れ替わる現物が展示されています!
『ケルズの書』とは?
8〜9世紀頃に製作された世界で最も美しい本と称されている『ケルズの書』(英名:The Book of Kells)は、豪華な装飾が施された4つの福音書、つまり、聖書の手写本です。
「ダロウの書」、「リンディスファーンの福音書」とともに3大ケルト装飾写本の1つとされており、中世美術の代表的な作品です。
文字としてはラテン語で描かれていますが、言霊を信じていたケルト社会では、文字にすると言霊は失われてしまうと考えられていました。
そのため、文字の代わりにケルト文化の特徴である渦文やわらび手文、人物、動物などによる装飾文字やページ一面に複数の色を用いた鮮やかな挿絵によって物語が描かれています。
縦約33cm、横約24cmの中に、福音書の著者たちの肖像や、その象徴であるライオン、牛、ワシ、キリストの一生の3つの場面などが描かれています。
展示物は写真撮影禁止なので、購入した本の表紙で雰囲気を感じてください。
所蔵しているのは世界最大規模の研究図書館・トリニティ・カレッジ図書館
『ケルズの書』は、ダブリンにあるトリニティ・カレッジが所蔵しており、世界中から観光客が訪れています。世界最大の研究図書館の1つで、8箇所ある建物の中には約300万の蔵書が保管されています。
2階部分の窓は長方形ですが、1階部分は長方形ではなく上部がアーチを描いています。
こちらは、最初窓がなかったのです。窓のない1階部分に蔵書が保管されていましたが、水害などを恐れて蔵書を全て2階に移し、後から窓をつけたそうです。
開放されているのは、3つのエリアです。現在は1階に売店、「闇と照らす明かり」(展示)、宝庫(『ケルズの書』)があり、2階に長部屋です。
日本語のパンフレットもあります。
現物展示の部屋は混雑しており、時間をかけて見学されている方がほとんどです。しかし、時間が経てば交代してくれますので一番前が空くまで待つことをお勧めします。本としては大きいとは言っても人の合間から見るには小さいので……。
壁一面にも英語で解説が書かれています。
Long Room(長部屋)
本好きであれば自宅の一角をいつか書斎にしたいと夢見ると思いますが、この長部屋は圧巻です。通路を挟んで本棚に隙間なく蔵書が納められています。
長部屋では、フラッシュをたかなければ撮影が許可されています。その他のエリアでは禁止されています。
この書架の柱には、アルファベットが振られています。通路を挟んで、Aの柱の正面にはAA、Bの柱の正面にはBBのように対になっています。
また、本棚にもアルファベットが振られており、こちらもAの段の正面にはAA、Bの段の正面にはBBのように対になっています。
在庫を探す際には、「Dの柱の中のKKの棚」のように割り振りされた場所を探すそうです。ちなみに、本の並びは軽いものが上、重いものが下と決まっています。
在学生は1回につき1冊貸し出しが可能になっています。一般の人でも借りることはできるそうですが、教授の推薦状のようなものが必要で借りるには労力を要します。
メモを取ることは可能ですが、ボールペンは不可で鉛筆のみとなっています。大切な蔵書に消せないインクが付着しないように細心の注意が払われています。
部屋の両側には、大理石で作られた胸像が置いてあります。こちらの胸像は、数学者・物理学者として有名なハミルトンです。他にも、トリニティカレッジの卒業生などの胸像が並んでいます。
さらに、アイルランドのハープの中で最も古いハープも展示されています。全面ガラス張りの展示のため、人が多い時には綺麗に撮影できませんでした。
アイルランド発行の硬貨にはハープが刻まれています。
黒ビールで有名なGUINNESSが先に社章としてこのハープを使用したため、ハープの向きが表から見たハープと裏から見たハープになっています。