韓国語わからなくても大丈夫?ミュージカル「NANTA(ナンタ)」を3世代で観覧してみた!
韓国


1997年生まれのNANTA(ナンタ)。日本でも何度か公演をしているのでご存知の方も多いことでしょう。

ナンタが始まった1997年といえば、韓国の高度成長のピーク。

そこからIMFショックと呼ばれる韓国経済のどん底を生き延び、韓流全盛期にも独自の路線でファンの心をつかみ続けた「ノンバーバルミュージカル NANTA(ナンタ)」の魅力に迫ります。

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会場は2か所、チームは10

2018年3月現在、ソウルでは明洞(ミョンドン)と弘大(ホンデ)の2か所に常設劇場があります。

明洞の劇場では平日は1日2回、週末は3回から4回ほど公演が行われています。

そのほかに海外公演もたくさん行われています。今までになんと18か国で公演したそうです。

韓国の伝統芸能に「サムルノリ」というものがあります。4つの打楽器のハーモニーを楽しむ農村の芸能なのですが、その「サムルノリ」をベースにセリフのほとんどないミュージカルとして生まれたのがナンタです。

ナンタは漢字で書くと「乱打」。5人の役者さんたちが、歌う代わりにありとあらゆる道具を使った打楽器合奏によってストーリーを展開させていくのです。

ナンタの役者さんは10チームに分かれて活動しています。

「白」「黒」「赤」「青」「黄」「緑」「紫」「茶」「オレンジ」「ネイビー」。当初は韓国の国旗に使われている色(白、黒、赤、青、黄、緑)だったそうですが、徐々にチームが増えて今のようになったのだとか。

どのチームかいつ、どこの会場で講演をするかは、公式サイトを見てくださいね。公式サイトは韓国語のほかに日本語や英語でも作られています。なんちゃって日本語じゃなくて、自然な日本語ですよ~。

今回は「緑」チームの皆さんの公演でした。公演前に、少しだけインタビューをさせてもらいました。

-今日はお世話になります。公演前に時間をとってくださってありがとうございます。

チェ「日本語でもいいですよ。彼、日本語上手ですから(笑)」

▲「メインシェフ」役のチェさん

フレンドリーに対応してくださる役者の皆さん。早速本題に入ります。

-どういうきっかけで「ナンタ俳優になろう」と思われたんですか。

チョ「中学生の頃、映画などに興味をもち始めて……。いろいろ見ているうちに出会ったのがミュージカルだったんです。そのころから、ミュージカル俳優になりたいなと思い始めました。ただ、直接始めたのは大学を卒業してからですね。」

▲「セクシーガイ」役のチョさん

-どうしたらナンタの俳優さんになれるんでしょうか

チェ「オーディションを受けて合格するとナンタ俳優養成のプログラムを受けられます。個人差チーム差がありますが、大体半年くらい集中型で練習します。それから、こなれてくるのに大体1-2年くらいですかね。練習は朝10時から夜10時まで、週5日です。」

ナム「ナンタは女性1人、男性4人で構成されています。オーディションを受けた後、演出のほうでキャラクターにマッチした役を与えられます。だから、本当はこちらの役がやりたかったのに……ってこともあるんですよ。」

▲チョさんのTシャツの後ろのプリントを見せながら役どころについて説明してくれるナムさん

-いろんな国からのお客さんを対象にしているということで、普通のミュージカルにはない難しさとかもあるのではないでしょうか。

ハン「ありますね。ナンタはプログラムの構成要素の中に韓国の伝統的なものがかなり織り込まれているんです。なので、そういった韓国伝統文化の知識があまりない外国からのお客さんの場合、理解しにくくなってしまうことがあるんです。

