国をあげて環境保護に取り組むエコツーリズム先進国、コスタリカ。
なんと国土の4分の1が国立公園や生物保護区に指定されているということで、多種多様な手つかずの動植物が生き生きと暮らしています。
その小さな面積の中に地球上の生物の約5%が生息しているといわれるコスタリカは、動物好きな筆者にとってはとても興味深い国。
念願叶って現地に行ってみたところ、日本では見ることのできない珍しい野生動物たちに沢山遭遇しました。
しかし大自然の中で野生動物を見つけるのは至難の業。
ということで、せっかく行くなら知らなきゃ損! 現地ガイドから学んだ野生動物観察法を伝授いたします。
エコツーリズムとは?
自然をできるだけ破壊せずに、宿泊・観光施設などの環境への影響を最小限に抑えるとともに、地元の生物多様性や伝統文化といった資産を生かし、地域社会に雇用と経済的な利益をもたらす観光
―「SUSTAINABLE JOURNEY」より―
快適な熱帯雨林探検を楽しむために欠かせないもの
コスタリカの気候と雨対策
地域によって大きく気候が異なるコスタリカですが、年間を通して雨の多いカリブ海沿岸地域(プエルト・リモン)を除いては乾季(12-4月)と雨季(5-11月)に分かれています。
気温は年間を通して変化が少ない地域が多く、太平洋沿岸地域(プンタレナス・リベリア)を除いては最高気温は30 ℃前後、最低気温は20 ℃前後です。
もちろん観光のベストシーズンは乾季ですが、この時期はツアーもホテルも大混雑な上に全体的に値段設定も高め。筆者は8月の雨季真っ只中にツアーに参加しましたが、この時期を選ぶ利点は空いていることとコスタリカらしさを味わうことができること。
雨季だって備えさえちゃんとしていればストレスなく野生動物ウォッチングを楽しむことができます。
雨季はもちろん、乾季でも特に季節の変わり目は雨が降りやすくなるとのことなので、コスタリカを訪れる際には必ず雨具を用意しましょう。
ジャングルに足を運ぶ時はハンズフリーが好ましいので、雨具を選ぶ際にはスコールなどの豪雨にも耐えられるような質の良いウォータープルーフジャケット&パンツがマストになります。
雨除けや日除けにもなるつば付きの帽子があれば尚快適。更に靴やバックも撥水加工やウォータープルーフのものだと安心です。
少し大袈裟かと思うぐらいの雨対策をするかしないかで、コスタリカ旅行におけるあなたの運命は変わってきます。
双眼鏡よりも高倍率光学ズームデジタルカメラ
ジャングルクルーズ以外では、見上げるという行為が圧倒的に多いコスタリカでの野生動物観察。
サルにナマケモノに鳥類に……そう、この国に棲息するポピュラーな動物たちの大半は木の上で暮らしているのです。
ということはつまり、せっかく遭遇できてもそれなりの距離感がある中での動物観察が余儀なくされる場合が多いです。
筆者はお目当ての動物が肉眼で見えづらい場合たびたび双眼鏡を利用していましたが、これが意外と厄介でした。
ピントを合わせるのに時間がかかる上に、ピントが合った瞬間に動物が動いてしまったり、日常的に使い慣れていないと双眼鏡を使いこなすのは難しそうです。
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「ノドジロオマキザル(White Faced Capuchin Monkey)」
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「ホエザル(Howler Monkey)」
そこでこの旅行のために考え抜いて購入した光学35倍ズームのカメラを通して動物を見てみると、こんなに良く見えました!
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「コウモリ(Bat)」
肉眼ではまるで黒い点のように見えていたコウモリもカメラを通せばくっきりと見えてびっくり。
コンパクトなデジタルカメラだったら例え雨でもウォータープルーフジャケットのポケットにしのばせ必要な時だけ取り出すことができるし、手軽にピント調整できて動物を観察しながら写真にも残せます。
画質が劣化しない高倍率光学ズームデジタルカメラ(尚且つコンパクトなもの)こそが、ジャングルでの野生動物観察で大活躍するアイテムでした。
どんな時も虫除けスプレーとかゆみ止めは必須
意外にもコスタリカの海側ではこんなに美しいサンセットを鑑賞することができます。
ところがジャングルではないからといって虫除けスプレーを怠って海岸を歩いていると、大変なことになります。特に夕暮れ時は要注意。
筆者はこの写真撮影時に30箇所以上蚊に刺され、1ヵ月以上経った今でも足に残った虫刺されの跡が消えません。
ジャングル探検中はもちろん、ホテルの部屋でも蚊だけではなく、見たことのないような大きな虫がひょっこり出てきたりと驚きの連続でした。
コスタリカ滞在中は身を守るために常に虫除けスプレーを常備しておくのが無難でしょう。
そうそう、虫に刺された場合のケア用品もお忘れなく!
