銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

山形県を代表する人気温泉地、銀山温泉から車で一時間弱。義経伝説が息づく静かな湯の里・瀬見温泉に、まるで明治・大正・昭和からタイムスリップしてきたかのような異彩を放つ宿があります。その名も「喜至楼(きしろう)」。


現存する山形県内最古の木造宿とされる建物。一歩足を踏み入れれば、磨き込まれた造作や遊び心たっぷりの意匠が、かつての湯治文化の熱気を今に伝えてくれます。


「古い宿は少し不安」……そんな方にこそ、この宿を訪れてほしい。そこには、歴史という名の贅沢、身体の芯まで染み渡る極上美肌湯、そして心まで満たされる滋味深い手料理が待っていました。今回は、知られざる名宿「喜至楼」の魅力を、実体験をもとにじっくりと紐解きます。

旅の始まりは、JR瀬見温泉駅から

瀬見温泉へのアクセスは、車でも公共交通機関でも可能です。今回の訪問は1月の厳寒期。九州在住の筆者は雪道に慣れていないこともあり、公共交通機関で訪問することに。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

JR瀬見温泉駅


上画像の右側がJR瀬見温泉駅。無人駅です。注意して頂きたいのが、2026年1月現在、瀬見温泉駅を通過する陸羽東線(りくうとうせん)が、2024年の豪雨災害によって鳴子温泉駅~新庄駅間が不通になっていること。代わりにバスによる代行運転が行われています。筆者は仙台方面から鳴子温泉駅で下車。代行バスに乗り換えて、瀬見温泉駅まで行きました。

駅から徒歩でも10分程度で瀬見温泉街へ到着しますが、宿泊者は送迎も利用可能。宿泊の場合は事前に宿に問い合わせてみましょう。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

ブルーアワーの夜空に包まれた別館外観


駅から送迎車に乗って、今回の目的地「喜至楼」(きしろう)へ到着しました!
着いた時間は偶然ですが、「ブルーアワー」と呼ばれる日没直後の時間帯。空が深い蒼色(あおいろ)に染まり、降り積もった雪と街灯が神秘的な情景を醸し出しています。ちなみにこの画像は彩度を上げるなど、華美に見せかける加工は行っていません。明るさやシャドウなど最低限の微調整にとどめています。

「喜至楼」は筆者的に十数年ぶりの再訪でしたが、久しぶりに見たこの光景を見ただけで、グッと「喜至楼ワールド」へ引き込まれました。初めての方だったら、年月を重ねたものにしかない「リアル大正ロマン」にきっと感激・興奮するに違いありません!

明治~大正~昭和の趣が息づく! 圧巻の館内

その昔、源義経主従一行が平泉に落ちのびて行く途中、弁慶によって発見されたといわれる「瀬見温泉」。「喜至楼」は当時の面影を彷彿させるようなレトロ風情たっぷりの湯宿です。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

別館フロント


喜至楼は本館と別館に分かれており、非常に動線が長くアップダウンが多い建築物。エレベーターもありません。
2026年現在、宿泊のチェックインは、別館フロントにて行います。なお以前は日帰り入浴を実施していましたが、2026年1月現在、日帰り入浴不可です。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

本館エントランス


上画像は本館エントランス。本館側の玄関入口は閉鎖されていますが、椅子が一定間隔で配置され、現在はエントランスホールのような役割をしていました。ちなみに本館の玄関とその周辺は、山形県内に現存する最古の旅館建築物といわれています。しかし大切に管理・保管されており、貴重な建築遺産が最上に近い状態で今も残されていました。


銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

本館と別館の外観


前面道路側から見て、上画像の左側が別館、右側が本館になります。今回筆者は、より古い建築である本館を指定して予約。この日は3階の角部屋(112号室)に宿泊しました。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

本館112号の客室


客室は和室6帖のシンプルな造りですが、欄間の透かし彫りなどの繊細な意匠に、古き良き時代の遊び心を感じずにいられません。なお、トイレ・洗面は一旦廊下に出て共用のものを使用。とはいえ、それらが無いのは伝統的な湯治宿体験を楽しめるという意味で、筆者的にはむしろプラスとして捉えています。

※別館の一部客室ではトイレ付の部屋もあります。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり


また、外部に面する障子は一部上下にスライド可能な雪見障子であり、趣たっぷり。建付が悪い場合は、無理に開けないようにしましょう。またピンポイントで設けられた組子細工にも心癒されます。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

アメニティ類


また、部屋には浴衣・羽織・タオル・バスタオル・歯ブラシは完備。必要最低限のアメニティ類は揃っています。

極上美肌湯を満喫! 喜至楼の浴室を一挙紹介

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

ローマ式千人風呂・あたたまり湯の入口


続いては、喜至楼の浴室をご紹介しますね。浴室は本館に混浴風呂である「ローマ式千人風呂」・男女別浴室の「あたたまり湯」、別館に男女別浴室の「オランダ風呂」があり、すべての温泉は源泉かけ流しで提供されています。
なお、以前は貸切風呂が4室ありましが、2026年1月現在でいずれも使用されておりません。

ローマ式千人風呂

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

ローマ式千人風呂は、喜至楼で最も有名かつ代表的な浴室でしょう。中央に円柱が立ち、その周りを円形の湯船で囲う樣は風格たっぷり。さすがに千人は大げさかもしれませんが、数十人は一気に入浴可能なサイズでしょう。お湯は若干ぬるめ(体感で40~41度程度)に調整されており、ゆったりとした湯浴みを満喫できました。

