東京都小金井市にある「江戸東京たてもの園」。園内には歴史的な建築の数々が立ち並び、古き良き日本の雰囲気を味わうことができる。
本当に多種多様な建築の数々で、じっくり観ていたら丸1日でも足りないくらいだが、今回はある“都市伝説“について検証したい。
同じく小金井市に居を構えるスタジオジブリの名作『千と千尋の神隠し』のモデルになったものがあると言われているのだ。
三省堂は釜爺のボイラー室のモデルになった?
まず、1つ目の噂の現場は、下町中通りに佇む「武居三省堂」。明治初期に創業した文具店で、書道用品の卸から小売店に業態を変更したという。
壁ぎっしりに天井まで小さな桐の引き出しがあるのが特徴的だ。映画を観た方は、もう感づいたかもしれない。釜爺のボイラー室と、うり二つである。
これは、疑いようがなく黒。マックロクロスケ並みに黒だ!
子宝湯は設定と屋根まわりが油屋に似ている?
さて、次なる現場は「子宝湯」。昭和初期の銭湯だが、私たちが思い描く普通の銭湯とはワケが違う。
入口の上部に堂々たる唐破風(からはふ)が、ついているのである。まるで、お城か神社仏閣の様相だ。
近づいていくと、玄関の上に七福神の彫刻が施されており、実に高級感が溢れる。
子宝湯は、油屋と雰囲気が似ている。映画の設定では、油屋は八百万の神様が通う湯屋ということになっている。つまり、お風呂という点が共通している。
油屋のモデルとしては、ジブリの社員旅行で訪れた愛媛県松山市にある道後温泉本館も参考にしたと武重洋二・美術監督が明かしている。また、岡山県に実在する「油屋」という旅館は名前が同じだが、外観も似ていると言われている。
いろいろな噂があるが、先述の「三省堂」をスケッチしていたら、嫌でも「子宝湯」は目に入ってくるのである。
油屋には子宝湯のものと酷似した唐破風がついており、屋根の形状もそっくりなのだ。
「江戸東京たてもの園」には、やはりジブリのモデルがあった
フィクションでは、いろいろなものを組み合わせて想像の産物を作り上げることが可能だ。しかも『千と千尋の神隠し』はファンタジー作品なのだから、何でもありの世界だ。
とはいえ、状況証拠があまりにも揃いすぎている。実はジブリも「江戸東京たてもの園」を参考にしたことを認めている。
やはり、ここには『千と千尋の神隠し』のモデルになった建物があった。そのように言ってほぼ間違いないだろう。
ジブリ作品には、舞台に設定された時代の日本を忠実に描いているものが多くある。そのため、古い日本を保存している園内には、具体的にどのタイトルということはなくても、ジブリ作品のような光景をあちらこちらに見ることができる。