地味でド派手な教会が立ち並ぶ「イタリア・ラヴェンナ」の魅力
イタリア

世にはギャップ萌えという言葉がありますね。外見は大人しそうだったあの子が、話してみると大変ファンキーな性格だった……イイ……! そんな心境の時に使う言葉です。
イタリア中部の古都、ラヴェンナはまさにギャップ萌えの町。古色蒼然とした街並みと、その壁の中に秘められた目も眩むようなモザイク画で有名です。
行ってびっくり見てもっとビックリなラヴェンナの魅力を紹介致します。

消えた港町の謎~ラヴェンナの秘められし過去~

ラヴェンナはエルトリア人やローマ人、そしてゲルマン人と時代の支配者たちに大層重宝された町でした。

その秘訣は自慢の良港にあります。ヴェネツィアと同じく、ラヴェンナは海の干潟を埋め立て、人工的に作られた町。波も穏やかで、船を着けるにはもってこいの港でした。

 

ところがご覧ください、現在のラヴェンナには海はおろか市内では川も見えない。名物はパスタと生ハム、港はどこ?と言った状態です。

何故なら、ながーい歴史の間に洪水や地震で地形がすっかり変わり、現在のラヴェンナは海岸線から8kmも離れた内陸の町になってしまったのです。

良港・ラヴェンナは歴史の波間に沈み、今やどうしてこんなに静かな田舎町に金と宝石の大聖堂が残っているのか、不思議な状態になってしまいました。

 

財力と職人技の完璧なコラボ!

東ゴート王国、東ローマ帝国の港として栄えた町・ラヴェンナ。

儲かれば使いたくもなるもので、ラヴェンナには財力の限りを尽くしたモザイク画が数々残されています。見るべき市内のモザイク祭りは三か所。

まずは駅から徒歩15分程度、旧市街の外れに建つカッテドラーレの洗礼堂(あるいはネオーネ礼拝堂、オルトドッシ礼拝堂とも)から見学してみましょう。

お隣のカトリック教会も立派ですが、みどころは一見小さな、六角形の洗礼堂。一歩足を踏み入れると、

キンキラです。金で埋め尽くされた室内、モザイクのモチーフは「洗礼を受けるキリスト」。

どことなくエキゾチック、アラビアンな気配の漂う装飾は異国情緒たっぷりで素敵です。

洗礼堂を見学したら、是非お隣の「大司教博物館」も覗いてみましょう。こちらは長い修復期間を経て2010年に再オープンしたばかり、ビザンチン工芸の博物館になっています。

 

余り広くない内部に貴重な資料が詰め込まれているため、内部は撮影禁止。ですが、修復などの為に天井から取り外されたモザイク画を間近で見る事ができますよ。

まさかとは思っていましたが、やはりモザイクとは宝石を砕き、ちまちまと下絵に沿って作成していたようです。気の遠くなるような作業ですね……!

近くで見ると、モザイクで描かれた人々の表情の細やかな変化や、アイラインの強調、鼻筋への影の付け方など、職人の技を確認できます。

ネオーネ礼拝堂と大司教博物館の開館時間

3月~10月   9時~19時

11月~2月   10時~17時

 

サン・ヴィターレ教会とガッラ・プラチディアの霊廟

旧市街の真ん中に向かうと、間もなく立派な六角形の大聖堂が見えてきます。

敷地内に入り、順路を辿って行くと、まず目に入るのがこちらの小さな小屋。馬小屋かな?位の気持ちで覗いてみると……

 モザイクー!

質素な外観を全力で裏切る宝石の壁です。青く見える部分は全て宝石のラピスラズリ。恐ろしい程の豪華さです。

何気ない壁の装飾すら全力です。こちらは5世紀にガッラ・プラチーディア嬢の為の霊廟として建てられましたが、調査ミスによる発火などもあり、現在残る石棺について正確な事は分かっていません。

 アーチ状になっている壁の形すら計算し、遠近法を考慮に入れて設計されたモザイクだというのだから、恐るべし古代人の知恵。

これだけで大分モトを取った気持ちになりましたが、まだお隣の大きなサン・ヴィターレ教会を見ていませんね。

外見は質実剛健な感じですし、ロマネスク形式なのかな?と中を覗くと、

!?

