日本で一時期話題になった熊本県の「赤ちゃんポスト」2007年に開設されて10年、多くの子供達が救われたと聞いています。
実はヨーロッパでは歴史は古く、イタリアフィレンツェ市には、1412年に活動を始めたスペダーレイノチェンティ「捨て子養育院」があります。現在は子供たちの活動を支えるオフィスと博物館になっています。
シンボルは布に巻かれた赤ちゃん
大聖堂から歩いてわずか5分のところに、捨て子養育院博物館があります。2016年6月にリニューアルオープンしたのですが、外壁が工事中でした。今春、足場が外され修復工事が終わりました。フィリッポ・ブルネレスキが設計した美しいルネッサンス様式の回廊を見ることが出来ます。
1419年にフィレンツェの絹織物組合がブルネレスキに依頼し、1412年には慈善目的での病院活動が始められました。1400年代フィレンツェには、11の病院があったと言われています。1465年には年間200人の子供たちを受け、1400年代末にはそれまでに収容した子供の数が1000人に及びました。
アーチの間には1478年から捨て子養育院の「顔」とも言えるアンドレア・デッラ・ロッビア作の子供の浮き彫り装飾があります。浮き彫りのテラコッタの上から釉薬をかけて焼いたものです。今回の改修で外されて修復が行われました。
ここにはルオータと呼ばれる回転扉があり、赤ちゃんはそこから通され、置くと呼び鈴を鳴らすようになっていました。赤ちゃんの多くは、婚外子や貧困のためにやむを得ず連れてこられました。ルオータは1875年に閉められましたが、その年にも2人の赤ちゃんが持ち込まれたそうです。
ひとつひとつの引き出しに託された思い
建物は3階建てで、1,456平米の広さがあります。地下は捨て子養育院の歴史とプライベートメモリアル展示室になっています。
ドメニコ・ミケリーノ作、「イノチェンティの聖母」。ここで引き取られて生活していた子供たちの服装が年齢別にリアルに表現されています。
デスクのモニターでは1400年代からの子供たちの記録をデジタル化して閲覧できます。周囲には、丸く囲む沢山の引き出しがあります。
ひとつひとつの引き出しにはラベルが貼られており、1800年代ここに連れて来られた赤ちゃんの名前が書かれています。引き出しを開けてみると明かりがつくようになっています。
中には、メダルや十字架、小さな布などが入っています。その多くが半分に割られたもの。ここに赤ちゃんを連れてきた母親達の殆どが、手紙や目印を置いていきました。将来、自分の子供が分かるようにメダルや十字架の半分を子供に託したのです。
こうした「小さな目印」がひとつひとつ大事に保存されています。ひとりひとりの子供たちを大事にしていたことがわかります。
2階は絵画を中心としたギャラリー
この建物には、カフェ目的の人や用事がある人も来るため、博物館部分は入る前に切符のチェックがあります。館内で切符はなくさないようにしましょう。
こちらの代表作は、この養育院の教会の主祭壇の為に描かれた、ドメニコ・ギルランダイオの「東方三博士の礼拝」。養育院の為に描かれたため、手前に左右に子供が一人ずつひざまずいています。
公式サイトでは、所蔵品の簡単なカタログも見られます。
物干し台が美しいカフェに大変身
最上階のカフェヴェローネは、美術館に入る人だけでなく、入場切符がなくても自由に入れます。ここは元々、養育院の子供たちの洗濯干場だったところ。リニューアル後はガラス張りの近代的なカフェになっています。
カフェのテラスからは捨て子養育院を設計したブルネレスキの代表作、フィレンツェ大聖堂のクーポラも見えて素晴らしい景観に感激します。カフェだけでの利用も可能。カフェだけ行きたい方は、入り口を入ったらすぐのエレベーターに乗ると直接屋上に行けます。
子供向けのショップ
地上階のブックショップには、オリジナルグッズや子供向けのお土産を取り扱っています。上品なお土産は、DR.VRANJESとコラボしたアンドレア・デッラ・ロッビア作の浮き彫りメダル(20€)。クローゼットの中に入れておけば、いつまでもフィレンツェの思い出が香ります。
Piazza della Santissima Annunziata, 12, 50121 Firenze
入場料:7ユーロ
開館時間:毎日10−19時まで(入場は閉館30分前まで)カフェヴェローネも同じ時間帯です。
休館日:クリスマス、元旦
公式HPはこちら