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    コソボ⇔セルビア国境越えは複雑!?コソボスタンプとバルカン半島旅行にまつわる事情
    コソボ

    passport stamp

    普段はコソボのプリズレンに滞在していますが、先日、友人に会いにボスニア・ヘルツェゴビナの首都・サラエボに行ってきました。
    その道のりの長かったこと。
    コソボからサラエボまで、直線距離にして400キロほど。でもかかった時間は丸一日。
    あれ?ヨーロッパって陸続きで近隣の国に行くのが簡単なんじゃないの?はい、大体の場所ではそうなんです。
    でももしパスポートに「コソボスタンプ」があると、こんなことになるのです…。

    コソボの位置づけ

    「国境」線が点線…。

     

    このgoogle mapの態度からも分かるように、コソボの独立は未だ宙ぶらりんの状態です。

    日本を含む国連加盟国中111か国はコソボの独立を認めていますが、その他85か国は未承認です。セルビアもその一つ。
    セルビアは未だコソボをセルビアの一部と認識しています。

     

    その理由は、政治的・歴史的なものなので、一般の旅行者がこの二つの国を旅行するとき、それほどピリピリ緊張する必要はありません。が、唯一巻き込まれることがあるとすれば、それはパスポートに押される「コソボスタンプ」です。

    コソボスタンプ

    例えばこれからコソボ→セルビアの順で旅行したいとします。

    アルバニアやマケドニアからコソボに入ると、パスポートに「コソボ入国スタンプ」が押されます。
    入国スタンプ
    アルバニア語とセルビア語と英語で「コソボ共和国」と書いてある。左上にはコソボの国旗。どこの国境でも微妙にインクが薄いのがコソボスタンプの特徴。
    そしてそのままコソボからセルビアに入ろうとすると、セルビアの入国審査でひっかかります。

    その理由は、「セルビアに不法で入国した」というセルビア側の主張があるためです。

     

    ???

     

    どういうことかというと。
    コソボの独立を認めていないセルビア。

    セルビア側の論理
    ・コソボの場所もセルビアの土地
    ・その場所に旅行者が「セルビア入国スタンプ」なしで滞在
    ・それは不法入国ダ!
    となるわけです。

     

    反対に、先にセルビアに入国してそのままコソボに抜ける際、セルビアとコソボの「国境」では、「セルビア出国スタンプ」は押されません。なぜなら「コソボもセルビアの領土だから」。
    ちなみにコソボ人もちゃんと「コソボパスポート」を所持していますが、セルビアに行くときだけはパスポートを使うことができません。
    理由は同じです。
    セルビアはコソボを独立した国として認めていないので、自動的にパスポートの存在も否定です。IDでの越境しか認められていません。
    でも実際には、この二国の間にはパスポートコントロールがあり、やってることは普通の国境と同じにしか見えません。

    それも「形だけコソボのこと認めてないってことになってるから仕方なくチェックさせてね」という生ぬるいレベルではなく、パスポートにコソボの出入国スタンプが見つかれば、セルビア語で「無効」とかかれたスタンプをそのうえから押されたりして、結構マジな対応です。
    invalid stamp

    コソボーセルビア間の旅行

    というわけで、コソボもセルビアも旅行したい!という方には、セルビアに先に入ってそれからコソボを訪れることをおすすめします。
    けれどどうしても、コソボ→セルビアの順で旅行する羽目になることだって、そりゃ普通にありますよね。
    「コソボスタンプがあるとセルビアに行けないんだって。じゃあ今回セルビアには行けないな」と諦めてしまうにはもったいないくらい、セルビアにはセルビアの素敵な観光スポットがたくさんあります。

    セルビアの魅力は後々の記事に譲るとして、「じゃあ先にコソボに入っちゃったら、その後どうやって問題なくセルビアに入ればいいの?」という疑問。

     

    その答えは「第三国にいったん出て、それからセルビアに入る」という方法です。
    幸いマケドニアの首都・スコピエはかなりコソボに近い位置にあるので、ベオグラードに行きたい時なんか私はよく、一度スコピエに行って、バスを乗り換えて再度セルビアを目指します。
    prizren skopje beograd2
    プリズレン→スコピエ(3時間半、9ユーロ)、スコピエ→ベオグラード(8~9時間 20ユーロ)