あまりにも派手な内装なので、モザイク画がどこにあるのか暫く探しました。ありとあらゆる場所が輝いており、最早どれが見所なのかさえ分かりません。全てがみどころです。

6世紀に建築された教会ですが、初期ビザンチン芸術の集大成とも言われています。

モチーフはキリストと天国の皆さんですが、有名どころは「ユスティニア帝と臣下たち」、それに「テオドラ王妃と侍女たち」。

 

実在の人物をモチーフにしており、皇帝のこけた頬や薄くなった髪、元は踊り子だったという王妃様の掘りの深い顔立ちが再現されています。

言葉を失うその輝きはいまだに健在です。

ガッラ・プラチディアの霊廟とサン・ヴィターレ聖堂の開館時間

3月~10月   9時~19時

11月~2月   10時~17時

 

サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ聖堂

鉄道駅からラヴェンナを去るなら、最後にサンタポッリナーレ・ヌオーヴォ聖堂を見学されるルートがオススメです。

サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ聖堂のモザイクは、ずらりと並ぶ聖人26人・聖女22人の聖人画。

それぞれに生きたモデルがいたと考えられており、よく見ると全て顔立ちが違います。全盛期には、教会に集まった会衆が説教を聞かず、モザイクばかり見ている為、煤で壁を汚そうと考える司教も現れたとか。

 

気になる拝観料は、ここまで紹介したサン・ヴィターレ聖堂、ガッラ・プラチディアの霊廟、大司教博物館、ネオニアーノ洗礼堂、サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ聖堂への入場料が含まれるコンビチケット9.5ユーロ(2017年10月/割引対象者8.5ユーロ)です。大変にリーズナブル。

 

個別のチケットが売られていない教会もありますので、最初に訪れた教会の窓口で買っておくと便利ですよ。

 

争いの歴史も眺めてみる? 中世の史跡、あります

なぜラヴェンナの教会の外見が一見地味かといえば、実は最盛期には、教会の外観も装飾的だったようです。

しかし、勢力の衰えと共に、その財宝は時の支配者に剥ぎ取られ、奪い取られてゆきます。

モザイク画も剥ぎ取られ、一部はドイツ・アーヘンなどに移動されましたが、その性質上全てを剥ぐのは難しかった様子。

そのため、こうして教会の天井や壁に残されているという訳です。

そんな戦いの歴史は、駅近くにひっそりと建つ15世紀の城址や、謎めいた墓の遺跡から伺い知る事ができます。

この史跡は東ゴート王国の創始者であったテオドリクス大王の墓だと考えられています、洪水の被害などで損傷が激しく、装飾等はほとんど流されてしまいました。

兵どもが夢のあと、といった感のあるわびさびをご堪能ください。

ラヴェンナへのアクセス

ラヴェンナはイタリアの主要観光コースからこそ外れがちですが、ボローニャからは乗り換えなしで1時間程、フィレンツェからはボローニャ経由で2時間程と、日帰りで訪れる事が可能です。惜しみなく宝石が使われたラヴェンナのモザイクは、まさに目から摂取する栄養。是非足を伸ばしてみて下さいね。

ラヴェンナの公式観光サイト

 

この記事を書いた人

華酉

華酉ライター/中世マニア

北海道生まれドイツ暮らし。大学では歯学と宗教学を修めた為、いつ中世ヨーロッパに飛ばされても活躍できる逸材です。その特性を活かし、日系企業ドイツ支店のお堅い正社員として貿易に励んでいます。
訪れた国は30ヵ国以上、時の権力者に城を陥落されて北海道に逃げ延びたご先祖様の無念を晴らす為、より強い城を求めて各国を放浪中。いつ剣と弓の時代が訪れても良いように、皆様にも選りすぐりの歴史情報をお届けします。

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