世界自然遺産に登録されている北海道道東に位置する知床半島。美しい自然と豊かな生態系が魅力の知床を、小型ボートに乗ってめぐるクルーズに参加してきました。目の前で野生のヒグマの姿も見ることができた、迫力のクルーズの様子を紹介します。
知床半島の魅力とは
北海道東部のオホーツク海の南端に突き出ている知床半島。北半球で流氷が接岸する南限にあるため、流氷が運んでくる豊富な栄養分が海と陸の独特な生態系を育み、絶滅危惧種を含む多くの動物が生息しています。2005年7月には、世界自然遺産に登録されました。
また、半島の中央には標高1,000m以上の山々が連なる知床連山、まわりには原生林が広がり、神秘的な知床5湖、断崖絶壁から海へ落ちる滝など、他では見られない絶景も知床の魅力です。さらに、野趣あふれる秘湯やジビエや海鮮といったグルメも楽しめます。
オホーツク海に面している西側が斜里郡斜里町、根室海峡に面している東側が目梨郡羅臼町。網走方面から斜里町へと入ってくると、約28.1kmにも及ぶ「天へと続く道」を通ることができますよ。
知床岬クルーズヒグマウォッチング
知床半島は、羅臼、ウトロから先に道はありません。海岸線は絶壁となっているため歩くことは難しく、野生動物が多く住んでいる山の尾根では、ヒグマに遭遇する危険があります。そのため、知床半島の先端に一般人が入ることは難しく、また11月から4月の間は立ち入り禁止となっています。
そんな知床半島を観光するのに最適なのが、船上から知床の壮大な景色や野生動物を観察できるクルーズです。
クルーズ船には大型船と小型ボートがあり、大型船は揺れも少なく、広くきれいな船内でゆっくりとクルージングが楽しめます。一方、小型ボートは岸の近くまで寄れるので、迫力の景観が楽しめますが、波の影響を受けやすく揺れが大きいため、船酔いしやすい人は注意が必要です。
クルーズ船はウトロ港、羅臼港、相泊(あいどまり)漁港から出港しています。今回利用した「知床岬クルーズヒグマウォッチング」は相泊漁港発着で、羅臼とウトロ、両岸を観察できる唯一のクルーズです。
クルージング体験レポート
集合は相泊漁港
↑日本最北東突端地 ここから先は車の通る道はありません。
相泊漁港11時出港でしたので、集合は10時半。相泊漁港は道の駅や観光スポットのある羅臼町の中心から、さらに車で30分ほど走った先にあります。近くにお店などはないので、羅臼町のセイコーマートか「道の駅知床・らうす」で、飲物や軽食を購入していきましょう。なんせ4時間の長時間クルージングですからね。私はセイコーマートでおにぎりとお茶を買っていきました。
今回利用したクルーズの正式なコース名称は【北海道・知床・クルージング】知床の羆を目撃!ヒグマウォッチング・ルシャコース。1人15,000円、所要時間3.5~4時間です。
持ち物について
↑セイコーマートで買ったこの日の朝ご飯。別に昼食用のおにぎりも購入。
もらったメールには、持ち物は運動靴、飲み物、軽食、レインウェア、持ち帰り用袋となっていました。港の波打ち際での乗船になるので、運動靴も濡れても良い素材のものがベストです。
レインウエアは必須! かなり波をかぶりました。100均などのレインウエアで大丈夫です。ただし、なるべく長めのサイズのものを選びましょう。持ち帰り用袋は、濡れたレインコートなどを入れるのに必要です。
11時出発で4時間のクルーズとなるので、昼食用の軽食や、喉が渇いたとき用の飲み物も持っていきましょう。
あと、とても船が揺れるので、船に弱い人は乗り物酔いの薬を飲んでいった方が安心です。ハンパなく波が船内に入ってくるので防水性のカバンもあると安心です。特にカメラを持って乗る人はあとで泣きをみます。双眼鏡があると野生動物の観察に役立ちますよ。
英人丸に乗って
今回、乗船したのは漁師さんが漁で使用する小型ボート「英人丸(えいじんまる)」です。この日は12人乗りの第八十八英人丸。40年以上のベテラン漁師さんが運転してくれます。
クルーズは2名から催行。もしかして自分たちだけかなと思っていたら、結構参加者が多く全部で10人ほどでした。そして、みなさん凄いカメラを持参。まるでバズーカーのようなレンズがついたカメラを首から下げ、船に乗ってきます。そんな中、スマホ片手に参加したのは私です。
船は比較的穏やかに根室海峡を渡っていきます。様々な奇石や滝を眺め、シャチやイルカを探しながらクルーズを楽しみました。残念ながら、この日はシャチやイルカ、クジラの姿は見えず。シーカヤックを楽しんでいる人たちもいました。
↑知床半島の先端には知床灯台があります。
そして、知床半島の先端につくと突然波が高くなります。
↑オホーツク海側に入ると、断崖が目立つようになり白波もたつようになりました。
オホーツク海側は波が荒く、手すりにつかまっていないと椅子から転げ落ちそうになります。船が何度も1メートルくらい(に私は感じた)もちあがり、波の上から落ちるんですよ。波もバシャン!バシャン! と容赦なく打ち付けてきます。
めっちゃ、楽しい!めっちゃ楽しい!!
