「台湾で最も早く開かれた街」として知られる、台湾の古都・台南の安平(アンピン)地区。ここに、近年「ラピュタっぽい」とひそかに話題を集めているスポットがあります。
それが「安平樹屋」。もはや廃墟と化した倉庫跡をガジュマルの木が飲み込む光景は、廃墟マニア垂涎。廃墟と自然が織りなす神秘的な光景が「ラピュタの世界を思わせる」と話題になっているのです。
「鬼屋敷」として避けられていた安平樹屋
安平樹屋は、もともとイギリス商人が設立した商社「徳記洋行」の倉庫で、日本統治時代には「大日本塩株式会社」の倉庫としても使用されていました。1940年代に、大日本塩株式会社が安平から撤退。すると、敷地内にあった1本のガジュマルの木が成長し、しだいに倉庫跡を飲み込んでいったといいます。
台湾の人はガジュマルの木を「陰」だと考えているため、安平樹屋は「鬼屋敷」として恐れられ、あまり近づく人がいないまま歳月が過ぎていきました。その結果、現在のような奇景が生まれたのです。
かつて人が寄り付かなかった安平樹屋ですが、いまやミシュラングリーンガイドで2つ星を獲得。その類まれなる光景をひと目見ようと、多くの人が訪れる人気スポットとなっています。
今にも宙に浮かびそう!?
建物の外側から見た安平樹屋。ガジュマルの枝に覆われていて、ほとんど建物が見えません。もはや森のようです。いったい何本の枝があるのでしょうか。
わずか70年あまりでこのような姿になったとは! ガジュマルの木の生命力に圧倒されずにはいられません。
今にも地上を離れて、建物ごと宙に浮かんでいきそう……? ジブリファンならラピュタの主題歌「君をのせて」が頭の中で流れ始めるかもしれませんね。
安平樹屋は人里離れた場所にあるわけではなく、すぐ目の前に小学校がある街なかにあるのです。にもかかわらず、この古代遺跡のような景観は「すごい」の一言。
意思を持っているかのようなガジュマルの枝
ガジュマルの枝がレンガの壁を這い、天に向かってレンガの壁を突き破り、うねり、互いに絡み合います。まるで枝の1本1本が意思を持った手のよう。
こうして見ると、「鬼屋敷」と遠ざけられていたのもわかるような気がします。
もはやこうなると、木が建物を破壊しているのか、はたまた支えているのか、判然としません。廃墟となった人工物と、パワーみなぎる自然はまるで正反対。
朽ちていくものの悲哀と、あふれんばかりの生命力との対比が、多くの人々を惹きつけるのです。
上からも大自然のパワーを実感!
倉庫の内部は見学ルートが整備されていて、階段をのぼって通路の上からもガジュマルの枝が四方八方に伸びる様子を見ることができます。
高いところから見ると、ガジュマルの木がレンガの壁を突き破って伸びる様子がよくわかり、迫力満点。
安平樹屋を目にすると、「やはり自然には太刀打ちできない」―そんな打ちのめされるような思いを抱きながらも、廃墟と自然が造り上げる風景に、どこか芸術的なものを見出してしまうのです。