安くておしゃれな雑貨がいっぱいの「雑貨天国」として知られるモロッコ。なかでも、エキゾチックでキュートな雑貨がところ狭しと並ぶスーク(市場)は、雑貨好き・ショッピング好きにとってはまさに天国のような場所です。
その一方、一部のブティックを除きスークに並ぶほとんどのお店には定価がなく、値段交渉が必須になるため外国人観光客にとっては手ごわい場所であるのも事実。
モロッコを含め50ヵ国以上を訪れた旅マニアが、モロッコのスークでお得に気持ちよくショッピングを楽しむための12のコツを伝授します。
お土産ショッピングにおすすめなモロッコのスーク
モロッコのほとんどの都市は新市街とメディナ(旧市街)に分かれており、メディナにはたいていスークがあります。一口に「スーク」といっても観光客向けのお土産物が充実したスークから、地元客向けのローカルスークまでさまざまです。
お土産ショッピングにおすすめなのは、まずは「世界最大の商業地区」とも呼ばれるマラケシュのスーク。モロッコきっての観光地だけあって、あらゆるモロッコ雑貨が手に入ります。
また、伝統の職人文化が息づくフェズは、特に陶器や革製品が有名。マラケシュやフェズよりも規模は小さくなりますが、アーティスティックな雑貨が手に入るエッサウィラや、観光地化されすぎておらず買い物がしやすいラバトのスークもおすすめです。
それでは、実際にモロッコのスークで買い物を楽しむための12のコツへとまいりましょう。
1.旅行初日と最終日は避ける
色とりどりの可愛い雑貨が並ぶ光景に思わず興奮してしまうのはやまやまですが、その国の物価が把握できていない旅行初日から買い物をするのは避けたほうが無難。
相場がわからないゆえ、「安い」と思って買ったものが、実は相場を大幅に上回る値段だったなんてことになりかねません。
また、「なんとしても今日中に買い物を済ませないと」と気持ちが焦りがちな旅行最終日の買い物もできれば避けたいところ。お目当てのお店が決まっているなら別ですが、そうでない場合は、納得できないものを納得できない値段で買うことになってしまうかもしれません。
2.まずは定価の店で相場を知る
モロッコの物価は総じて日本よりも安いですが、何にお金を遣うかによって差が大きく、モロッコの物価感覚をつかむのは容易ではありません。そのため、値段交渉必須のスークで買い物を始める前に、まずは相場を知っておくことが大切。
モロッコの主要都市にある伝統工芸館など、定価販売を行っている店がある場所でだいたいの相場をチェックしておくと安心です。
3.最初にお店の人にあいさつ
日本ではお店の人が「いらっしゃいませ」と声をかけてもお客さんは無言ということがありますが、それは日本以外のほとんどの国ではとても失礼な行動になってしまいます。
お店の人に敬意を払うという意味でも、こちらの印象を良くしてのちの値段交渉を少しでも有利にするためにも、「ハロー」でも「ボンジュール」でもいいので、まずはお店の人に一言あいさつをしましょう。
4.希望価格を答えるときは慎重に
モロッコのスークでは、気に入った商品が見つかってお店の人に「これはいくら?」と聞くと、「いくらなら買う?」と聞き返されることがよくあります。
ここでうかつに高い金額を口にしてしまうと「交渉成立」となってしまうことがあるので、希望金額を答えるときは慎重に。
その際、売り手は少しでも金額を引き上げて交渉成立させようとするので、本来の希望金額よりも若干低い金額を答えるといいでしょう。
こちらの希望価格を伝えずに、「いくら?」と聞き返してまずは相手の出方を見るというのもありです。何度も「いくら?」と聞けば、たいていの売り手は具体的な金額を提示してくれます。
5.ケンカ腰にならない
思いのほか高い金額を提示された、なかなか値段が下がらないというときに「なんでそんなに高いの!」とケンカ腰になってしまうのは考えもの。
売り手も商売人である以前に人間なので、悪い印象をもった相手には「特別にディスカウントしてあげよう」という気持ちにはなりにくいものです。
スークでの買い物は一種の心理戦なので、ある程度良い印象を持ってもらえる言動を心がけたほうがお得な買い物ができる可能性が高くなります。
決して「媚を売れ」というわけではありませんが、特に女性の場合は笑顔で値引きをお願いするのも効果的。モロッコの商売人のほとんどは男性なので、「しょうがないなぁ」と応じてくれることが少なくありません。
6.ひとつのお店でまとめ買いする
ひとつのお店でまとめ買いすれば、1点あたりの単価が下がる。これは、モロッコのスークの鉄則です。そのため、違うお店でバラバラに買い物をするよりも「これとこれとこれ、全部でいくら?」と、同じお店でまとめて買ったほうが断然お得。
連れがいる場合は、それぞれ別々の店で買うのではなくみんな同じお店で買うというのも効果的です。定価表示の店では原則値引きはありませんが、まとめ買いをした場合は若干の割引に応じてくれる場合があります。
7.人(お店のスタッフ)で選ぶ