ローマ式千人風呂は基本的に混浴ですが、女性専用時間帯:15時~19時、男性専用時間帯:19時~22時、を設定しています。混浴が苦手な方は、その時間帯がおすすめです。

あたたまり湯

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

あたたまり湯の男湯


あたたまり湯は、ローマ式千人風呂の隣にある男女別浴室。体感で42~43度程とややあつめに調整され、文字通り、あたたまるために最適な湯。個人の好みにもよりますが、筆者的にはローマ式千人風呂でゆったり風情を楽しんだ後に、体を洗ったり温まったりするのがおすすめです。

オランダ風呂

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

オランダ風呂の男湯


オランダ風呂は、別館にある男女別浴室です。湯温はローマ式千人風呂とあたたまり湯の中間位、41~42度程のジャスト適温。狭い浴室であるせいか、温泉通が“芒硝臭(ぼうしょうしゅう)”と呼ぶ泉質特有の甘い香りが浴室全体からしっかり感じ取れて、心身ともに癒されました。個人的には最も気に入った浴室です。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり


それでは、泉質解説もしますね。使用する源泉はどの浴室でも同一。以前は自家源泉を使用していたそうですが、現在は町営の源泉を宿に引き込んでいます。泉質名は「ナトリウム・カルシウム―塩化物・硫酸塩泉」。数値的には食塩と芒硝成分が拮抗していますが、体感的には芒硝泉(硫酸塩泉)の特徴を強く感じるもの。お湯の中で肌をさするとキシキシと硬質な感触ですが、同時に肌を包み込むような柔らかさを実感する上質湯。浴後は肌が一皮むけたかのように肌が潤い、極上美肌湯としても注目すべきでしょう。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

「ここ掘れワンワン」のオブジェ

各浴室内には、様々なオブジェや壁画などが飾られており、それらも見逃せません。例えば上画像は、ローマ式千人風呂の脱衣所に飾られたオブジェ。ここを掘ったら温泉が出てきた、というオチでしょうか? ユニークさに心和みます。

ふかし湯

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

ふかし湯


また、喜至楼では「ふかし湯」という温泉熱を利用した蒸し風呂があるのですが(床下に一部穴が開けられ、そこから噴き出す温泉蒸気を患部などに当てる)、設備不良のために現在は使用不可。宿に確認したところ、将来的には復旧予定とのことでした。

滋味深き手作りの夕食・朝食に感激!

喜至楼で実はあまり知られていないのが、料理の良さ。夕朝食共に地産食材をふんだんに取り入れた手作り料理を存分に楽しめます。

夕食

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

夕食の専用個室


夕食は「田舎の郷土料理プラン」をセレクト。別館にある専用個室で頂きました。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり


ボリュームたっぷりですが、とにかく手間暇かかっている&滋味深い&品数も豊富な印象。旬季節や食材の仕入れ等によりメニューは都度変わります。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

馬刺しの霜降り。噛んだ途端、舌にとろける旨味に感激

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

最上川産の鮎の塩焼き。アツアツ・カリカリで提供

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

豚のせいろ蒸し。サッパリとゴマダレで頂きました。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

地産のモズクガニのみそ鍋。蟹のダシ味が染み込んだ濃厚味


どれも手の込んだ料理ですが、脂っこい料理が少なく箸が進みます。最初に料理を見たときには“とても食べきれない御馳走!”といった印象でしたが、筆者はどちらかと言えば食が太い部類ということもあり、すんなり完食してしまいました(笑)

朝食

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

朝食会場


朝食は、1階フロント横にある大広間にて頂きます。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり


朝食は、山菜や漬物をふんだんに使ったヘルシー和食。玉子は源泉で茹でられた温泉玉子で、半熟のトロトロ。鮎の開きの焼き物があるのもテンションが上がります。ご飯と味噌汁はセルフで各自取ります。

ご飯(ライス)がとても美味しかったので、宿(喜至楼)の社長に話を伺ったところ、山形のブランド米である「はえぬき」を使用しているとのこと。ふっくらと炊き上がった癖の無いご飯で、筆者はご飯おかわり三杯頂きました

まとめ。銀山温泉と比較するとどう違うの!?

以上、瀬見温泉「喜至楼」の宿泊レビューをご紹介させて頂きました。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

館内がまるで古物の博物館のようです。


瀬見温泉「喜至楼」は、古さが否めない部分があるものの、ほぼ最上に近い状態で貴重な建築文化遺産が現存。歴史を積み重ねたものにしかない真の贅沢がココにあります。付近には大正ロマンな温泉街で注目される「銀山温泉」(山形県尾花沢市)がありますが、明治~大正~昭和の流れを令和の現代においても楽しめるという点においては銀山温泉と双璧といえる存在。むしろ、穴場感・静寂さ・コストパフォーマンスの高さの点においては、喜至楼がリードしているといっても決して過言では無いでしょう。

銀山温泉の隣にあった「リアル大正ロマン」! 瀬見温泉「喜至楼」で触れる、温泉文化遺産と手料理の温もり

現役の共同炊事場。湯治・素泊まり利用の際に利用されます。


とはいえ、銀山温泉の様な賑やかさ・華やかさはここにありません。しかし極上泉質の温泉や愛情たっぷりの手料理を満喫しながら、ゆったりとした温泉ステイを楽しみたい方には、この上なく理想に近い湯宿といえるに違いありません。

宿概要

●瀬見温泉「喜至楼」

所在地:山形県最上郡最上町大堀988

電話番号:0233-42-2011

アクセス:

【バス】JR瀬見温泉駅から徒歩約10分(約800m)

【車】東北自動車道 古川ICから車で約80分(約60km)。山形空港から車で約60分(約40km)