都内でも自然豊かな多摩川沿いはパワースポット密集地帯。なかでも多摩市聖蹟桜ヶ丘の多摩川沿いに鎮座する小野神社には、ここ数年脚光を浴びている「謎の女神様」が祀られています。その女神の名は「瀬織津比売命(せおりつひめのみこと)」。
宮司さんが唱える祝詞には登場するのに、なぜか古事記・日本書紀では触れられていないことから「抹消された」と都市伝説も・・・とはいえ決して不気味なことはなく、むしろ私たちから禍や穢れを流し清め、魂のリフレッシュをしてくださるありがたい女神様なのでご安心を!
謎の女神・瀬織津姫命とは?

まずは瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)について。宮司さんがご祈祷の冒頭で詠みあげる祝詞「大祓詞(おおはらえのことば)」に、四柱の祓戸大神の一柱として登場します。
「祓戸大神(はらえどのおおかみ)」と書いて字のごとく、浄化を司る神様です。また水や川とつながりが深いことから、白龍の化身とも考えられています。龍も水と縁の深い存在なので、長い信仰の歴史の中でつながりを持ったのでしょう。

今回ご紹介する多摩市の小野神社をはじめ、瀬織津姫命を祀った神社は全国に何か所もあるので、神様としても知名度が高くてもおかしくないところ。・・・しかし、瀬織津姫命の名は古事記・日本書紀では触れられていないのです。これって不思議ですよね。
そのため巷では「日本史から消された幻の女神」「異郷の神だったため大和朝廷から隠された神様」「天照大神の荒魂」などの説がささやかれており、ますます謎が深まるばかり。古い時代のことなので明確な記録があるわけではなく、現在に至るまで確証されていません。でもこのミステリアスさがより一層瀬織津姫命の人気を高めているのかもしれませんね。
【もう一つの瀬織津姫命の神社】
箱根の通しか知らない深澤弁財天にも瀬織津姫命が祀られています。
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創建は紀元前530年!? 小野神社の全貌に迫る

そんな謎の深い浄化の女神・瀬織津姫命が祀られる小野神社は、JR京王線聖蹟桜ヶ丘から徒歩10分ほどの多摩川沿いに鎮座しています。創建はなんと紀元前530年ですので、由緒ある神社だとわかります。
・主祭神
天ノ下春命(あめのしたはるのみこと):開墾の神様
瀬織津姫命(せおりつひめのみこと):河川の守り神、浄化開運の神様
近くを多摩川が流れているので、この二柱の神様を祀ったのだと想像に難くありません。
小野神社はその歴史の長さから、武蔵国の一宮の称号を持つ格の高い神社なのですが、敷居はまったく高くなく、近所の方々が気軽に境内に入り一礼して通り抜ける姿が印象的でした。ちなみに数年前には、あのゲッターズ飯田さんが「お参りすべき神社」として小野神社を推していたこともあるんですよ!

筆者は何度かお参りに訪れていますが、来るたびに人もまばらで静かにじっくりお参りできるのが気に入っています。だからこそ真剣に祈りを捧げたら、神様も親身になって耳を傾けてくださるような気がします。
●小野神社
東京都多摩市一の宮1-18-8
社務所:火水休み
小野神社の見どころ大公開

一の鳥居からまっすぐ社殿に向かって伸びる参道。境内はシンプルな構造ですが、歴史ある神社にふさわしく見どころも多いので、ここでは一つずつ解説していきますね。
隋神門の龍がすごい!

一の鳥居を入ってすぐ、隋神門では参拝客を吟味するかのように龍が睨みをきかせています。神社の龍を見るのが筆者のちょっとした楽しみなのですが、小野神社の龍が持つ迫力はトップクラス。

こちらの隋神門の彫刻は見れば見るほど精巧な造りで、数十年前に再建されたものだそう。

四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)、風神雷神が四方に彫られ、神社の守り神の風格を醸し出しています。目が金色というのも妙にリアルですよね。
社殿

参道の先にはまぶしいほどに鮮やかな赤い社殿が目に入ります。古来神社仏閣で用いられる朱赤は魔除けの色ですから、浄化の女神の住まいとしてこれ以上にふさわしい色はありません。

大きな多摩川が近いせいかお参りすると強めの風が吹きすぎます。これも瀬織津姫命のお清めのご利益でしょうか。

斜め脇から本殿を拝めるので、ここから再度お参りするのもオススメです。
ハート石

小野神社境内の縁結びパワースポットとして有名なのが、社殿に向かって右側の参道沿いの「ハート石」です。平たい石の左上にハート型のくぼみが自然にできたのだとか。石の脇には縁結び祈願の絵馬が並んでいるので、ご利益をいただけるご神石なのでしょう。
オールスターの摂社群

社殿に向かって左側に何やら小さな建物が・・・覗いてみると摂社群でした。
この摂社群が豪華な日本の神様のオールスターなのです。祀られている神様を挙げると、
伊勢神宮内宮・外宮、鹿島神社、三嶋神社、巌嶋神社
子安神社、方便神社、日代神社、愛宕神社、八坂神社
ほとんどが耳にしたことがある神社名。
小野神社に来れば、日本の神社が網羅できてしまうということですね!
小野神社のイチオシ! 繊細な画風の御朱印

もう一つの見どころは、社務所にあります。境内に看板も出ていますが、宮司のご家族がお描きになった御朱印が小野神社の魅力の一つ。優しく繊細なタッチのオリジナル御朱印は参拝客からも大人気だそうです。

ちなみに社務所に宮司さんが常駐しているわけではなく、火曜と水曜は原則お休み。(筆者が参拝したのもお休みの日でした)
そのほかの事情により不在になる場合もあるため、御朱印・お守りなど購入予定の方は、お参り前のお問い合わせをオススメします。
聖蹟桜ヶ丘駅からの道順は?
京王線聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩約10分とはいえ、地図アプリで見ると少し複雑な道順になってしまいます。
少し遠回りになりますがわかりやすい道を選ぶなら、下の画像の通り駅前のバス通りを通るルートがオススメです。

西口駅前の歩道橋を降りて川崎街道を八王子方面に歩き、「小野神社参道石碑」が見えたら右折。そのまま住宅街に入る形で小野神社通りを進むと、一の鳥居にたどりつけまよ。
【小野神社末社】用水路沿いにたたずむ咳止めの神様

最後に小野神社境内から5分ほどの距離にある、小さな末社をご紹介します。堰宮(せきみや)神社といい、多摩川に通じる用水路沿いに鎮座しているのですが、「せき」に合わせて咳止めのご利益をいただけると、通の間では知られています。

なんでも咳が出たら竹筒にお酒を入れてお参りすると良いそうです。

小さなお社が二つ。どちらも草木に埋もれている印象ですが、氏子の方がこまめに手入れをされていることがうかがえました。令和の時代も地域の方々に大事にされているお社です。

小野神社境内からの道順は上の画像の通りです。
お隣は一般の方の住居なので、お参りの際には静かに迷惑にならないようご注意を。

現代では土木技術も発展し頻繁に氾濫しませんが、昔はちょっと大雨が降っただけでも氾濫し住居が損壊してしまったといいます。自分たちの手ではどうにもならないからこそ、神様に祈り護ってもらえるようお願いしたのでしょう。
小野神社を訪れると、単なるパワースポット詣でにとどまらず、地域の歴史も肌で感じることができました。