    サラエボまでの道のり

    今回のサラエボ道中膝栗毛。
    もともとコソボ人はビザがないとボスニア・ヘルツェゴビナに行けないというのもあって、バスも1日に1本、それもセルビア経由、というなんとも投げやりな行き方しかありません。
    prizren novi pazar sarajevo
    コソボーサラエボ間は1日1便夜行バスがあるのみ。しかも直通ではなくノビ・パザール(セルビア)でバスの乗り換えがある。チケットも通しでは買えず、コソボーノビ・パザール(15ユーロ)をチケット売り場で買い、ノビ・パザールーサラエボ(15ユーロ)をノビ・パザールで買う。合計所要時間は約10時間。
    で、わたしはセルビアより先にコソボに入国してしまっているので、例の「コソボスタンプ」が災いし、このバスには乗れません。
    コソボから直接セルビアに入国することができないからです。
    そんなわたしが今回選んだ方法は、「モンテネグロ経由でサラエボに行く」でした。
    kosovo montenegro sarajevo
    プリズレンーウルチン(4時間半 15ユーロ)、ウルチンーポドゴリッツァ(2時間 6ユーロ)、ポドゴリッツァーサラエボ(6時間 約18ユーロ)
    わたしが寝坊したこともあって、まず1日に1便しかない朝8時のポドゴリッツァ(モンテネグロの首都)行きのバスに乗れず、10時発のウルチン(モンテネグロの地方都市)行きバスで一旦ウルチンまで行き、そこからバスを乗り換えてポドゴリッツァまで行きました。
    ポドゴリッツァからサラエボまでのバスは1日に5便あるのですが、乗り継ぎ時間が合わず、結局その日最終の23時40分発の夜行バスでサラエボを目指すことに。
    ポドゴリッツァでの待ち時間5時間。
    このポドゴリッツァという町。
    ユーゴスラビア時代は「ティトーグラード」という名前の下、経済的にも文化的にも大きな発展を遂げた場所でした。しかしユーゴスラビアの崩壊とともにその発展は停滞。現在では特徴のない町として無難に存在しています。
    旅行者の間では「何もない」と悪評高いポドゴリッツァ。

    もはや「見るものが何もない」とか「やることが何もない」とかというレベルを超越して、目抜き通りを歩いている人さえいない、本当にガランとした「何もない」街です。

     

    一国の首都がなぜこんなにも「何もない」ことになっているのか。これまでに4回訪れているのですが、行くたびに必ず狐につままれたような気持になります。

    もしやこれこそがポドゴリッツァの最大の見どころなのかも…と思うようになるほど。
    「『何もない』がある街・ポドゴリッツァ」なんてスローガンで観光客を誘致したらいいのに。
    さて、ようやくサラエボ行のバスに乗り、国境を朝の4時にたたき起こされながら超えて、ボスニア・ヘルツェゴビナに入国です。
    パスポートにボスニア・ヘルツェゴビナの入国スタンプが押されているのを確認し、窓の外に目を向けるとそこには、「ようこそスルプルカ共和国へ!*」という看板。

     

    「ようこそボスニア・ヘルツェゴビナへ」ではないのがなんだか悲しい。どこまでも未だくすぶる民族間のテンションを肌で感じた旅でした。

     

    *スルプスカ共和国とは、ボスニア・ヘルツェゴビナ内にあるセルビア人居住区のこと。ボスニア内戦の後、ボスニア国内では民族の棲み分けができ、セルビア人を主体とする「スルプスカ共和国」とボシュニャク人とクロアチア人住民が主体の「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」の二つの主体から構成される一つの国家になった。大統領もこれら三民族からそれぞれ選出するので、一つの国家に三人の大統領が存在している。

     

    ※上記は現時点での情報であり、政局等によっては今後状況が変わる可能性があります。

    この記事を書いた人

    y s

    y sコソボ定点観察人

    バルカン半島好きが高じて2015年夏よりコソボを拠点に生活中。でも実際はラブ&ヘイト。過去6年間で中央アジア、ロシア、キューバ、イスラエル、バルト三国などにも訪問。ステイタスは I’m busy with being lazy。
    コソボ(とバルカン半島)の魅力の啓蒙!なんて大義名分を掲げた結果、ただの個人趣味全開になったウェブサイト・「ほんとうは楽しいコソボ」をひっそりと展開中。

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