なので、文化的な背景の共有があまりない国からのお客さんがたくさん来ているときは、演技の仕方とかを少し変えてより分かりやすくするなどの努力が必要ですね」

▲「ホットソース」役のハンさん

チェ「あと、反応の仕方も違うよね。日本人の場合、公演中すごく静かなんです。笑い声も小さくて。で、公演の最後にすごく拍手する……」

ナム「何度も日本公演行ってますけど、これ、ほんとにそう」

チェ「逆に、中国のお客さんは途中途中でも、すごく盛り上がるんです」

ナム「ナンタは役者と観客が一緒に作っていく公演なので、観客の皆さんには、たくさん笑って拍手して、どんどん積極的にかかわってきてもらえると嬉しいです」

▲「甥っ子」役のナムさん

チェ「たくさん見に来てください!」

チョ「待ってまーす!」

▲左からマネージャー役ファンさん、甥っ子役ナムさん、ホットソース役ハンさん、セクシーガイ役チョさん、メインシェフ役チェさん

皆さん。ナンタを見に行くときは、たくさん声を出して、たくさん拍手して、ガンガン参加しながら楽しみましょう。あ、公演前は静かにお願いしますね。

ではいよいよ公演へ

公演前にすでに、役者さんたちの人柄にすっかり魅了されてしまいました。

そしていよいよ、公演が始まります。

今回、親娘孫の3世代に体験してもらいました。韓国語もわからない、韓国文化も初体験、世代も性別もバラバラ……。勿論ナンタも初体験です。さて、どうなるでしょう。

ナンタ劇場へ


劇場に入ると、おおきな垂れ幕に4か国語で注意書きが。

お客さんがどうしても知っておかないといけない注意点や物語の設定などが公演前に多言語で案内されます。

そして、声出しや拍手の練習も。役者さんたちも言っていました。「ナンタは観客が一緒に作っていくミュージカルだ」と。

照明が落とされたらいよいよスタート

しばらくすると、照明が落とされ暗くなります。音楽も止まってシーンと静まり返った舞台。

かすかな金属音が……。

ここから、ストーリーは一気に躍動的に。

英語では「cookin」というタイトルで上演されているナンタ、舞台はキッチン、テーマは料理……のはずなのですが、まるで殺陣(たて)を見ているかのような場面もあります。

小学生男子も興味津々。食い入るように見ています。

なんと途中で役者さんに呼び出されてまさかのステージへ。観客も参加するスタイルですが、本当に参加してしまうのです。

小学生男子、大興奮です。ほかのグループでも同じらしく、そこここで歓声が上がったり笑い声が起きたりしています。会場と舞台の境目がなくなります。

母語が違う、どう見ても接点がない人たちが並んだ舞台。不思議といえば不思議な空間ですよね。

そして、舞台はクライマックスへ。

最後の5人での打楽器演奏は必見です。あれだけ激しく動いた後なのに、全く疲れが見えません。

あっという間の一時間半。

圧巻です。声も出ません。

この後、ロビーで待っていると、役者さんたちが記念撮影に応じてくれます。

観覧を終えて


観覧を終えて感想を聞いてみました。

母:迫力があってね。言葉も何も、難しいことがなくて、楽しめました。韓国語は全然わからないんですけど、ストーリーとかは問題なくわかるし。すごく楽しかったです。

孫:すごい、楽しめてよかった。黄色い人が面白かった。

娘:初めてなんですけど、来てよかったです。参加型だったので、より楽しめました。急に「行って行って」言われて……。でも、韓国語わからなくても、舞台でも何をしたらいいか、丁寧に教えてくれるので不安はなかったです。

あ、韓国語で言っているんですけど、身振りとかでわかるから、それで楽しめました。役者さんがいなくなった時は戸惑ったけど……でも、私一人だけじゃなくてほかの人たちもいたので、顔合わせて「どうしよう」って。そしたら、すぐに来てくれたので、不安にもなりませんでした。

孫:ぼく、でたかったなぁ。

韓国語がわからない、韓国の文化を知らない、年齢差が大きいグループで来ている。そんな人でもみんなが楽しめるナンタ。最初に役者さんたちが言っていました。

「誰でも、どんな文化背景の人でも楽しめるように」そんなナンタの精神が観客にもちゃんと伝わっているようです。

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ナンタ 明洞劇場
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この記事を書いた人

エナ

エナライター / エナツアー主催

横浜出身のソウルっ子。2000年から2002年、ワーホリ滞在。その後横浜での10年間を経て2011年、再度渡韓。本業は日本語教師。ソウルの博物館、市場、路地が主な生息地。普通の町を普通じゃなく感じさせるエナツアーなるものを企画していました。最近は日本家屋の残る町にはまり気味。現在は本業の都合でソウルと山の中にある地方都市との二重生活中です。ソウルの穴場のお店や、地方とソウルで生活しながら見えてきたものなどをブログやSNSなどで紹介するのが趣味。

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