ジャングルの中で野生動物を見つけてみよう
初めてのコスタリカで、せっかくだからいろんな地域を見てみたいということで、筆者は今回現地ガイド付きバスツアーに参加しました。
ガイドさんの名前はルース(写真の真ん中)。
サービス精神旺盛でコスタリカにまつわる色々な話で終始私たちを楽しませてくれたエネルギッシュな彼女でしたが、何よりも驚いたのは野生動物探しのスキルの高さでした。
出典:caravan.com
ちなみに今回のツアーで私たちが周った行程がこちら。
9日間のツアーでコスタリカを半周ぐらいしました。
広大なジャングルの中で野生動物を探すなんて、気が遠くなりそうですよね。
何か良い方法はあるのでしょうか?
1.動物の棲みかを把握する
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「キバラオオタイランチョウ(Great kiskadee)」
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「ハゲノドトラフサギ(Bare Throated Tiger Heron)」
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「ベニヘラサギ(Roseate Spoonbill)」
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「アメリカヘビウ(Anhinga)」
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「クビワヤマセミ(Ringed Kingfisher)」
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「ダイサギ(Great Egret)」
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「クモザル(Spider Monkey)」
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「イグアナ(Iguana)」
コスタリカは野生動物と人間が共存している国です。
つまり行く場所に行けば野生動物との遭遇率はかなり高めです。
しかし広い国立公園などに行ってもやみくもに動物を探すだけでは、なかなかお目当ての動物には遭遇できません。
“まずはお目当ての動物の行動範囲や習性を把握することが大事”とルースからアドバイスをいただきました。
長年のガイド経験によってか、ルースには動物の基礎知識に加え野生の勘が働いているらしく、次々と野生動物を探し出していきます。
2.野生動物を探す時は大きな音を立てない
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「ワニ(Crocodile)」
自然や動物をリスペクトしているコスタリカン精神を持ったルースが一番大切にしていること、それは動物を脅かさないように野生の世界にお邪魔するということ。
彼女が言った通り息を潜めて野生動物を探すと、ふと大物が登場しました。
この川の主的存在だという大迫力の野生のワニの姿に大興奮です。
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「ワニの幼獣(Crocodile Cub)」
大きなワニのそばには土色と同化しているワニの幼獣がいました。
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「バシリスク(Jesus Christ Lizard)」
「水上を走る」その奇跡の姿をキリストの奇跡と重ね合わせたジーザス・クライスト・リザードに遭遇できるなんて、なんだか幸先よさそうです。
3.動物の気配を感じる
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「グリーンイグアナの幼獣(Green Iguana Cub)」
ルースいわく、自分の気配を消して動物の気配を感じれば自然と野生動物の姿が浮かび上がってくるそうです。
自分が自然の一部に溶け込むことが、多くの野生動物に出会える秘訣ということでしょうか?
なにはともあれ肉眼ではかなり小さなグリーンイグアナの幼獣までもいとも簡単に見つけることができるのですから、お見事です。
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「フタユビナマケモノ(Two Toed Sloth)」
こちらは木の枝の高いところでまん丸くなってぶら下がっているナマケモノですが、1日の大半は眠って気配を消しているため手ごわい相手です。
それでもルースは見逃しません。
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「ミツユビナマケモノ(Three Toed Sloth)」
もしも動いているナマケモノを見れたらとてもラッキー。
筆者はコスタリカに暮らす動物の中では、ナマケモノがダントツに好きです。
4.動物の声に耳を傾ける
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「ホエザル(Howler Monkey)」
色んな鳴き声が響き渡るコスタリカのジャングル。
写真の彼のように自己主張が強めな声や個性的な声など、その音色は様々です。
ルースのように神経を研ぎ澄まして気になる声の出どころを突き止めることができれば、その先に思いがけない出会いが待っているかも。
なぜコスタリカは美しい自然を維持できるのか
人間が足を踏み入れれば踏み入れるほど、自然破壊は進んでいく。
コスタリカはそんな筆者の考えを覆すような国でした。
ルースが「観光産業がなければコスタリカは成り立たない」というように、コスタリカの観光産業は右肩上がりな様子。エコツーリズム先進国と謳ってはいるものの、それを維持するのは難しい状況です。
それでもコスタリカにはありのままの自然が残されているどころか、動物たちがますます繁栄しています。なぜなのでしょうか。その答えはルースと接してみれば一目瞭然でした。
“必ず一定の距離感を保つ”、”餌付けをしない”、”動物を人間と同じように扱わない”
彼女が自然の中に踏み入るときのモットーである以上3点は当たり前のことのようですが、人間と動物との距離感が近ければ近いほど実はとても難しいことなのです。
コスタリカの美しい自然が人々を惹きつけて止まない理由の背景には、コスタリカの人々と自然との持ちつ持たれずの関係性がありました。