ニュージーランドに旅行にやってきた人たちが初めて夜の街を歩くと、必ずびっくりして言うことがあります。それは、
「なんでこんなに真っ暗なの!?」。
実はニュージーランドではほとんどのお店は夕方6時ごろに閉まります。街の街灯もあまりなく、夜の9時ごろにもなればまるでゴーストタウンのような有様になります。100万人以上が住む最大都市のオークランドでさえそうなので、ほかの都市は推して知るべしでしょう。
でも、実はその『夜の街の暗さ』こそが、ニュージーランドが移住先として人気の高い理由でもあります。
「え? 夜の暗さと移住にどんな関係があるんだ?」と思うかもしれませんが、これがおおいに関係があるんです。今日はそんなところをまとめてみたいと思います。
キーワードは、「原発」と、「Less is More」です。
原発のない国、ニュージーランド
▲最大都市オークランドの夜……
いきなり話が飛ぶようですが、ニュージーランドには原発がありません。
それどころか、通称「非核法」と言って、核の所有や製造はもちろん、原発もだめ、原子力船の寄港のだめという、すがすがしいまでに国の領域に核が入ることを否定する法律をもっている国です。
これはNZでは有名な逸話ですが、以前、アメリカが原子力船を寄港しようとしたことがありました。ニュージーランドは法に則ってこれを拒否すると、面白くないアメリカはこれに怒り、軍事同盟を解消してしまったという事件さえありました。アメリカを突っぱねてでも頑なに核の持ち込みを拒む、筋金入りの「核嫌い」という一面を持っているんですね。
電力のほとんどが再生可能エネルギー
▲国民の1割が反対署名を投じたマナポウリ水力発電所。水位は上げず、発電所自体を地下に造って環境に配慮した
原発がない代わりに、ニュージーランドの再生可能エネルギーの割合は2015年データで80%に上ります。半分以上が水力、そして地熱、風力、バイオマスと続きます。ニュージーランド人は自国の自然に誇りを持って愛していて、かつてダムの建設計画がもちあがった際、国民の1割が反対署名を投じて潰したことさえあります。日本に置き換えれば、1,000万人が反対署名をしたわけですから、何ともうらやましいまでの自然愛です。
それだけ環境保護に熱心な国なので、原発はおろか、火力発電所の新規建設すら見込みはなく、今後は国民の理解が得られる地熱や風力発電所の設置が進むとされています。2025年までに90%を再生可能エネルギーにすると豪語していますが、これも達成できそうだからすごい話です。
「不便」を愛するニュージーランド人
▲オークランドの街並み
原発がなく、8割が再生可能エネルギーの国。いいですよね。実際このことを大きな理由として、関東や東北からNZに移住してきた人も多いと聞いています。
しかし、いい面もあれば悪い面もあります。
まず、電気代がものすごく高いんです。一軒家で電気代が月に3~4万円はざらとされています。そのおかげか、国民全体として節電意識が高く、無駄な電気は使わない傾向があります。僕の周りの家でも夜通りかかると、
「ここって、ホントにひとが住んでるの?」
と思わず首をかしげてしまうような薄暗いお宅もたくさんあります。きっと家主さんは読書や仕事で使うだけの灯りをつけて、あとはコンセントごと引っこ抜いているんでしょう。
冒頭に書いたように街のショップも夕方6時には閉まり、昼の3~4時ごろに店を閉めてしまうカフェも多いです。全体的に商売っ気が少なく、そのためモノも少なく、“低機能が売り”(!?)の素朴な商品ばかり。
日本人からしたらとんでもなく不便なんですが、でも、NZにすむ人たちはその不便を当たり前として受け入れています。店が閉まってるなら明日いけばいい、ほしいモノがなければ作っちゃえばいい。一事が万事、そんな感じなんです。
以前、僕がニュージーランド長期滞在から帰国したとき、こんなことがありました。帰国してすぐ用があって東京のダイソーに寄ったんですが、あまりの眩しさと溢れんばかりの商品にめまいと吐き気を覚えて、何も買わずに店を飛び出してしまったんです。
「なんでこんなに灯りがついてて、なんでこんなにモノがあるんだろう?」
と、そのとき、両国の余りのギャップに驚いたのを覚えています。(帰国して1週間もすればすぐに慣れてしまったのが、何より怖い……)
Less is Moreという暮らし方
▲街中のいたるところにある芝生の公園
ニュージーランドの暮らしを一言で表現する、いい言葉があります。それは、
「Less is More」。
少ないことは、それ以上の何かをもたらしてくれる。
街の灯りが少ないなら、その分早く帰宅して家族との時間が持てる。繁華街もディズニーもないけど、ビール1本もって仲間とビーチでくつろぐ週末なんて最高。
不便さを愛する暮らしにある“ほんとうのゆたかさ”に気付いた旅行者が、
「よし、ニュージーランドに移住しよう。」
と決心するのも、もしかしたらとても自然な流れなのかもしれません。
次回は、じゃぁ具体的に移住するぞとなったときに必要な、ニュージーランド移住のポイント制度について解説してみたいと思います。