値段や質より「自分に合うか」。超有名キュー職人ジョンパリス氏を直撃してきた!
イギリス

旅行嫌いの自分が旅行好きのアジア系オーストラリア人の奥さんと結婚したがために半年の世界旅行に旅立ってしまったのは2017年の2月末。

この旅行を計画していた時に俺が出した条件はただひとつ「行く国にスヌーカーがあること」でした。

スヌーカーマニア Toshi Okuzaki のスヌーカー世界旅行記、第2回はスヌーカーのメッカ・イギリスにある超有名キューメーカー”パリスキューズ”のジョンパリス氏のインタビューになります。

スヌーカーって何?と思った方は前回の記事「ビリヤードっぽい「スヌーカー」ご存知ですか。道場破りに行ってきました」をご覧ください!

スヌーカーのメッカ イギリス




日本を発ってイギリスに着いた俺はスヌーカーのことしか考えていませんでした。

ビッグベンや大英博物館やタワーブリッジへの観光はもちろん、ロンドンに住む嫁の友達との夕飯など色々予定はあるものの、常に頭の中ではスヌーカーのことばかり。

しかし、ググってもスヌーカーできる場所が少なく、あってもクラブの会員にならないと入れない店も多くて中が確認できません。

更に色々な人に聞いてもスヌーカーができる場所を知らないのです。イギリスといえばスヌーカーのメッカであり、スヌーカーが発展した場所なのは間違いありません。

トッププロは賞金とスポンサー料を合わせると年収1億円という人までいるので、俺の中では野球やサッカーと並ぶ人気だと思っていました。

どうやら違うのかもしれないと思い始めた頃、嫁と半日、別行動を取る機会ができたので、イギリスの老舗にしてトップブランドのキューメーカーであるパリスキューズに行ってきました。

おそらくトッププロの6割がパリスキューズのキューを使っていて、当然私も持っています。彼ならイギリスのスヌーカーシーンを良く知ってるはずです。

ジョンパリス氏インタビュー


ロンドンの中心から電車で約30分、フォレストヒル駅から歩いて5分ほどでその世界的有名なお店がありました。お店に入ってみるとジョンパリス氏本人が出迎えてくれました。そして直接お話することができました。

ー初めまして。2年前からあなたのキューを使わせて頂いている者です。今現在、世界旅行中でイギリスに来たので突然ですが寄らせてもらいました。お話し聞かせてもらってもいいですか?

もちろんいいよ! うちのキューを使ってくれてありがとう。あなたのように海外から遊びに来てくれる人もいるし、昨日はうちのキューを使ってるプロの1人が新しいキューを取りに来たばかりだ。さぁ、中に入って。

ー世界でも超有名でスヌーカープレーヤーなら誰もが知るパリスキューズがこんな所にあるとは驚きました。

あまりに店が小さくて驚いたの間違いだろう(笑)? みんなそう言うよ。うちはたくさんのトッププロが使ってくれてるから有名になったけど、店は昔のまんまだ。この隣に実際に工場があって、私の弟子がキューを作っているよ。

ージョンさんはもう作ってらっしゃらないんですか?

私はもう工場で作業はしてないね。信頼してる弟子にやらせているよ。でも毎日こうして店には来てるし、キューの原料となる木材は私が選定しているよ。

長年の経験で木目や密度を見たり、触ったりすると良いキューになりそうだとか、これはダメだとかわかるんだよ。この前は送られてきた木材の内、3割くらい戻したかな。これは私がやらないとダメだね。

あとは世界からいろんな注文があるから、出来上がったキューのサイズや重さを見て注文にあったキューを選ぶのも私がやってるよ。

変わりつつあるスヌーカーシーン


ーロンドンに来てスヌーカー場を見つけるのが難しかったんですが、スヌーカーの人気って下がってるんでしょうか?

残念ながらスヌーカー場は減ってるね。いろんなクラブが閉店したよ。この店の近くにも全盛期は2店舗あったけど、閉まってしまったからこの辺にはスヌーカーできるところはないよ。

2007年に禁煙法ができて室内でタバコが吸えなくなった。昔はポーカーとスヌーカーは同じ店でやってたんだ。ポーカーやってる時にタバコ吸えないって致命的だから一気に客が減った。その煽りを受けてスヌーカーも消えてった。

元々80年代90年代の異常な人気のせいでスヌーカー場が増えすぎたってこともあったんだろう。今ではロンドンからちょっと離れないとスヌーカー場はないな。


ーイギリスがスヌーカーのメッカであるはずなのに聖地巡礼に来たらこんなことになってて本当に残念です。

君以外にも世界各国からイギリスでスヌーカーがしたいと言ってここへ来た人を知ってるけど、みんな同じように残念がってるよ。

今、ローカルのスヌーカーシーンで言ったらタイのほうが盛り上がっているんじゃないかな? お店も競技人口も多いもんなぁ。私も初めて行った時は驚いたよ。

ジョンパリス氏のクラフトマンシップ



ーもう少しキューについて伺いたいのですが、パリスキューズの最上位モデルにしてオーダーしても最低2年待ちという噂のアルティメットは他のキューとどう違うのですか?

