園内に一歩足を踏み入れるとそこには”古き良き日本”がありました。うっすら色づいた紅葉や歴史的な建築物の数々は言葉にならないほどの美しさで、この日本庭園を愛して止まなかった当時の人々の想いが今も生き続けているようでした。
三渓園は”今を生きる”私たちに、何かとても大事なことを語りかけてくれているようでした。
季節ごとに表情を変える自然の美しさに敬意を払い、五感で四季を感じていた当時の人々の暮らしを垣間見るべく、タイムスリップしてきました!
「三渓園」とは?
三渓園は、原三渓が造り上げた日本庭園です。
詳しくは三渓園のホームページをご覧いただきたいのですが、学術上・芸術上・鑑賞上優れているということで、国の名勝に指定され、かつ庭園全体も文化財となっています。
晴天の日は三渓園日和
素晴らしい秋晴れとなったこの日は三渓園を散策するには絶好の日。横浜駅からバスに乗って約40分、三渓園入口に到着しました。写真はバス停から正門までの間の道。
チケットを買って、
いざ中へ!
正門をくぐると早速、洗練されたダイナミックな日本庭園が迎えてくれます。噂では聞いていたものの、そのスケールの大きさとクオリティの高さに驚かずにはいられませんでした。
ただ一つ残念だったのは、逆光でどうしても大池の写真をうまく撮影することができなかったこと。正門そばから見た大池は太陽が反射していてとても美しいんです。ちなみに池の奥のほうに見える背の高い建物は旧燈明寺三重塔です。こちらの紹介は後ほど。
正門からの景観にすっかり心奪われてしまいましたが、ずっと見とれているわけにもいきません。なんせこの園内は、ものすごい広さですから。ゆっくりと足を進めていきます。
歩いていると、たまたま外国人観光客同士の会話が聞こえてきました。
「ここは本当に素晴らしい! 私ここに住みたいわ!」
私も同感です。
こちらは横浜市指定有形文化財のうちの1つ、「鶴翔閣」。横山大観ら日本美術院の作家たちがたびたび出入りしていたというこちらの建築物には、近代の日本画壇に大きく貢献した記念物としての価値もあるのだとか。
こちらは睡蓮池。いい雰囲気です。
青空と紅葉と大池。絵に描いたようなみごとな眺めです。
と思ったら、本当に写生をしている人々に遭遇。油絵を描いている人もいました。ちょっと覗かせていただくと……みなさんプロの画家並みの腕前。
期間限定公開の遊歩道は、まるでおとぎ話の中の世界
御門をくぐって内苑の中に入ると……
そこには繊細な日本庭園が広がっていました。日本の歴史や建築について全くと言っていいほど無知な私に、園内にいたボランティアガイドさんが声をかけてくれて色々と説明してくれました。ガイドさんありがとう!
こちらは重要文化財である「臨春閣」の外観。
「臨春閣」の内部には狩野派などの絵師による障壁画の複製(オリジナルは三渓記念館で保存・展示)がありました。
「臨春閣」とは?
紀州徳川家初代藩主の頼宣が和歌山・紀ノ川沿いに建てた数寄屋風書院造りの別荘建築。洗練されたデザインが各所にみられます。
遊歩道を目指して上に登って行く途中にも見どころはいっぱい!
まずは小さな竹林。なぜか竹林を見ていると心が落ち着きます。
ボランティアガイドさんによると、まだこのときは紅葉の見頃のピークではないとのこと。あと1週間もすれば山全体が綺麗に色づくとのことで、是非その光景を拝みたいところです。
ピークではないと言っても、みごとな紅葉です。
特別公開中の重要文化財「聴秋閣」。落葉が進むと屋根が紅葉に覆われるんだとか。
「聴秋閣」とは?
徳川家光が京都二条城内に建て、のちに乳母の春日局に賜ったとされる建築。3つの屋根がバランス良くまとめられた外観の形状から、かつては”三笠閣”の名で呼ばれたこの建物は、内部にも変化に富んだデザインが見られます。
こちらが期間限定公開の遊歩道の写真。「聴秋閣」の裏側に位置しており、まるでジブリの世界です。トトロに出会えそう。現実世界とは思えないほどの神秘的な空間がそこにはありました。辺りに響き渡るのは鳥のさえずりのみ。かつてここでは人間と動物と自然が調和して生きていたのでしょう。
最後に旧天瑞寺寿塔覆堂前のイチョウの絨毯を拝んで……
※この時期になると「聴秋閣」の隣にある「春草盧」前にもイチョウの絨毯が広がっており、こちらの建物は茶会や句会などの文化的催事に利用可能。
内苑を後にしました。
まだまだ終わらない三渓園散策
せっかくなので入り口から見えていた三重塔を間近で見てみようということで、険しい階段をのぼり上のほうへ。
右に進むとなんと富士山が! 紅葉を見に来て富士山まで見れちゃうなんてラッキー!
左に進むと重要文化財「旧燈明寺三重塔」がありました。間近で見ると造りがとても繊細で素晴らしかったです。
「旧燈明寺三重塔」とは?
京都・木津川市の燈明寺(廃寺)にあった建物。現在、関東地方にある木造の塔では最古とされています。
上から見下ろす「三渓園」の紅葉もまたたまらなくいいのです。歩き疲れたけど上までのぼってきて良かった。
階段を下りてしばし外苑を散歩。情緒あふれる景色を見ているとため息が漏れてきます。
「旧矢箆原家住宅」(合掌造り)が面白い
紅葉観賞後に是非寄っていただきたいのがここ、重要文化財の「旧矢箆原家住宅」。園内にある歴史的建造物の中で唯一内部を見学できる建物で(9:00~16:30)、昔の人々の暮らしが垣間見れます。
「旧矢箆原家住宅」とは?
飛騨・白川郷にあった建物。式台玄関や書院造の座敷など農家ながら立派な接客の空間を構え、寺院に用いられる火灯窓がつけられるなど、飛騨の三長者の1人ともいわれた矢箆原家の豪勢ぶりがうかがわれます。現存する合掌造では最大級の民家。屋内では飛騨地方で使われた民具を展示しているほか、囲炉裏では毎日薪がくべられています。黒光りした柱や煙の匂いが昔の生活を彷彿とさせてくれます。
言葉では表現しきれない「三渓園」の魅力
見どころたっぷりでいくら時間があっても足りない三渓園散策。特に紅葉の時期はチェックポイントが増えるので、足を運ぶ際には午前中から行くことをおススメします。
ちなみに今回ご紹介させていただいたおススメスポットは、ほんの一部。三渓のゆかりの資料や美術品などを展示している「三渓記念館」や、記念館のロビーにある茶席「望燈亭」も気になるところ。紅葉のピークは恐らく既に始まっていて、大体12月上旬まで。あなたも1度足を運んだら「三渓園」の魅力にどっぷりハマってしまうこと間違いなし。
入園料 大人 500円 子供200円 ※その他割引、回数券、パスポートなどあり。
開園時間 9:00~17:00(最終入園は16:30) ※ライトアップはありません。
休園日 12月29日、30日、31日 ※不測の事態による臨時休園あり。
神奈川県横浜市中区中区本牧三之谷58−1
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