ナショナルギャラリーにはちょっと怖い骸骨絵画がたくさんあります。骸骨好きの方必見! オススメの絵画をご紹介します。
ナショナルギャラリーで骸骨ハント
絵画を見るとき、1番注目するポイントって何ですか? 鮮やかな色彩、緻密な描写、斬新な構図、柔らかな筆致……。ぱっと目に飛び込んでくる第一印象で、なんとなく好き、嫌い、が分かれるのが絵画だと思います。
難しいことはわからなくても、そのインスピレーションが一番大事! でも、ちょっとだけ普段と視点を変えると、一枚のキャンバスには多くの「真意」が隠されていることに気がつきます。
たとえば「骸骨」。何を思い浮かべますか? 死、ロック、反骨精神?
西洋絵画における骸骨は、ラテン語で「Vanitas(ヴァニタス)」と呼ばれる静物画ジャンルにおける寓意的なシンボルの1つで、特に16世紀から17世紀にかけて好んで描かれました。
その意味するところは「人生の空虚さ」。旧約聖書の「Vanity of Vanities, saith the preacher, all is vanity(伝道者は言う、なんと虚しいことか。全ては空虚だ)」 (コヘレトの言葉「伝道の書」より)という一節が示す通り、生きとし生けるもの皆死にゆく定め、という自明の摂理を暗喩するモチーフとして描かれています。
これ、日本人にも馴染み深いテーマだと思いませんか?そう、学校で必ず習う「祇園精舎の鐘の音……」で始まるアレです。国や歴史、文化、宗教が違っても、やはりこれだけは逃れられない人間の宿命なんですよね。
そんな「人生の儚さ」を噛みしめつつ、ロンドンのThe National Galleryで骸骨ハントをしてみましょう!
Young Man holding a Skull (Vanitas)(1626-8, Frans Hals)
一見、肖像画のようですが、やはり注目すべきは左手の骸骨で、人生の無常と死の確実性を表しています。作者であるFrans Halsは、アントワープ出身の画家ですが、後に、日本でも人気の画家Edouard Manetの作風に影響を与えたと言われています。
Saint Francis in Meditation(1639,1935-9, Francisco de Zurbarán)
フランシスコ会の創設者であるSaint Francisを描いた連作です。彼の思想は「清貧」と「平和」を基盤としていますが、この絵画の作者であるFrancisco de Zurbaránは、晩年貧困のうちに亡くなっているんですよね……。
Vanitas Still Life(1648, Jan Jansz. Treck)
これぞまさに「Vanitas」という1枚! 骸骨の他にも、砂時計や火の消えたパイプ、Viol(17世紀当時使用された6弦楽器)とフルート、藁といった象徴物がわんさか描かれています。
A Dead Soldier(17th century, Italian)
最後にご紹介するのは、未だ作者不明の1枚。血の気のない兵士の顔、今まさに消えようとしているランプの煙、そして左下に転がる骸骨。人生の短さと人間の偉業の無益さを表しています。
まとめ
今回は17世紀のVanitasを中心にご紹介しましたが(すみません、個人的に好きなんです)、The National Galleryには他にも骸骨が登場する絵画がたくさんあります。
時代によってその意味や描かれ方も違ったりするので、いろいろ比較するのも楽しいですよ。骸骨好きのみなさん、ぜひお気に入りの骸骨を探してみてくださいね。
※今回ご紹介した絵画の展示場所は、オフィシャルサイト内で検索可能です。(企画展の貸出などでディスプレイされていない時もあります。)