良い質問だね。うちのHPを見ればわかる通り、うちはたくさんのモデルがある。でもそれぞれのモデルの違いの明記はない。君がもってるのはチャンピオンキューだったよね? 何度も世界王者になってるニールロバートソンが使っているキューは君のより安いクラシックというモデルだ。

基本キューはどれも一緒で、デザインが違うだけ。あとはバランスや太さや長さは本人に合わせて作ってるからもちろん全部違う。でもどれも自信を持って世界に出せるキューだ。

でもねアルティメットだけは、最初の木材を選定する段階で、これはアルティメットになる素質がある!とわかるわけ。そして削っていってキューにして、思い通りのキューができたらアルティメットとして出荷するんだ。でも他の人が見てもそれはわからないかもしれないな。



ーつまり企業秘密であり、言葉では説明し難い何かが宿ったキューってことですね。鳥肌が立ちます。

俺が言っちゃいけないんだろうけど、それだけ良いキュー持ってたって下手なプレーヤーはたくさんいるし、ニールロバートソンのように一番安いキューでも世界チャンピオンになってしまう人もいる。

ー何度も世界チャンピオンになったスティーブンヘンドリーも子供の頃に買った大量生産の安いキューで何度も優勝したそうですが、遠征時に航空会社が紛失して、それ以降スティーブンは同じようにプレイできなかったと言ってますもんね。

そう、結局のところ自分に合ってるか合ってないか、値段よりも質よりもそれが一番大事なんだ。

ーちなみに自分はスヌーカーの他にイングリッシュプールもするんですが、キューボールがスヌーカーよりひと回り小さいのでプール用に新しく細いキューを買ったほうがいいと思いますか?

キューを細くするって言ったって1mmか2mmくらいだろう? 今、持ってるので満足しているならわざわざプールのために買う必要はないよ。

ー普通、お客にそう言われたら「これはどうだい?」と言ってキューを出すものですよ! 商売なんですから。

はっはっは。商売気がなさ過ぎだって? いや、この商売はね、信用と言うか、口コミでやってるからそんな下手な真似はできないんだよ。

他のキューメーカーやスヌーカー関連グッズのメーカーはスポンサー料を払っていろんなプロと契約しているみたいだけど、うちはスポンサー契約してる選手は1人だっていないよ。

ほとんどのプロが他と契約したって結局うちのキューを使うんだから。結局私たちができることは今までもこれからもお客さんが望む質の高いキューを作り続けるだけだね。

まとめ


今回、イギリスに来て、クラフトマンシップとサービス精神にあふれるジョンパリス氏から直にお話を伺えるとは思ってなかったので感動しました。本当に自信があるからこそできる発言の数々に圧倒されました。

今はインターネットの恩恵により思い立った時に相手に会わずとも気軽に買い物ができる時代です。パリスキューズのキューも簡単にネットでオーダーメイド注文できますが、わざわざお店に足を運んで現場で実際の製作者に会うという経験ができて良かったです。

今回の聖地巡礼でジョンパリス氏の人柄や堅実なお仕事を目の当たりにして更に自分のキューに愛着が生まれました。あとは練習に励むのみです。

追記

先日のイングリッシュオープンにて(2017年10月22日)ジョンパリス氏のキューを使用する二人が優勝タイトルと7万ポンド(およそ1,000万円)をかけて決勝で対峙しましたが、ロニーの圧勝に終わりました。ジョンパリス氏もフェイスブックに写真をあげて二人のパリスキュー使いを讃えていました。

Parris Cues
5 Church Vale, London SE23 2UW
Tel +44 (0) 208 291 6288
Skype ParrisCues
公式HPはこちら

反響に驚き

前回のカンボジアでのスヌーカー道場破りをご覧になって頂いたからからツイッターを通して感想など頂きました。スヌーカーを知らない、ビリヤードも興味ない、という方まで見て頂けたのはやはり旅メディア TRIP'Sで公開されたおかげだと思います。

これからも普通の旅行とちょっと違うユニークな旅先での体験をみなさんとシェアしていけたらと思ってますので応援よろしくお願いします!
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この記事を書いた人

Toshi Okuzaki

Toshi Okuzaki旅嫌いの旅人

オーストラリア在住の俳優。2016年10月に主演映画Top Knot Detectiveが現地公共放送SBS2にて公開。ちなみに現在は様々な映画祭に出品中。Now Actors所属。 趣味はスヌーカーとバイクとヒップホップ。 旅行嫌いにも関わらず旅行好きのアジア系オーストラリア人と結婚したがために世界旅行を2017年2月にスタート。

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