モロッコのスークでは、同じような商品を売るお店がいくつも並んでいて、どこで買ったらいいかわからなくなってしまうことがあります。
そんなときは、人(お店のスタッフ)で選んでみるのも手。選ぶ基準は、「この人は笑顔が素敵だな」とか「真面目そうな雰囲気に好感がもてる」など、直感的なものでかまいません。
スークでの買い物は人と人とのコミュニケーションですから、同じものでも「この人から買いたい」と思った相手から買ったほうが気持ちよく買い物ができますし、買った商品に愛着がもてます。
8.値段が下がらなければ一度去ってみる
モロッコ、特にマラケシュの商人は手ごわいので、交渉をしてもなかなか値段が下がらないということがあります。そんなときは一旦見切りをつけて、その店を去ってみると効果的。
買い手はスーク内には同じようなものを売る店がたくさんあることをよくわかっているので、去るそぶりを見せると一気に値段が下がることがよくあります。
筆者自身は、「去るフリ」をするのは誠意に欠けるような気がしてあまり好きではないのですが、フリではなく本当に去ろうとしたところ希望額まで下がり「それなら」と購入したことが何度もあります。
9.交渉成立したら「ありがとう」を忘れない
スークで交渉が成立するということは、気に入った商品を希望の値段で買えたということ。「自分はお金を払う側だからお礼を言う必要はない」ではなくて、自分が希望する価格で売ってくれた売り手に対して感謝の気持ちを表現してはいかがでしょうか。
そうすれば、直前まで心理戦を戦っていたのに、一旦交渉が成立すれば売り手と買い手が同志のような連帯感に包まれるという、スークでの買い物ならではの醍醐味を感じることができるはずです。
10.ときにはあえて値切らず喜んでお金を差し出す
値段交渉をしていいものを安く買うというプロセスは楽しいものですが、常に「1ディルハムでも安く買いたい」という気持ちでいると、自分自身が疲れてしまいます。
はじめから思いのほか良心的な価格を提示してくれた売り手や、素敵な商品を手作りしている売り手など、「この人にもっと豊かになってほしい」と思う相手に出会ったら、喜んでお金を差し出す余裕があれば、モロッコでのショッピングがもっと楽しくなります。
「値切れただろうけど、あえて値切らず言い値で買った」「粘ったらもっと安くなっただろうけど、ほんの少しの値引きで手を打った」、そんなときがあってもいいのです。
自分が少し多めに払ったお金を原資に、その売り手がもっと良い商売をしてくれるようになったら素敵ではありませんか。
11.体力・気力・時間に余裕のあるときに買い物する
モロッコのスークでの買い物というのは、とにかくエネルギーと時間を消費します。
ただでさえ屋外に長時間いれば疲れるのに、モロッコのスークは迷路のように入り組んでいて、知らず知らずのうちに長距離を歩くことになりがちです。
それに追い打ちをかけるのが、「こんにちは」「ニーハオ」「見るだけタダ」といったさまざまな呼び込みや声かけ。さらに、気に入った商品があったら1つ1つ値段交渉をしなければならないので、買い物そのものにも時間がかかります。
特に巨大なマラケシュのスークでの買い物は一大イベントになるので、じっくり買い物を楽しみたいならスークめぐりに1日を割いてもいいくらいです。
疲れているときや時間がないときは判断力が鈍ってしまったり、投げやりになってしまったりしがちなので、スークでの買い物は気力・体力・時間に余裕のあるときに挑むのがベスト。
12.現地の文化に合わせた服装を心がける
スークで買い物するときに限った話ではありませんが、現地の感覚からかけ離れた服装をするのは望ましくありません。
モロッコはイスラム教の国なので、女性の場合は、ゆったりとした長袖ブラウスに、身体の線が出ないゆったりとしたロングパンツまたはロングスカートを着用し、首にはスカーフを巻くのが理想的。男性も半ズボンなどは避けたほうが無難です。
なぜ買い物の記事で服装の話になるかというと、モロッコのスークでの値段交渉には、相手に与える印象が交渉に多少なりとも影響するからです。
「服装など関係ない」とビジネスとして割り切っている売り手もいるでしょうが、自分たちの文化を踏まえて慎ましい服装をしている観光客のほうが現地の人に良い印象を与えやすいはず。
服装に気を遣うことが必ずしも値段交渉で有利になるとは限りませんが、無用なトラブルを避けるためにも、現地の感覚に沿った服装をすることをおすすめします。
モロッコのスークは出会いの場
さまざまなモノと人がひしめき合うモロッコのスークは出会いの場。それはモノとの出会いであると同時に、人との出会いでもあります。
モロッコの商売人は多かれ少なかれ、「気分」で動いているところがあります。単に気分屋という意味ではなく、定価の商売がほとんどを占める先進国での買い物にはない、泥臭さと人情があるのです。
モロッコのスークでは、「買う」という行為だけでなく、ぜひ売り手との他愛もないおしゃべりも含めた買い物体験をまるごと楽しんでください。