西武ライオンズのお膝元、埼玉県所沢市内ベルーナドームから徒歩5分ほどの距離にある、1200年以上の歴史を持つお寺「山口観音」をご存知でしょうか。
歴史やパワースポット好きな方にはたまらない見どころなのですが、実は山口観音は、かなり異彩を放っています。お参りした誰もが「ここはどこ!? 日本なの!?」と頭の中にはてなマークが一杯状態になるそうです。
由緒あるお寺といいながらも、参拝客に決して敷居の高さを感じさせず、アジア各国の世界観を愉しませてくれる、良い意味で摩訶不思議なパワースポットへとあなたを誘います。
山口観音ゆかりの人物がスゴすぎる!
山口観音はあくまで通称。正式には金乗院放光寺という、真言宗豊山派*のお寺です。
(*奈良の長谷寺を総本山とする流派)
所在地が所沢市山口で、ご本尊が千手観音であることから「山口観音」の名で親しまれています。
ちなみにこの千手観音、日本史に出てくる有名人3名とゆかりがあります。一人目は行基上人。聖武天皇の命を受け、関東地方へ赴いた際に千手観音を作り上げたと伝えられています。
二人目は弘法大師こと空海。空海がこの地を歩いていたら、山中から不思議な光に気づき、そのまま草をかき分けて入ったところ観音様が祀られている小さな祠を見つけたとか。
当時、この地に住む村人は流行病に苦しんでおり、弘法大師が何とかしたいと慈悲の思いで護摩修行を始めました。現在も境内に残る池の水を閼伽水(あかみず)として使い、そのまま病に苦しむ民に飲ませたら、たちまち元気になったという言い伝えがあります。
三人目はさらに時を経た戦国時代の武将・新田義貞。義貞が鎌倉攻めに先立ち、戦勝祈願をしたのがこの山口観音。戦の後のお礼参りとして、自らの愛馬を寄進したと言われており、「霊馬堂」としてその証が残されています。
駅から徒歩約5分でアジア旅行
山口観音は、日本史の有名人が関わる歴史のあるお寺なのですが、歴史だけではなく独特な雰囲気を楽しめる場所でもあります。
山口観音へは西武線西武球場前駅から、歩いて約5分ほど。
まず駅の改札を出て右へ進みます。
ちなみにベルーナドーム(球場)は改札を出て左側にあるので、球場とは反対方向に進む形ですね。
横断歩道を渡り、ファミマに背を向けてベルーナドーム自転車駐輪場を右手にまっすぐ進みます。
このエリアはもともと霊場だったことから、狭山不動が見えてきます。こちらも歴史あるスポットなので見逃せないので、併せてお詣りしたいところです。
5分ほど歩くと看板が見えてきます。この辺りはとても静かで湧き水のせせらぎが響き渡っていました。
看板からさらに少し歩くと山門に到着。
山口観音―アジアを感じるスポットをまとめました
山門から直進しいよいよ本堂へ。本堂自体は歴史あるお寺の外観なのですが、この時点で微妙な違和感を抱いたあなたは鋭い!
本堂前にある常香炉を見てください。よくあるお寺の常香炉とは違って、龍がたくさんの中華デザインなのです。
アジア旅行がお好きなあなた。あるいはアジアで寺院巡りをしたあなたなら、山口観音の随所に潜む「非日本的要素」を愉しむことができるはず!
