今回は日本の陸上になく、ヨーロッパの陸上にあるもの「国境」を取り上げます。「国境」といっても実に様々。とりわけ、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパには他では見られない「国境」があります。
それでは、ディープな「国境」の世界を少しだけご案内します。
①景色がすばらしい! オーストリア・チェコ国境
最初に紹介するのは景色がすばらしい国境、オーストリア・チェコ国境です。
私はチェコ側の小さな町、ミクロフから国境を眺めました。少しわかりにくいですが、国境を境にして土地の区画が異なっていることがわかります。
遠くの村々はオーストリアに属します。オーストリアとチェコは共に「シェンゲン圏」に属しているので、パスポートコントロールはありません。
国境が見える丘の上に立つ教会
とても静かでのんびりとした雰囲気。ピクニックには持ってこい!と言えるでしょう。しかし、このような雰囲気になったのはつい20数年前のことです。
第2次世界大戦から1980年代末まで、ヨーロッパは自由主義圏と社会主義圏に分かれていました。オーストリア(自由主義圏)とチェコ国境(社会主義圏)はちょうど2つのヨーロッパの境でもあったのです。
ガイドによると、この時代は亡命者が出ないように何十ものネットがあったとか。おそらく、ものすごく殺伐とした雰囲気だったのでしょう。
②登山を楽しみながら国境を越える ポーランド・チェコ国境
スニェシュカ山山頂
次は登山をしている間に国境を越えられる、ポーランド・チェコ国境です。舞台となる山はチェコ最高峰の山、スニェシュカ山です。
「最高峰」といっても標高は1,602m。日本ですと青森県の八甲田山クラスです。私は数年前にポーランド側から登りました。
この山はスタイルがなだらかなので、初心者でも無理なく登山を楽しむことができます。
国境は頂上付近にあり、国境を示す看板が立っています。私はこの看板を見たとき、とても興奮しました。なぜなら、日本では絶対できない体験ですから!
しかし、周りのポーランド人、チェコ人は国境に目をかけることなく平然と登っていました。おそらく、ヨーロッパの人にとってはあまり珍しくない光景なのでしょう。
③古城から眺める少しロマンチックな国境、オーストリア・スロバキア国境
オーストリア・スロバキア国境はドナウ川と古城が合わさった少しロマンチックな雰囲気。スロバキアの首都、ブラチスラバからバスを使って90分でアクセスできます。
古城、デヴィーン城は19世紀にナポレオンに攻め落とされたので、城自体は残っていません。それでも雰囲気は抜群です。私はスロバキア人の友人と一緒に訪れました。
デヴィーン城からはとうとうと流れるドナウ川が見られます。向こう岸はオーストリアです。音がなく大河、ドナウ川の独特の音だけが聞こえてきました。数分間、黙ったまま国境を見つめていました。
④国だけど国じゃない国境? モルドバ・沿ドニエストル共和国国境
ティラスポリ市内
世界には数多くの国境がありますが、この国境はかなりのレア国境です。まず、沿ドニエストル共和国を市販の地図帳で探してみましょう。きっと見つからないはずです。
沿ドニエストル共和国はモルドバの中にある「未承認国家」です。国土、国旗、国家、政府がありながら、どの国連加盟国からも「国家」として承認されていません。もちろん、モルドバからの独立承認も得ていません。
そのため、モルドバの出国審査はありません。沿ドニエストル共和国の「入国審査」のみです。沿ドニエストル共和国のゲートはとても立派でした。
堂々と撮影すると「スパイ容疑」で難癖をつけられると思い、コッソリと激写しました。ゲートに着くと、沿ドニエストル共和国の「国境審査」があります。といっても、一般的な国境審査と同じなので、普通に答えたらOKです。
⑤1年に1回だけパスポートコントロールがある不思議な国境 リトアニア・ウジュピス共和国
最後に紹介するのはリトアニアの首都、ヴィリニュスにあるリトアニア・ウジュピス共和国の国境です。ウジュピス共和国も地図帳では絶対に見つけられないと思います。
ヴィリニュス、ウジュピス地区は少しうらぶれたエリアでした。しかし、その雰囲気を好んで多くの若者、芸術家がウジュピスに移住。その後、ちゃっかりと「独立宣言」をしました。
ウジュピス共和国内にあったアート作品
普段はパスポートコントロールもなく、国境らしくない国境です。しかし、4月1日のウジュピス共和国の「独立宣言」では国境に検問所が設けられ、パスポートコントロールが行われます。
できれば、4月1日にウジュピス共和国を再び訪れたいですね。