いや、これ、ほんと楽しすぎます! 私はブランコで酔うほど三半規管が弱く、ジェットコースターに乗れないくらいスピードと高いところが苦手なのですが、なぜか写真を撮るとなると怖さが吹っ飛んでしまう人間なのです。スマホをガッチリ持って写真を撮りまくりました。
↑穴間湾
しばらくすると船は穴間湾に到着。ここは小型ボートでなければ入ることができない「知床の青の洞窟」と呼ばれている場所です。神秘的な青い世界にしばしウットリ。
↑岸に野生のヒグマを発見!
ここでUターン。相泊漁港へと戻って行くのですが、船の人が指さす方向を見ると、なんと2頭の野生のヒグマがいました! 魚をもとめて川沿いに海まで降りてきたようです。船は岸の70メートル近くまで寄ってくれるので、かなり近い距離からヒグマを観察できました。ちなみに70メートルより先には近づいてはいけないことになっています。
船上からのクルーズは、かなりの高確率でヒグマに遭遇できていたのですが、最近はヒグマの駆除が行われているため、人間を恐れるようになって、あまり姿を見せなくなっているそうです。「今日は運が良かったですね」と言われました。
↑ガリガリに痩せたヒグマ
目の前で魚を捕ろうとしてたヒグマは、小さくてガリガリ。小熊なのかと思ったら、3歳くらいの大人の熊だそうです。ただ、今の状態だときっとこの冬は越せないだろうという話でした。動物園の熊とは違うガリガリの姿に、野生の厳しさを感じました。これから鮭の遡上シーズンとなるので(出かけたのは9月初頭)、たくさん鮭を食べて来年の春を迎えてほしいです。
↑崖を登った野生のヒグマ
その後、少し進んだところで、また2頭のヒグマと遭遇。こちらは崖を登るなどして元気でした。
結局、4頭のヒグマの姿を見て、相泊漁港へと戻りました。4時間は長いな〜と乗る前は思っていましたが、実際に乗るとあっという間! 退屈するヒマなどありませんでした。
唯一、トイレのないことが心配でしたが、帰りの根室海峡に入ると、途中の海岸に船を寄せることができるのでトイレも可能になります。ただ、本当に夢中になって見入ってしまうので、結局、誰もトイレにはいきませんでした。
知床ではヒグマによる悲しい事故も起きています。でも、それは人間が踏み込んではいけない場所に入ってしまうから。運転中ヒグマに遭遇しても、車から出たりせず、早急にその場を立ち去りましょう。知床峠では、カメラを持って森の中で何かを追いかけている人たちを見かけました。絶対に、ヒグマを見かけたからといって、追いかけて写真を撮るのはやめましょう。
安全に、近くでヒグマを観察できるのは、小型ボートによるクルーズだけです。知床半島の自然と野生動物に会えるクルーズは知床観光におすすめです。帰りは野生のエゾシカとキタキツネを見ました。
英人丸北海道目梨郡羅臼町礼文町324-1
0153-87-3779