・・・というわけで山口観音で「アジアを感じるスポット」を以下、まとめました。
アジアを感じるスポット①本堂のプレイクベル
本堂でお参りを済ませたら、そのままとんぼ返りをせずに、視線を脇に移してみましょう。
ローラーが幾重にも連なる景色が目に入ってきます。
このローラーは「プレイクベル」またの名を「マニ車」と言います。ベルの中には巻紙上のお経が内蔵されています。チベット仏教圏のお寺に必ずある仏具です。
マントラが刻印されたベルを手で回すだけで、ベルの中に内蔵されたお経を唱えたのと同じ功徳が得られるのだとか。
山口観音では画像の通り、ネパール製のプレイクベルが108個並んでいるので、本堂を一周し全て回して功徳をいただきましょう! 日本に居ながらにして、ネパール・ブータン・チベット界隈のお寺に行った気分になれますね。
アジアを感じるスポット②開山堂
本堂から向かって左側に、ひときわカラフルで豪華絢爛な建物があります。開山堂またの名を「武蔵野七福神堂」と呼ばれ、文字通りこちらで一度に七福神全ての神様へのお参りができちゃうスポットです。
開山堂の2つ拝殿には、それぞれ布袋様と引導地蔵(ぽっくり地蔵)が祀られています。
どちらも16~18世紀に中国そして高野山から招いた由緒ある仏様です。
とはいえ、どうしても目がいってしまうのはド派手なデザイン。この絢爛さは明らかに日本のスタイルではなく、どちらかというと中華様式。それもそのはず中国の資材を取り寄せて建立されたと説明に書いてありました。
さらに開山堂を龍が取り囲む意匠は、中華系寺院を想起させます。
質実剛健なスタイルが特徴的な日本の寺院様式に慣れている身からすると、何だかアジアのテーマパークを歩いているような錯覚に陥ってしまいます。
アジアを感じるスポット③水子供養地蔵尊
本堂の裏に回ると水子供養地蔵尊が圧倒的なボリューム感で目前に迫ってきます。
その中にアジア国々から寄せられた仏像があるので必見です。
白いお堂に赤い柱というのが、東南アジアの寺院巡り経験者であれば、ピンとくるはず。
日本とは違う異国の雰囲気のお堂には、ミャンマーとタイから勧請したお釈迦様が鎮座しており、ガラス越しにそのお姿を拝むことができるのです。
白いお釈迦様とエメラルドのお釈迦様―日本では珍しい東南アジア的な仏像です。
そしてこの水子供養地蔵尊も、大きな龍に守られるように囲まれています。
【注意】
こちらはあくまでご供養の場所。お参りの檀家の方もいらっしゃるので、常識ある振る舞いをお忘れなく。
アジアを感じるスポット④五重塔&仏国窟
本殿裏は小高い丘になっているので、階段を上り奥の院へ。途中から鮮やかな朱赤の五重塔が視界に入ってきます。しかもこの五重塔、私たちが見慣れている形とはちょっと違いますよね。そう、一般的な日本の五重塔は四角形ですが、山口観音の場合は八角五重塔と呼ばれる様式。
過去に筆者が住んでいたベトナムで見た寺院もそういえば、こんな形をしていたっけ・・・
アジアでの寺院巡りを思い出しました。
最後に個人的に気に入ったのが、五重塔の斜め前にある丘を見下ろせるベンチ。
ここに座ってしばし風に吹かれ休憩。
由緒あるお寺でありながらも、随所に新たに建立された形跡も見られ、さらに諸外国とのつながりを感じさせるあたり、勝手ながら「オープンで斬新なお寺さんだな~」と思いました。
良い意味で「古刹」のイメージを壊してくれる摩訶不思議なお寺
結論を言うならば、独特な不思議空間でした。1200年以上続く古刹をイメージすると思い切り裏切られます。ただ、アジア各地の要素を取り入れた異彩を放つという点ではとてもユニークなお寺といえるでしょう。もちろん元は霊場だった土地柄、自然豊かで湧き水が流れる心地よい音が響き渡る、優しい静けさに癒やされるパワースポットでもありました。
日本の歴史やパワースポット好きな方にもオススメですが、アジア旅行気分を味わいたい方やアジア各地の寺院を巡った経験者にも、楽しんでいただけるはず!
西武球場や西武遊園地以外にも、こんな歴史あるスポットがあるということをより多くの方々に知っていただけたら嬉しいです。